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死神のとどけびと  作者: 花
5章 『霧の森の輪舞』
29/29

29 幾度季節を巡り、幾千の魂を還しても。貴方はまだ私のことを覚えていますか

「疲れたね、レオ」

その体の本当の持ち主は右腕に広がる生暖かい感触を受け、そんな呟きと共に目をさました。彼女がその小さな頭を撫でると、眠っていた彼女の手を懸命に舐め続けていた獣は安心したように「クーン」と鼻を鳴らす。


「最後まで勝手な人だったね」

呟かれた言葉だけ見ればそれはとても冷たく見えるが、含まれた感情には温もりがある。

「きっと、一緒に行けたよね」


彼女は微笑むと膝の上に乗ったままの男の抜け殻をそっと撫でた。


そしてどこか遠く、遠くへ想いを馳せているようだった。


そんな彼女を見て、彼女の過去を知る獣は問うた。

「会いに行かなくていいのかって、何言ってるの?レオ」


獣は知っていた。

今、彼女の瞳に映っている人物は。

その胸を支配している人物は。


おどけたように答え、困ったように眉を下げて笑う彼女の心に残り続けているのは。


『カイ』


命は廻り、歴史は繰り返し。

君は今、生きているのだろうか。

それともまだ巡りの中で眠っているのだろうか。


世界は廻る。

命は廻る。

季節は巡る。


君だけを置いて、廻り続ける。


『ミツキ』


―呼ばないで。会いたくなるから。


『ミツキ』


―呼ばないで。もうわたしは君の声すら忘れてしまったのだから。


『…げろ』

『逃げろ!』

「お前はここにいちゃいけない」


廻る。廻る。世界は廻る。

君だけを残して。


―お前、恋をしたことがないの?


「違う」


あれは、恋じゃない。

恋なんかじゃない。

あれは、そんな美しいものじゃなくて。


もっと、もっと。

薄汚れていて。命を縛り付けるだけだったあれは。


「カイ…」


あなたは今、どこにいますか。

幸せに、生きていますか。


まだ、わたしのことをまだ覚えていますか。


願うなら。

どうか。


『どうかそのまま忘れていて。』




これにて第一部完結です。続編を書きながら、気になったところは修正して進めていければと考えております。


読んでくださった皆様、ありがとうございます。

とてもうれしいです!


今後もどうぞよろしくお願いいたします。

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