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第70話 二つの結託と目的

「とりあえず好きなとこに座ってください」



 そう言われ俺達は腰をおろした。



「まず自己紹介をした方がいいんじゃないですか!」


「そうね。私はこの領地を統べる、ワールよ。よろしくね」



 やはりあとから出てきたこの人がワール子爵だったようだ。



「私はワール様の側近のアリセと言います!」



 最初に扉を開けてくれた女性はアリセという名の人だった。ワール子爵は冷静な雰囲気を感じるのに対してこのアリセという人は元気で明るい感じがした。


 二人が自己紹介を終えたあと次に俺達が自己紹介をした。



「俺は代理勇者の藤宮 陽翔(ふじみや はると)と言います!」


「ふじみや.....」


「どうしたんだ?」



 エレーナはなぜか俺の名前を聞いて少し考え込んでいるように見えた。



「なんでもないわ。貴方がフルネームで答えたのは初めてだったから驚いただけよ



 言われてみればずっと俺も雫もこの世界に来てから下の名前しか言っていなかった。



「珍しい名前ですね! ハルト・フジミヤ様?」


「陽翔でいいですよ」



 この世界では日本で主流な名前の付け方は不自然なのか。



「私は代理勇者パーティーのエレーナよ」


「あれ、エレーナさんも代理勇者なんですか? 勇者パーティーだったのでは?」


「私は勇者パーティーを抜けたのよ」


「ええ!?」



 本当にこの領は情報が届いていないんだな。ほぼ鎖国状態じゃないか。



「知らなかったのね。陽翔のことも知らないみたいだし。ほぼ鎖国状態じゃない」



 俺と同じこと言ってる。まあ、誰が聞いてもそう思ってしまうか。



「今この状況じゃ仕方ないよ〜! あ、私はカメリアの騎士団長のリールだよ。よっろくね〜!」



 この人は相変わらず、どこでもテンションが高い。


 そして次にあとから来た男の人が自己紹介を始めた。



「俺は勇者パーティーのグレンドだ」


「グ、グレンドさんってあの?!」


「そのグレンドよ。全く貴方もここに来ているなんてね」


「それで陽翔さんも知っていたそちらの女の子は・・?」


「私はミリア・ロディオーヌです!」



 森で助けた時はずっと顔を下に向けていたから顔がよく見えなかったが今はよく顔が見える。結構可愛かった。俺と年齢は近いくらいなのだろうか。



「ミリアはアレスの奴隷だ」


「ど、奴隷!?」



 俺は驚いてしまった。エレーナから少し聞いたことがあったが本当に勇者は奴隷を持っていたのか。



「アレス様から逃げ出してたらここの貴族に捕まったです! でもグレンドが助けてくれたです!」


「やるじゃない。グレンド」


「お前に言われたことを思い出してな。全部お前のおかげだ」



 エレーナがこの間言っていた通り、グレンドさんはまともな方だった。よかった。勇者パーティにはまだ未来があるみたいだ。



「それで今日は王城に行ったんですよね。どうでした?」


「ああ、結論を言うと俺はレイを殺すべきだと思っている」


「な、何を言ってるんですか!」



 アリセ達が凄く驚いている。俺も内心驚いてしまった。俺はデリクさんからレイさんを助けて欲しいと言われているのに目の前にその人を殺そうとしている人がいるのだから驚くのも無理はない。



「一体なんでそんなことになったのよ」


「あの国王、悪い人だったです!!」


「それは一体?」



 あの若き国王が悪い人だって? 一体何があったらそうなってしまうんだ。



「レイはカーリック領とリーベストリー領と手を組んでいた」


「そ、そんな!!」


「しかも互いの領が他領と手を組んでいるのを隠しながらだ」


「それで目的はなんなのよ」



 結局は先代の血には抗えないというのか。



「目的はデリクとその家族の暗殺を行わせる。その対価としてアーウェイルの国王の座を渡し、自分はカメリアの国王になる気だそうだ」


「ワール様・・・!」


 

 ということは先日の魔闘祭の襲撃もレイさんが仕向けたということか?



「私は大丈夫ですよ。もう縁を切っている仲なのですから」


「縁を切るですか?」


「はい。私はレイの姉だったんです。でも私はレイの横暴に耐えれなく王城を出て今は偽名で暮らしているんです。最初はレイもなにかの気の迷いかと思って助けることを決意しました。でもやっぱり・・・・。だからいいんです。民が平和になるならそれで!!」



 ワールさんからはなにか強い意志を感じた。



「その話はわかったけど、グレンド、貴方はなんでここにいるのよ」


「俺はアレスに言われてきたんだ。どっかの領地に代理勇者が完全にカメリア側についたという情報を流し挑発する。そうすれば彼らは何かしら行動をし始める。カメリアも不意をつかれ侵入されてしまえば大勢の犠牲を出すことになる。となると責任は国王と代理勇者に向けられるんだ」


「全くあの人どこまでもクズね」


「そうなるとアレスからしたら代理が消えせいせいする。アーウェイルからすればレイの後ろ盾が消え座を奪うチャンスが到来するって言っていた」



 勇者はやはりどこまでも考えることが恐ろしい。それにしてもなんで勇者は俺達のことをそんなに狙ってるんだ? 何かしたっけ?



「これは随分面倒だね〜! 見返りとしては確かにレイの方が良いけどアレスの方が現実的だよね! 国王一家を殺すなんて無謀すぎるよ!」


「可能ではある」


「そうかな〜?」


「ああ。もしカーリック領とリーベストリー領が同時にカメリアに侵略すれば出来ないことはない」



 確かにそうかもしれない。どちらにも恐らく筆頭とする戦力が存在するはず。それらが同時に来てしまえば最悪一家の惨殺も可能だ。



「でもその2つの領地は仲が悪いのに手を組むとは思えないですよ」


「手を組む必要はない。2つの領地が互いに来るとは知らずにカメリアに向かわせれば可能ではある」


「たしかに〜! でもそれをするのも難しいよね!」


「そうなんだが。でもやはりアレスの本当の計画がわからない」


「本当の計画ですか?」


「ああ、あいつがペラペラと信用していない俺に計画の全容を教えるわけがない」


「確かにそうね。あの人はシェルメールしか信用していないからね」



 二つの領はレイさんと勇者から提案を受けているがもしどちらかの提案を受けるなら片方の案は必要ないはずだ。なぜなら両方の案は殺すか終わりに陥れるという明確な差があるからだ。だから両方の案を受け入れれば必ずどちらかは失敗することになる。


 ということは・・・・!



「話が変わるんですけど、あの魔闘祭の時の敵は二つの領がいたんじゃないですか?」


「どういうことよ」


「フード集団は殺すというよりかは誘拐を企んでだじゃないですか。でもセドは殺そうとしていた。俺達のことも」


「確かにそうね。てことはフード側はアレス、セドはレイってことになるわね」


「でもそこからが問題だ。セドは最初にアンゼさんを攻撃しようとしただけで実害が出ていない。だからセドは本当に殺そうとしていたかは断言出来ないが・・・・」



「そうね。まぁ、とりあえずこの話はあとにしましょ。これからカーリック領に行くわよ」


 

 するとアリセは驚いた顔をしていた。



「エレーナ様、あそこに行かれるのは・・・。凄く胸糞の悪い場所ですし・・」


「大丈夫よ。陽翔もいるし」


「任せろ!!」


「それならこれを持っていてください!」



 そう言われアリセが渡してきたのは地図のようなものだった。



「これは・・?」


「これはカーリック領の地図です。これがあれば迷わないかと!」


「ありがとうございます!」



 こうして俺達はカーリック領に向かうのだった。


次回は10月1日0時に更新します。

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