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最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい【完結】  作者: あいだのも
ゴブリンの村
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6話 「強さ」


 そこにいたのはオーガ…

 見覚えはあるような、

 その程度の顔である。


 「何でてめぇがここにいる…」


 「オーグン…

 あんたがここにくるとは…

 思いもしなかった」


 「てめぇが誰かなんか知らねぇ、

 何を企んでたのかも興味がねぇ、

 だがその子に手を出したら、

 殺すぞ」


 本気の怒り


 昨日アキナが言っていた、決意が耳に残っている。

 アキナが泣いていた姿が目に浮かぶ。

 俺を支えてくれた、

 アキナの感触が肌に残っている。

 アキナと過ごした部屋の匂いが、

 鼻に残っている。


 そのアキナを苦しめていたのが、

 この同族のオーガだったのだ。


 オーガは震え怯えた表情を見せるも、

 「はっやっぱりこいつを捕まえて正解だったな」


 「あ?」


 「今までのあんただったら、

 凄む前に俺を殺しにかかっていただろう、

 でも今は脅すしか出来ない」


 「ちっ…」

 そうだ、アキナじゃなければ、

 瞬間的に飛びかかっただろう。


 だが、この子はか弱すぎる。

 心は強くても身体は弱い。

 

 オーガの頭を握る力加減を間違えたら、

 果実のように潰される。


 「だからオーグンここから手を引いてくれ…

 俺はあんたと違って里から追い出された身

 こうでもしなきゃ生きていけねぇんだ」


 里から追い出された…

 俺がいた時、

 そんなやつは居なかったはず…

 俺が出てきた後何かあったのか?


 でも、今はオーガの事じゃない…


 「それは出来ない、

 アキナと約束したんだ」


 そう言うと、

 オーガは冷や汗を垂らす。


 こいつと戦えば負けることはない。


 「……そうか…

 なら賭けをしよう」


 オーガは液体が入ったビンを取り出し、

 その場に置き距離を取った。


 「その毒を飲みきったら

 俺はここから手を引く」


 「お前卑怯だぞ!」

 そういったのはパージだった。


 彼は弱いと言われている、

 ゴブリン中の最強の戦士。


 彼なりの戦士道みたいなものがあった。


 ここに来るまでの少しの時間、

 であったがアキナを通し、

 目を輝かせながら、

 戦士とは何ぞやと聞いてきた。


 俺にそんなものはない、

 そういうと少し残念そうな顔をしていた。


 そして彼の戦士像みたいなのを話ししてきた。

 「ゴブリンは弱い…

 でも、それが死ぬ理由にはならないんだ!

 だから俺だけでも強くなる!

 みんなを…家族を守るために。

 大切な人を守るために…

 それが俺の騎士道だ!」


 少し胸が熱くなった。

 アキナにパージ、ゴブリンはカッコいい!


 「うるせぇええ‼」

 オーガはアキナを掴んでいる手とは逆の手、

 腰に掛けてあった棍棒を、

 パージに向かって投げた。


 パージは想像より速い棍棒に、

 回避不能と判断し、

 顔を守るように手を組んだ。


 だがパージより、

 こん棒の方が遥かに重い。


 パージの身体に当たると、

 一切の減速をせず壁に棍棒が激突した。


 棍棒は血だらけだった。


 俺の顔も血だらけになった。


 数メートル先のパージを見ると、

 パージの上半身は無かった。


 下半身だけの身体は痙攣しながら、

 崩れた。


 死んだ…


 助けられた…?


 無理だ…


 数メートル先とはいえ、届かなかった。


 それに、あのかっこよかったパージが、

 あの程度の攻撃で死ぬとは思わなかった…


 俺は強い…

 あの棍棒を俺に向かって投げられ、

 直撃したところで、傷一つつかないだろう。



 パージは皆どころか、

 自分の身すら守れなかった。


 彼のカッコいい騎士道は、

 種族の差によって、

 一瞬で消し飛んだ。


 『ぱ、パージィイ‼』

 アキナの声が狭い洞窟に響き渡る。


 「うるせぇ騒ぐな小娘!

 なぁオーグン…

 あんたがここに来てると知ってから、散々考えたさ。

 オーグンに勝つ方法…殺す方法、

 暗殺、罠、毒殺、

 でも見つからねぇ。

 俺が何をしても、あんたの皮膚は傷付かねぇ。

 どんなに知恵を絞ろうと、強さとは絶対的なもの…

 自分よりけた外れに強い奴は、どんな手を使っても、殺すことが出来ねぇんだ。

 だから自分で自分を殺させるしかねぇ、

 身体に無理やり入れた毒なら効くだろう…?」


 オーガは即死したゴブリンの事など、気にも留めず、

 俺のことしか眼中に入っていない。


 オーガは先ほど置いたビンを指さし、

 「もう一度言う、 

 それを飲み切ればこいつを解放し、

 ここから手を引く」


 『そんな馬鹿なことがあるか 、

 オーグン殿が死んだら、

 今までと変わらずじゃろ‼』

 村長が何か言ってる…


 言葉は分からない。

 でも内容は分かる。

 

 こいつが守る保証はない。

 クソ…どうする…


 アキナを見捨てるられるわけがねぇ、

 毒が効かないのに賭けるか…?


 …前に腐った肉を食ったときに下痢をした。

 口から体の内部に入った毒は効くだろう。


 俺は馬鹿だ…

 飲んで死んでもアキナを助ける…

 それ以外の選択肢がねぇ…


 俺がビンに手を掛けようとした時、

 アキナが股に隠していた、

 小刀を取り出し、

 自分の喉をかっ切ろうとした。

 

 しかし気付いたオーガがそれを止め、

 小刀を奪い取るが、間に合わず、

 致命傷とはいかないまでも、

 喉から血が流れ出した。

 

 「なんてことしやがる…

 お前が死んだら、俺が殺されんだよ」



 「オーグン‼…わたし死ぬ…皆助けて‼」

 アキナは切れたのどで、

 小さくかすれた声、

 だけど強い声で、

 アキナは叫んだ。


 俺は覚悟した。

 毒を一気に飲み干した。


 「な、何で…」

 アキナは絶望した顔をしている。


 「や、やった」

 オーガはほっとしたような表情を浮かべている。


 視界が回り、

 全身が徐々に動かなくなっていく。


 ごぼぉ、、


 「吐くなぁ‼‼

 ちゃんと飲み込め‼」


 身体が拒絶しているのを、無理にこらえた。

 

 足が動かなくなり、

 その場に倒れこんだ。


 体中に毒が回り、

 身体の内部の機能が麻痺して、

 呼吸が苦しくなり、

 心臓の鼓動が小さくなっていくのを感じながら。


 「オーグン‼ だめぇ‼」

 「オーグンドノ…」

 「はははは、あのオーグンが死んだ」


 徐々に耳が聞こえなくなっていく…


 大丈夫…


 俺が死んでも、

 ウィルがアキナたちを救ってくれる…

 

 仲間を信じる。


 苦しみが消え、


 思考が途切れた。




 オーガ(オーズ)視点-----




 ははは‼

 やった‼

 やったぞ‼

 あのオーグンを殺した‼

 絶対に敵わないと思っていた、

 憧れのオーグンを、

 憎き恋敵を奪ったオーグンを殺した!


 奴がここに来た時から、

 震えて眠れなかった。


 恐怖がもうないのだ。


 俺がオーグンを殺した。

 もう邪魔するものはいない。


 ゴブリンの雑魚どもは、

 メルサに任せよう。


 あいつは俺らオーガと違って頭が良い、

 とりあえずここにいる奴らは処分する。


 「動くな」

 そういうと村長はびくっと身体を震わせ、

 動かなくなった。


 それにしてもこいつは良い。


 アキナと言っていたな、

 小さいのに勇敢だ。


 俺はゴブリンよりオーガのほうが好きだ。

 でもオーガにはモテなかった。

 オーガは強いものに惹かれる。


 その強さの絶対的なものはオーグンだった。


 こいつのような、

 強い目見ていると身体がうずく。


 殺す前に…

 心を沈めるためにこいつを犯そう。


 俺は小娘の服を引きちぎった。

 しかし小娘の殺意の籠った目は変わらない。


 ああ、良い、

 犯されれ死ぬ運命を悟りながら、

 一切屈服していない女を屈服させる優越感。


 俺は小娘の下の下着に手をかけ、

 引きちぎった。


 と思ったが、下着に手がかかったままだ。


 おかしい…

 俺の肩から先を上に上げたはずなのに、

 頭から生暖かいものが降ってくる。


 ふと振り向くと、

 そこに二人と一匹が立っていた。


 いつ来たんだ…


 注意深く見ると、

 そのうちの一人は知った顔、

 メルサだった。


 ということは周りのやつらは、

 悪魔軍の奴らか…


 「やあメルサ、

 襲撃があったけどここは無事さ」


 メルサに反応がない、

 もう一人がオーグンに近づき、

 魔法をかけている。


 何しているんだ、

 せっかく殺したのに、、

 いや、死んでいるんだ、

 人間ごときが、

 どうにか出来るはずがないだろう。


 小娘は人間たちを見ると、

 下着にかかった俺の手を放り投げ、

 泣きながら、オーグンの死体の元へ走っていった。


 人間はアキナの喉に魔法をかけると、

 一瞬で傷が亡くなった。


 ふと右手に痛みを感じ、

 見ると、

 

 俺の右手の手首から先が無かった。


 降りそいだ暖かいものは俺の血だった。


 「ななななな…」


 俺が慌てていると、

 ようやくメルサが口を開いた。


 「小娘ちゃん、 

 オーグンちゃんが私の毒を飲んだのは、

 どれくらい前?」


 「10分…くらい…だれ?」


 「そう…ウィルちゃん、 

 私の右乳の下に、解毒薬があるわ。

 オーグンちゃんの口から流し込みなさい。

 まだ間に合うでしょう」


 メルサの腕を見ると、

 魔法陣のようなもので縛られている。


 あのメルサが捕まっている…?


 「なぜオーグンを助ける」

 人間は訝し気に問いただす。


 俺も思っていたことを、人間が口に出してくれた。

 「あらぁー

 あなた達には恩を売っておいた方が、

 良いと思ったのよ」

 「…」

 人間、ウィルとかいうやつは、

 乱暴にメルサの右乳をまさぐり、

 取り出した薬を、

 魔法で出した水と飲ませた。


 その手で回復魔法と解毒魔法をかけ続けた。

 こう詠唱も魔法陣もなく、

 流れるように魔法をつかう、

 人間に見入ってしまった。


 黙って数秒ほど見ていると、

 オーグンは血の気を取り戻し、

 呼吸を始めた。


 そこで気付いた、

 生き返らせてはならないと…


 右手は…ない、

 左手でゴブリンを殺した棍棒を拾い、

 人間に殴り掛かった。


 俺は棍棒を頭に振りぬいたはず…

 棍棒が人間に届いていない。


 見ると左手の先もなかった。


 ガゴォオン

 重い棍棒が手と一緒に落下し、

 洞窟内に鳴り響く。


 訳が分からない…


 右足元に小さなつむじ風が起きると、

 ともにバランスを崩した。


       一閃


 風が通ると、

 右足首下が切り離されていた。


 「うわあああ……」

 なんだ…

 まさかこの人間がやっているのか…

 メルサも何か理解しえない、

 芸術を見るような目をして、俺を見てくる。


 尻もちを付きながら、

 後ずさりをしていると、

 全身を洞窟に絡めとられた。


 この人間が洞窟の岩を操っているのか…

 動けない…

 オーガの俺が、全く身動きが出来ない…


 「ふぅ」

 人間はひと段落付いたような、

 息を吐き出すと、

つかつかと俺に近づいてきた。


    死


 俺は死ぬ

 オーグンに匹敵する程の恐怖を、

 この人間に抱いた時、


 目の前が転がった。

 クルクルッと


 俺の最後の光景は、

 首から上がない自分の身体だった。





「良かった」と思ってくださったら

是非ブックマーク、★★★★★をお願いします。

筆者が泣いて喜びます。




⚫︎囚われ姫は魔王に救われる

https://ncode.syosetu.com/n1925ii/


恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。

勇者が姫を救おうとするが、姫は運命か自由かの選択を迫られます。



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