第45話 愛して・・・
「次は俺がやります!!!」
「君、この間はあんなだったのにどうする気なの?」
「この間よりも全力で戦うだけだ!!!【黒刀・伝播】!!!」
陽翔が魔神に向かって刀で攻撃すると放たれた魔法は近くの建物に伝わり大きな音と共に崩壊した。
「いきなりなんだ?」
魔神は突如として壊れた建物の方を向く。
「よそ見してんじゃねぇーよ!!!」
陽翔は魔神に向かって走り込み攻撃をした。
「!?」
「お前案外馬鹿だな。見た目も子供っぽいし仕方ないか」
「ハハ・・・。やってくれるじゃん。これじゃあまた言われそうだな」
魔神は当たる寸前まで気づけず少しだけかわす事ができたが体に刀が触れ血を流すことになった。
「さすが陽翔!!!」
「まぁな!そっちは大丈夫か!」
「なんとか大丈夫ね」
エレーナ達は周りに来ている魔物の対処をしてくれていた。
「ん?」
陽翔はあることに気がついた。
「おい、エリウ大丈夫か?顔色悪いぞ?」
「・・・・・・」
「おい、大丈夫か?」
「ハハハ、怖くなったのかな?」
エリウは今までに見たことがないほどの絶望した顔をしていた。
「エリウ、どうしたの?」
「・・・あいつでござる」
「あいつ?」
「七年前・・・・・」
「??」
「七年前、村の人々と母を殺した・・・・」
「殺した?」
「あの時の魔人・・・でござる!!」
その時陽翔は何がなんだかわからないという顔をしていた。
「エリウ、あの魔神知ってんのか!」
カイトがエリウに聞く。
「かつてオーランスを壊滅させた・・・それがあの魔神でござる」
「オーランス!もしかして君は僕達が探していた・・・!!」
「え?」
「僕は君をあの時から探してたんだよ!」
「どうしてでござるか!!!!」
「僕は復讐をしたかったんだよ。でも君に逃げられてしまった。もう少しだったのに・・・」
「私のせいで・・・みんなが」
「そういえばあの村に行く前に変なやからがいたなー。あー懐かしい。面白かったよ、村は俺達が守る!なんて言っててさ。ま、みんなすぐ死んだんだけどね」
「お前が・・・・父も殺したんでござるか!!」
「あれ?君のお父さんだったの!ごめんねー。知らぬ間に君の両親殺してたんだ!!!」
「お前!!!!!」
エリウは魔神に攻撃しようとした。だが・・・・
「あれ?どうしたの?やっぱり怖いよねぇ」
「どうしたんだ、エリウ!!」
(無理でござる。私には・・・。相手が魔神でも見た目は人の姿・・・殺したいのに、復讐したいのに・・・この剣を動かすことができない・・・)
「あの後君がこの国にいるってのを聞いたから僕たちはここに来たのに、長い間全く見つからなかった。でもようやく君を見つけれた。これであの人も喜ぶ!!!それじゃあ死んで」
「エリウ!!!!」
「!?」
魔神はエリウに向かって剣を振り攻撃をした。
(体も動かない・・・私って・・・)
「なにやってるんだーーーー!!!!」
「陽翔!!!!エリウ!!!!!」
エリウに放たれた攻撃は間一髪で陽翔が前に立ち守ることが出来たが二人共そのまま弾き飛ばされてしまった。
「は、陽翔!」
「俺はエリウに何があったかは詳しくは知らない。でもエリウがあいつを倒したいって言うなら俺は最後まで逃げずに協力してやる」
「で、でも」
「俺達、仲間だろ?仲間の敵は俺達、全員の敵だ」
「は、陽翔・・・!!ありがとうでござる。でも・・・みんなも私といればオーランスのみんなのように・・・・」
「オーランスのことはエリウのせいなんかじゃない!それを目論だあいつらが悪だ。それに俺らは簡単に死にはしない!!」
「そんなことは言い切れないでござる!!母だって父は戻ってくると言ったのに・・・」
陽翔はエリウを抱きしめて話始めた。
「エリウ。俺達はお前にとってなんだ?」
「仲間・・・でござる」
「エリウにとっての仲間ってなんだ?」
「信用出来る人達でござる・・・」
「じゃあ、俺達を信用しろ。仲間なんだから」
「・・・それでも!!私はこのままいてもあとから嫌われるだけでござる・・・」
「最強陽翔パーティーのみんなはエリウのことが大好きだ。昔のエリウも辛いことがあったのに頑張るエリウのことも今ここに一人の剣士としているエリウもみんなは大好きなんだ。いやもはや愛しているんだ!!」
「み、みんな私を愛している・・・でござるか?」
「あぁそうだ愛してるんだ!!」
エリウは顔を赤らめると同時に泣き始めた。
(私は今、ようやくわかったでござる。私が今まで過去に囚われていた理由が!!母のあの最後の言葉が・・・・「二人共愛して・・・」その斬られた愛が私を閉じ込めていたんでござる。でも私はもう過去に囚われないでござる!こうして私を愛してくれる人がいるから。お母さんありがとう、お父さんありがとう。私はもう囚われないでござるよ。迷わない!私はもう過去の中で生きはしない!みんなの想いを背負ってまだ見ぬ未来に向かって生きていくでござる!!!)
『エリウ、大きくなったわね』
『ハハハ!随分成長したな!!二人をおいて先に消えちまって悪かったな。本当に』
「お母さん?お父さん?・・・・」
『あなたたちが生きてくれて本当によかった』
「うん!最高の仲間に出会えたでござるよ!」
『それはよかったな!!それとエイトをあまり責めないでやってくれ』
「え?」
『あいつが言うように悪いのは父さん達なんだ』
「どういうことでござるか?」
『俺達は知っているんだよ。お前が計り知れない強大な力を秘めていることを・・・いつか危機がある可能性も。でも俺達は剣士の村だ。どうしてもお前を一人でも生きていける最強の剣士にしたかったんだ。すまない』
「そうだったでござるか・・・・それじゃあ兄さんは今まで・・・」
『そうよ!私達と同様、あなたの力に気がついた。でもその力が危険を引き寄せることをエイトは気づいていたの。だからあんなにも貴方に酷いことを言って剣士にさせないようにしていたの』
「・・・兄さん」
『どうやらもう時間みたいだ』
「そんな!!!お母さん!!お父さん!!」
『父さんと母さんはいつもお前のことを見守っているから安心しろ!!!』
「・・・うん!!!!」
『エリウ・・・またね』
「・・・うん!」
『これだけは言わせて・・・エリウ、エイト。二人共愛してるわよ』
「私も愛してるでござる!!!」
(私はこれから変わる!!!!)
「陽翔、ありがとうでござる!元気が出たでござるよ!!!」
「それでこそ俺らのエリウだ!!!」
「全くあの男はなんやかんや良い方に持っていくのね」
「それがお人好しな陽翔のいいところだよ」
「あなたが好きな理由が今ならわかる気がするわよ。あの子にそっくり」
「だ、だからそういうのじゃないって!!!!」
陽翔達は真剣な表情から笑顔になっていた。
「ハハハ!!これは過去一傑作だ!!親子同士の愛、そして仲間同士との厚い信頼。どれも羨ましいなぁ。全員殺したい!!!」
「かかってくるでござる!!昔の私はもうここにはいないでござる!!今は信頼出来る仲間がいるでござる!!」
そして陽翔達は再び武器を構えた。
「次回は【第46話 共闘】でござるよ! 絶対にあいつは殺すでござる」