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プロローグ
始まりの樹がこの星を作った。
この世界に土を作り、水を与え、緑を与え。命を育んだ。
豊かな世界は広がった。
始まりの樹は世界の秩序を守るため、自身が選び出したものに力を分け与えた。
彼らこそが後の世で”役割持ち”と呼ばれる存在である。
海を守るものは汚染された水を浄化する力を得て。山を守るものは春風を吹かせ種をまく。
姿形に一貫性はない。私たちが魚や犬。そう呼ぶ生命の形をしている。
恐らくは環境に適した形をとっているのだろう、彼らのことを瞬時に見分けるのはかなり困難である。
そして、この世界にそんな”役割持ち”がどれほどの数、存在しているのか。私たちが知る由はない…
はずだった。
だが、私は出会うことになる。
彼らの中には少女がいた。
私たちと同じ姿形をし、つまりは人間の娘だ。
少女の名は、ミツキと言った。
医師アルバートの手記