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天地の変  作者: 匹々
次寇の章
20/55

あお

「ニヒツか」

マホが言うとリアが顔を上げる。

「行ったことある?」

「昔一度だけ」

「へー珍しい」

「そうかもな。だがほとんど覚えていない」

「たしかレタはニヒツ出身だって言ってたかな」

「それも珍しいな」

「そうかも。帰ってきたら聞いてみよっか。どうせ今日はもう何もできないよ」


しばらくしてルカが一人で帰って来た。

「レタは?」

「船」

「え?」

聞けば、港でニヒツの知り合いに会って竜のことを聞き、そのまま一緒に船で向かったらしい。

「ルカは?」

「アタシは皆を連れて来いって。行ったことあるから」

「一人だけで行ったって意味ないだろうに...」

「アタシも言ったんだけどね。どうせ皆来るなら変わらないかって」

「君が言ってもな。そういえば海路もあったか」

「次は三日待たないとないよ」

「少ないね。流石に陸路のほうが早いか」

トワとイヴが帰って来た。

「ニヒツで見つかったとか」

「知ってたか。明日出発する」


翌朝5人はイルテラを出た。メオは別件で残った。

ボーアの北、大陸北西部には深い森が広がっている。森には人間は住んでおらず、道がない。大陸北部から北東部にかけては基国オズファ。ボーアからオズファまで通じる道がある。ニヒツへはそこからオズファへ向かうしかない。

道は鉄道の脇にあり、西は森に挟まれているためあまり太くない。バス二台がようやくすれ違える程度。鉄道は大抵東の禁域との縁に沿って走るため、海岸側のニヒツへは通っていない。

「この調子じゃどこへ行っても同じかもな」

「次はどこに出るやら」

「ほかの魔物も見ないが、これもいつまで続くかな」

同じ日にイルテラを出た二人組が話していた。大きな荷物を持っていた。これからオズファへ行くらしく、5人と別れて鉄道沿いの道を東へ向かった。

「さっきの人たちは、竜を避けて移動したのかな。この時期にわざわざ北に行くって」

二人組と別れてリアが言った。

「竜の話は有名だから知ってる人は多いだろうけど」

「我々も正しく知っているわけではない。竜の伝承が誰しもに正しく伝わっているとは思えない」

「あの人たちは、竜というものをどういうものだと思ってたんだろう。今の状況をどうとらえてるんだろう」

「聞けばよかったじゃん」

「今思ったの」

左手は森との境界に柵がめぐらされており、それに沿って北へ向かう。

森の北側は山が連なっており、海岸との間にこれまた細い道が西のニヒツへ続いている。左側から海へ向かって無視できない傾斜がある。上り坂で少し右にいけば崖。崖の下の海は遠い。

「バスは通れそうにないね」

「船じゃダメなの?こっち側からない?」

「アタシは乗ったことないけど、おすすめはできないかな。そもそも今あるのかもわからないし」

歩くことになった。

「もしかしてリアは船に乗りたかったの?」

「まあ」

「ニヒツではいやでも乗ることになるよ」


歩いていると、左から音が聞こえてきた。

何かが急を斜面を転がり落ちてきた。石と土の塊だった。

見上げたリアが声を上げた。

「すごい」

奥に一際高い山が見えた。頂上は雲で見えない。

「ボアロだね。あれが端だから、もうすぐだよ」

少し歩くと、湾が見えた。

湾を囲んでいるのは、10キロメートルほどの半島。その向かいには大きな島。沖にもいくつも島が見えた。天気は良くない。

高台から半島のほうへ下っていく。

行く手に小屋があった。そのそばの二人にルカが声をかける。

「ユウ、ケイ、久しぶり」

「久しぶりだなルカ」

「レタは?」

「今朝は下にいた。今は知らない」

「行こう」

イルテラを出発して五日目の昼、一行は裕国ニヒツに入った。

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