渦の目
わっはっは
リアとイヴが図書館やメオが持ち帰ってきた本で、ルカとレタは士師の仕事をしながら情報を集める。ほとんど進捗がないまま1ヶ月が過ぎた。
ルカとマホはイルテラの城壁の上にいた。西側からはわずかに海も見える。
「いい天気ですね」
イヴが2人の後ろから話しかける。
「...ねえイヴ。...トワがどこにいるか知らない?」
「散歩だと思います。どこかはわかりません」
「そう。ありがとう」
「あ。少なくとも高いところにはいませんよ」
「...そうなんだ」
「探してきましょうか?」
「いいよ。急いではいないから」
イヴが下りて再び2人だけになる。
「気になることというのは?」
「...別に大したことじゃないよ」
「相変わらず嘘が下手だな」
「む。...トワって変わった名前だよね」
「そうだな」
「イヴも」
「名前としては珍しいな。少し発音が難しい。エルもだが」
「あ、アタシだけじゃなかったんだ。リアもレタも珍しいとは言ったけど」
「それで?」
「...。え、なんというか。なんか隠してない?」
「勘か?」
「...うん、まあ」
ルカが曖昧に頷くとマホが前を見たままひとりごとのように言った。
「...昔、会ったことがある」
「...え?」
「ずっと昔、たしか君と会って最初の休みだな」
「そんな昔のことよく覚えてるよね」
「ハケスあたりで旅の途中で一緒になった。移動中、隊が襲われて、彼は一人で我々が逃げる囮になってくれた。だが後で探しても見つからなかった」
「...」
「死んだと思っていた」
「...たしかなの?」
「記憶が正しければ。あの時一緒にいた者にも訊いたが、そんな気がするとしか」
「言ってよそういうのは」
ルカがため息をつく。
「アンタって結構慎重だよね」
「君と違ってな」
「むっ。そのときイヴは?」
「いなかった。...誰かが、一人旅は危険ではないかと尋ねたとき、トワは、理由は思い出せないが、しばらくは一人がいいと言っていた気がする」
「でもイヴとは一緒にいるんだ。2人が会ったのっていつだって言ってたっけ?後でそれも訊くか」
「イヴのことは不思議には思わないのか?」
「?思うけど、覚えてないっていうんだから、しかたないじゃん」
「...それもそうか」
下りようとして振り返ったルカが言った。
「あれは?」
「君は他人の視力は低いものなのだと思った方がいい」
「そうじゃなくて」
指さす。
「空」
晴れた空の北西の方角に、一部だけ黒い雲の塊がある。
駆け下りようとしたルカをマホが呼び止める。
「なんかいやな予感がする」
「君の予感は当たるから黙っていろ。一人で行く気か?」
「...先に行くから、アンタが呼んできて」
「おい」
そのまま駆け下りて行った。
「...まったく」
なるほどな
悩んだけど本編に入れた