表書
一度イチオ島によって船を直し、改めてアルター島に戻った。捜索はされたが、やはりどちらの竜も行方はわかなかった。
リアが不意に目を止める。
「トワ?後ででいいから盾見せてくれない?」
「...」
「...今は話しかけないであげてください」
そのやり取りから目を逸らしてルカがレタに尋ねる。
「問題っていうのは?」
「今年に入ったあたりから、やたらとオズファが干渉してくるようになったらしい」
基国オズファは大陸でも特に影響力の強い国だ。裕国ニヒツは歴史が浅く国交においても消極的だ。
「それが?」
「それで、島に基軍の兵を置かせろと」
「はあ」
「...前にも似たようなことがあったな」
そう言ったのはマホだった。
「基軍の基地は国外にもいくつかありますね」
「ボーアのときは余裕がないでなんとかなったぞ。...だがそうか」
「ボーアは国が興って長い分、軍がしっかりしてますよね」
「ニヒツには国で軍と呼べるようなものがない」
「ボーアほどオズファから離れてるわけでもないし、そう無視はできないんだろうね」
「じゃあ認めれば?守ってもらえるわけでしょ?」
ルカが言うとレタが首を振る。
「...それぞれの島には自警団や邏師のようなものはあるし、ニヒツの環境は少し特殊だ。それに」
「善意だけではない。オズファの支配下に入ることになる。命令が断りづらくなる」
レタが小さく頷く。
「...それもある...どちらかというと、やり方が気になるんだ」
「と言うと?」
「レタ、いる?」
二人組が入って来た。一人はカク。
「あ、ヒョウ。久しぶり!」
「...ルカ。久しぶり。びっくりしちゃった」
「レタ、これ」
カクが手渡したのは封筒。
「...なんで俺に?」
議会が決めることのはずだと言っている。
「一応」
レタが封筒から紙を取り出して広げる。
「じゃあ戻るから」
カクは出て行った。
「...」
レタは黙ってそれをルカに手渡す。受け取って広げるとヒョウが後ろに回り込んだ。
目を通してルカが顔を上げるとレタと目が合った。
「...オズファから?」
「どう思った?」
「え?...なんだろう。急かされてる感じが」
答えると頭を触りながらため息をついた。
「...お前が言うならそうなのかな。...穏やかじゃない感じがする。しばらくこんな調子らしい」
「...ああ。...それは竜とかそこらの騒ぎで...よりも前からか」
「そう。焦る理由がわからないんだ」
ヒョウが帰った後でリアが訊いた。
「ルカはこっちの人たちと仲いいの?」
「そうだね」
「あっちこっち動き回る上に初対面でも距離ないからな。...ただでさえこっちは人が来ないから、みんな国の外はこういうのばっかだと思ってるかも」
「むっ。ヒョウはね、レタの弟だから。あそうだ、セツは?」
「さあ。忙しいんだよ」
「もう。...アタシはほら、一人っ子だから、ちょっと憧れちゃうな。兄弟仲がいいのっていいよね」
「「...」」
「...黙るところ?そこ」
「いいと思いますよ」
「でしょ!」
「こちらの人はあまり国の外に出ないんですか?」
「人によるが、まあほとんどそうだな」
「...えー...」
「...君たちは残るのか?」
マホが言う。視線を受けて最初にレタが答える。
「まあ俺はしばらくいたほうがいいかな。お前は?」
「私はそろそろ帰るよ」
「...まあそうだよな」
「忙しいもんね。アタシは残るよ」
「オレは...どうしようかな。とりあえず連絡だけしてこようかな、今」
そう言ってリアが立ち上がって部屋を出ていく。
「ぼくたちは残ります。いずれニヒツには来る予定だったので」
「...そうだったんだ」
リアがタダを持って帰って来た。
「ねえマホこれどうやって使うの?」
「...」
「だってろくに使ったことないんだもん」
「見せてみろ」
しばらく二人でやり取りする。
「...短い文章を送るだけならそう難しくないはずなんだが」
他の面々は黙っている。言うことがない。言えた口ではない。
「...ああ」
マホが思い出して言う。
「もうしばらくすれば、メオは来るかもしれない。しばらくオズファにいたから、なにかしら力になれるかもしれない」
しばらく画面を見ていたリアが口を開いた。
「残っていいってさ」
文章の中で上手く説明ができないから、そのためのページを作った方がいいな
歳の離れた兄弟は珍しい