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最恐オーガですが、他種族の女の子と仲良くしたいだけです  作者: あいだのも
人間の国 オルミナ王国

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31話 「ウィンディ」


ウィンディ編————————



私は何のために生きているのだろうか。

お兄様が次期国王となるのは、周知の事実。


私はついでに、生まれてしまったのではないのか。

もしくは、お兄様に何かあった時のための、

いわば予備。


だがそのことに、不満はない。

理由なんてないが、国王になんてなりたくない。


私はこの生活に満足していた。

庶民たちは食べるのに困るが、私は困らない。

奴隷たちは寝るのにも困るが、私は困らない。


たとえお兄様が国王になっても、生活は変わらないだろう。


おじ様は食べたら寝るだけの生活で、

ブクブクに太り、

ある日起きないと思ったら死んでいた。

私はそれで良かった。



けれど、お兄様に何かあったら、

次は私が担ぎ上げられる。


だから、お兄様を探しに行った。


私にだって、ウィンザードの教えがある。

そこら辺の魔物位にだったら、やられるはずがない。


と思っていた。

私が初めて会った他種族は、まさかのオーガ。


教えでは、見えない境界線より、

ずっと奥に住んでいるらしいのだが…


戦闘能力が高い要注意魔族。


動物だか、魔物だか、人間なのか曖昧…

言葉も通じるのだろうか…?

魔族なんて、何を考えているのか分からない連中だ。


だが、強さだけなら、対面しただけで分かる。

私を潰すくらいの存在感が、彼の強さを物語っている。


体中の細胞が、すぐにこの場から離れろと言っている。


まさかとは思うが、

お兄様はこの薄汚い魔族に食べられたのでは。


私の精一杯の問いかけにも答えない。

オーガが体勢を整える。


その瞬間、私はその場から声を上げ、

全力で逃げ出していた。

とにかく全力で。


オーガが何か言っていたような気がする。


でも今はそんなこと、どうでも良い。


何のために生きているか分からない私でも、

自分の命は大事だった。



オーガは私を追っては来ず、

何とか国の敷地まで、帰ってこれた。


私を見ると、門番の衛兵たちは

すぐ背筋を整え礼をする。


門を入ると、庶民たちが道を空け、

跪き、

「ウィンザード様 我らに加護を…」

とか言っている人までいる。


盲心だ。

あのオーガを目の当たりにして、確信した。


ウィンザード教の教えなど、糞ほどの役に立たない。


奴らを「フン」と一瞥してやった。


そんな私の態度を見てか、遠くの方で、

「兄妹揃って好き勝手して、この国は大丈夫なのかしら」

と誰が言ったか、陰口が聞こえた。


周りの連中が、誰が言ったのか、

自分にとばっちりが来ないかと、焦っている。


私は聞こえていないふりをした。

全くその通り。

だが、その言葉は私にでなく、お兄様に言いなさい。


王宮に帰っても、することは同じ。

ウィンザード教えの通り、


全く意味のなかった剣の型をやり、

後は食っちゃ寝生活。


退屈ではある。


お兄様みたいに、自由に外で生きてみたいとも思う。


でも私に、それは出来ないだろう。

今日痛感させられた。


私はこうして、今日も退屈な生活を送っている。



そんなある日、王宮内が大荒れに、


悪魔軍が本格的に、人間の王国に攻めてくる。

そしてウィルお兄様が、オーガと生活しているらしい。


兵士の一部はお兄様を探索に行き、連れ戻すのだそうだ。


お兄様とオーガが生活している…?

少し前にお父様が「ウィルも誘惑には勝てないか…」

と言っていた。

まさかこの事だったのか…?


お兄様があのオーガと…

ありえない…

私はしたことが無いが、異性とでしか、

あれは成り立たないはず…


でも、そうしたら、この国の王にはならないという事なのか?



悪魔軍は帰ってきたお兄様とオーガの活躍で、

すぐに追い返したらしい。


このままだと、お兄様は一生帰ってこない。


私の為にも、オーガは消さなくてはならないと思った。

王宮に呼び込みさえすれば、どうにでも出来ると思っていた。


だが警戒してなのか、オーガは私の招待を受けるでもなく、

またお兄様と旅に出かけてしまったそうだ。


それから私は不安な日々を過ごした。


特にお父様から跡目の話をされることは無かったが、

いつされるのか

断れるのか


そのような事をずっと考えていた。



しばらくして、また悪魔軍が攻めてきた。

今回はお兄様がどこにいるのか掴めなかった。


悪魔と人間の差は歴然だったらしい。

門はすぐに破られ、


この国も終わりなのか、と誰しもが思っていた時、


救世主が現れた。


彼女らはこの国で奴隷として扱ってきた、肌の色をしていた。

この国の秩序に矛盾が生じた。


民衆は、救世主が悪魔たちを切り倒していく姿に沸いた。

この国のあり方に、民衆が一気に疑問視した。


その現場にいた、ほぼすべての兵士が、救世主側に加わった。

彼らもウィンザードの教えは、意味をなさないと気付いた。


他種族と戦い、人間を守るための、ウィンザード教。

その教えを守ってきた国王一家は、

国の危機でも一切戦いに加わらなかった。


加わったところで意味はなかったろうが、、


長年、民衆から甘い汁だけ吸い取っていただけと、

知らしめることになった。


民衆は憤怒し、救世主を持ち上げた。

そして王宮に侵攻してきた。


お父様とお母様は私を、王宮の隠し通路から逃がした。

後はどうなったのか知らないが、

もうこの世にはいないだろう。


隠し通路の先に、一軒の小屋があった。


私たちが今までしてきた生活とは180°変わってしまった。


明日飲む水、食べる食糧の不安。


夜は魔物に襲われないか、不安で寝れなかった。


一人の生活は苦痛でしかなかった。


こんな目に合わせたのは、誰だろうか…

元凶はオーガだ。


オーガとお兄様が出会わなければ、

お兄様が出ていくことは無かった。


お兄様が出ていかなければ、

薄汚い悪魔どもに、簡単に侵略されなかった。


オーガに対する憎しみでいっぱいになった。



そうして数日たった。


あろうことか


彼らは突然、目の前に現れた。


私の目の前が真っ暗になり、

悪魔とオーガしか見えなくなった。


ようやく復讐できる。

このオーガを殺せば、少しは気が晴れるだろう。


この戦いで私が殺されたら、

オーガが死ぬまで、呪ってやる。


それくらいの覚悟で、

剣を抜き、切りかかろうとした瞬間、


オーガは平伏した。


!?


私は状況が理解できなかった。

オーガが私に命乞いをしてくる。


強さで言ったら、

私なんてすぐやられてしまうのに…


悪いと思っているのだろうか…


だが、その程度で、私の恨みが晴れる事は無かった。


悪魔の女は私の忠告を一切聞かず、私に侵攻してきた。


薄汚い悪魔族の事だ、オーガの事などどうでも良いのだろう。

私はとにかくオーガを殺せば、

死んでも恨みが晴れると思っていた。


オーガの頭を踏みつけ、首を切った。


はずだった…

が、弾かれた。


オーガの皮膚に、私の剣は一切通用しなかった。


悪魔がどんどん私に迫ってくる。


血の気が引き、

全身の水分という水分が抜けていってる。


恨みも晴らせず 何も出来ず私は殺される。


恐怖と怒りの震えで、立ち上がれなくなった。


後ずさりする。

この悪魔から遠ざかろうとしても、なぜか後ろに進まない。


怖い…憎い…

私はもう死ぬのだ。


ここで私の走馬灯が思い返された。


薄っぺらい私の人生。

オーガを恨み、兄を妬み、悪魔を僻み、

自分の事しか考えてこなかった。


今になって、後悔ばかり浮かんでくる。

他人とばかり比べ、

他人を使う事ばかり考え、

私自身が何かしてこなかった。


死にたくない…

と思うも、目の前には、

涙で何重にもなった、悪魔の顔があった。


私は殺された。



と思ったら、目覚めると、数日過ごした小屋に居た。


目の前には、オーガと私を殺したはずの悪魔。


でもそれ以上に、

私の眼に飛び込んできたのは、

そこら中に干してある、

私の衣服や生活の跡だった。


オーガが物珍しそうに、

あたりを物色する。


恥ずかしくなり、叫んだ。


ら悪魔がオーガの視線を遮った。


私はやはり理解できなかった。

こんな悪魔が、私の心を汲んでくれるはずがない。


そしてあろうことか、私の無事を確認すると、

私を気遣って、オーガを外へ連れ出した。


いや、もうよそう。


彼女は…いや、悪魔や魔族は薄汚いんじゃない。


私たちと同じなんだと。

そしてメルサさんも、

私を自分と同じように扱っているのだと。


片腕を無くし、熱でうなされている悪魔を見ると、

とても愛おしく思えた。


グチョグチョの衣服を取り換え、奥にしまうと、

メルサさんたちを招き入れた。


様々な話を聞いた。


そして私もメルサさん達に、付いていきたいと思った。


今までやりたかったけど、出来なかった事。

兄と再会すること。


彼女たちと一緒なら、叶うと思った。


けれど、メルサさんの返事はNOだった。


私とオーグンの仲を気にしての事…


オーグンの事は色々聞いたが、やっぱり嫌いだ。


オーグンのせいで兄が出ていったのには、変わりはない。


私が兄を追いかけていたのも、

跡目どうこうの話は建前で、

単純に強い兄と、同じ景色を見てみたかったから、なのかもしれない

兄を妬んでいたが、好きであった。


兄をオーグンに奪われた感覚はずっとある…


それにオーグンは私を、性対象としてみている。

正面切って言われると、気持ちが悪い。



メルサさんは私の事を気遣ってくれる。

そして、オーグンに私が襲われるのを、危惧しているのだろう。


だったら、私も覚悟を決めなきゃならない。


私はオーグンに抱き付いて、その覚悟を示した。


メルサさんは渋々OKしてくれた。


やった!

これから私の冒険が始まるんだ!

ウィンディとして、一人の人間として、生きていくんだ。


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筆者が泣いて喜びます。




⚫︎囚われ姫は魔王に救われる

https://ncode.syosetu.com/n1925ii/


恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。

勇者が姫を救おうとするが、姫は運命か自由かの選択を迫られます。



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