第57話 三柱一心国家
陽翔達は王城に着き、中に入った。すると王城から出ようとしていたロイスが偶然出会った。
「あれ、ロイスさん、どうしたんですか?」
「少しデリク様とお話をしておりました。陽翔様達こそどうなされましたか?」
「実はこれからデリクさんに話したいことと聞きたいことがありまして・・・」
「そうでしたか。それでは私が案内致しましょう」
そう言いロイスは陽翔達をデリクがいる場所まで案内してくれた。
「こちらです。それでは私は先にお屋敷の方に戻っておりますので」
「ありがとうございます」
ロイスは去っていった。その後、陽翔はデリクがいる部屋の扉をノックした。
「入って良いぞ」
陽翔達は扉を開け部屋の中に入った。
「なんだ陽翔達か! 今日はどうしたんだ?」
「実は・・・」
陽翔は先程あったことを事細かく説明した。
「やはりあいつらか・・・・」
「リーベストリー子爵って・・・?」
「あぁ、それはだな・・・・。アーウェイル・リーベルト王国の分断された領地のひとつを支配するリーベストリー・グレイシア子爵のことだろう」
「分断されたってどういうこと? それにどうしてこの国は狙われてるの!?」
「今説明しよう。アーウェイルは複雑でな、リーベストリー・グレイシア子爵とカーリック・ブレリアン子爵とワール・アブデラティフ子爵の三人と若き国王レイ・ウィルフリッドで構成されている」
「ウィルフリッドってあのウィルフリッドでござるか!!」
「あぁ、そうだ。かつて世界を終焉へと招こうとした国王ウィルフリッド。その、孫だ。ただ勘違いしないで欲しい。彼は非常に真面目な性格なんだ。あいつとは違う」
「そうなんでござるか・・・!」
「でもどうして若くして国王なんだ?普通親がなるんじゃ・・・?」
「レイの前は父親が国王をしていた。しかし両親はある時、暗殺されたんだ。恐らくあいつの血筋だからという理由だろう。そして後任がレイしかおらず幼くして国王になったんだよ」
「そうだったのね。それでどうして彼らはこの国を狙ってるのよ」
「昔から権力が強かった三人の子爵は前任の国王が死に空いた席を狙っていたんだがそこにレイが現れた。それにより彼らは国の実権を握ることが出来なかったんだ」
「そんなやつらなら殺してまでも実権を握りに行きそうね」
「それはきっとしてこない。なぜならレイの後ろ盾にはこのカメリア・ウェンバーグがあるからな。レイを攻撃すればカメリアを敵にすることになる」
「つまりはこの国が若き国王の後ろ盾になっているせいで三人は国王を排除出来ずにいる。しかしカメリアが消えればその後ろ盾がなくなり簡単に排除出来るからこの国は狙われてるのね」
「その通りだ。それと今のアーウェイルの状態を三柱一心国家と言うんだが、最近いい噂を聞かないんだよ」
「三柱一心国家って・・・・?」
「三柱一心国家とはな中心に王城のある領地がありそれを囲むように三つの支配者の異なる領地が存在している国のことだ。こうなると外側に存在する三つの領地に権力が大きく分散し王の権力が低下していくんだ。そしてアーウェイルは今、王城のある中心の領地は安全だが他の領地は完全に独裁状態となっているんだ」
「それでデリクさんはこの問題をどうする気でいるんですか!!」
「残念だがどうすることも出来ない」
「どうして!!」
「もしやつらに完全に敵対でもしたらこの国に攻め入られてしまう・・・」
デリクは頭を抱えてそういった。すると雫がみんなに何かを提案してきた。
「なら!この勇者パーティーでどうにかしようよ! 人々を助けるのが私達の使命なんでしょ!!」
「でもな・・・・!!」
「勇者パーティーと呼ばれてから初めての功績としては申し分ないと思うわね」
「エレーナまで・・・!」
「苦しんでいる人がいるなら助けたいでござる!!」
「確かにそうだな・・・俺らみたいに復讐心に縛られてはほしくない。だから陽翔! やろう!!!」
みんなはもうやる気満々だった。
「デリクさんは本当はどうしたいんですか?」
「そうだな。この状況を終わらせて平和に暮らしていきたい・・・。国民の為にも」
「なら一緒に変えましょう。この国やアーウェイルに平和をもたらすために立ち上がりましょう!!!」
「・・・わかった。平和のために!」
デリクは席から立ち上がりそういった。すると扉がいきなり開いた。
「それなら私も協力しますよ」
「レティシアさん!!」
扉のところには先程会ったレティシアがいた。そしてどこからか勢いよく走ってくる音も聞こえた。
「ちょーーっとーーー!!!! レティ!! それは私がやるの!!!」
「げっ。なんでここにいるんですか」
「げってひどくなーい?!! それとなんでここにいるって・・・こっちのセリフなんですけど!!」
「えーと・・・誰??」
陽翔達はレティシアのとなりに現れた人が誰か分からずポカンとしていた。
「あれ! 君たちがもしかして例の勇者くん達か!!」
「あ、はい・・・・デリクさんこの人は・・・?」
「あぁ、こいつはな・・・・」
「私はカメリア・ウェンバーグの騎士団団長のリール・アデライードだよ!! よっろくね〜!!(よろしくね!)」
「これが団長なんですか・・・?」
「これってなんだよ!! ちゃんと団長だよ」
「アハハハ! 二人も手伝ってくれるのか!」
「はい」
「もっちろ〜んだよ!!!」
「だそうだ。陽翔!!」
「お二人共ありがとうございます!」
陽翔がお礼をするとリールはニコニコしていた。
「それでこれからどうするのよ」
「それなんだが君たちはまだ帰ってきてばっかで疲れもあるだろうから数日はゆっくりしてくれ。その間そこの二人に色々と調べてもらおうと思う」
「いいんですか!」
「もちろんだ」
「やったーでござる!!!」
「それじゃあ! 僕たちはそろそろ家に戻ります!」
「あぁ!」
陽翔達は部屋を出て家に戻ることにした。
「国王様、お話があるのですが。リール、あなたは部屋を出てください」
「しかたないな〜」
しぶしぶリールは部屋を出ていった。
「それで話とはなんだレティシア」
「実は陽翔さん達が倒した者達の死体にこのようなものがついておりまして・・・・」
「この模様は!! まさか・・・・!」
「恐らく・・・・・」
「これから想像以上なことが起きるかもしれないな・・・」
@@@
「てかこの国の騎士団団長ってなんか幼かったよね!!」
「確かにそうでござるな! あれで団長かと思ったでござる!!」
「子供ぽかったよな!!」
「子供って言うなぁあああ!!!!!!!!!」
「いや別に今はエレーナには言ってないだろ!」
「今はってなに!!!」
そんな会話をしながら陽翔達は王城の廊下を歩いて家に帰るのだった。
「次回は【第58話 アーウェイル・リーベルト王国】だよ! いやあ、最近私の仕事がどんどんレティに取られてる気がするんだけど!!」