窮悩
「なにかわかった?」
しばらくして再び集会所に戻ったルカが周りを見回して訊く。
「こっちは特には。竜の記録はあるんですけど」
「おっ?」
「そうですね、なんていえばいいのか。竜ってどこかほかの魔物と描かれ方が違うんですよね」
「違う?」
「どういう存在なのかというより、恐ろしさを強調するような感じでしょうか。感覚ですけど、魔物のようなどうにかできるような相手じゃない、ただ恐ろしい絶望的な印象を受けました」
「...そういうな感じなんだ」
「それくらいですかね。もっと時間をかけて探せば何かありそうではありましたけど」
「そっちは?」
「...そっちはじゃなくてさ。リアとトワは何してたの?」
その視線の先でリアは漫画、トワは小説を読んでいる。
「最近ほとんど字読んでなかったからちょっと飽きちゃった。調子いいときならいいんだけど、なかなか頭に入ってこないんだこれが」
「師匠はすぐ来てまっすぐ向かいましたよ」
「アタシなんか全く読めないけど。...えっと。協会なんだけど、混乱してる。いろんな噂があるんだけど、どれも信憑性には欠けるかな」
マホが部屋に入ってきた。
「揃ってるな。毎回ここに集まるのか」
「まあね。そっちはなんかあった?」
リアが顔を上げて問うと首を振る。
「これといったものはないな。魔物の件も新しいものを確認したが、まるで法則性がわからなくて混乱する」
しばらく話したあとイヴが提案した。
「とりあえず明日にでも遺跡に行ってみましょうか」
「それもそうだね」
ヒルデリア遺跡はイルテラの真北に少し行ったところにある。ほとんど災戦のころのもの。イサラナ遺跡ほど大きくはなく、真ん中の本丸以外は柱しか残っていない。
「なんもないかー」
高い柱だけが並び立っている。
「城壁だったのかな」
「そうみたいですね」
「トワは遺跡が好きなの?」
「いろんなところを見て回ると面白い」
「そういえば、マホが最初にエルと会ったのはいつだって言ってたっけ?」
「一年ほど前だ。思い返して見れば、あのときも魔物の異変の調査だったな」
「そうなのか?」
「エルと会った後に不審火もあったか」
「ええ...」
「だがあれ以来はそんなこともなかったな。今まで忘れていた」
「...ますますわからないね」
5月になった。一行は未だにイルテラにいる。なにもわからないまま。
エピソード11 (フフトナに竜が出るより少し前くらいから)訂正(ちょうど一年ほど前)
明らかに変だし文章もおかしい。なに考えてたのか。なにも