30話 「同行の理由」
数日後、テンがようやく目を覚ました。
「あれ… ここは…? 君は…?
オーグン、
何でそんなに、端っこにいるの?」
「いや、いろいろあってな…
目が覚めて良かった」
俺は先日の失言から、
彼女たちにある一定の距離に近づくと、
蔑んだ目をしてくる。
だから離れなければならない。
メルサも仲間内で好き嫌いがあると
空気感が悪くなる、って言っていたのに…
結局この仕打ちか…
まあ、今回は完全に俺が悪いんだが。
逆にウィンディとメルサはたった数日で、
本当の姉妹のように仲良くなった。
おそらく、俺という共通の敵がいるからだろうが…
平和に貢献出来ているなら、良いか…
「テンちゃん腕は痛む?」
テンは自分の無くなった腕をじっと見つめ、
唾を飲み込むと。
「大丈夫さ 死にはしないから、
それにおいらの術に、腕は関係ないしね」
と明るく振舞っていた。
「ところで、そのウィルに似た女の子は?」
「彼女はウィンディ ウィルの妹だって」
「は、初めましてウィンディです」
「ははーん
さてはオーグンが、何かやらかしたんだな」
鋭い…
「まあ、そんなことは、誰が見ても分かるよね、
よっと っと?」
テンが寝床から立ち上がると、
一瞬ふらつく。
メルサがそれを支え、
「悪いねメルサ 大丈夫だから」
とメルサの支えを解く。
「じゃあ、ウィルを探しに行こう」
「お前もう少し休んだ方が…」
「おいら何日も寝ていたんだろう?
大丈夫さ!
ウィルもどこかで、助けを求めているかもしれないから」
「あの…やっぱり、私も連れて行ってくれませんか…?
メルサさん…昨日の事なのですが、
私旅をしなくても、他に知り合いもいませんから、
置いて行かれたら、どのみちここで一人、
死ぬんだと思います」
「……」
メルサは考えこみ、
「…ダメよ、
ウィンディちゃん、
ここなら、前王国の残党が居たら、
探しに来てくれるだろうから」
「やっぱり、私がオーグン…さん…と
仲良く出来なさそうからですか?
…分かりました!」
とここで、ウィンディが突然、
俺の腰辺りに抱き着いてくる。
うほっ なんだこのご褒美…
ウィンディが失神したときは、
鎧を着ていたから分からなかった。
女の子の身体って、こんなに柔らかいのか…?
女性の肌に触れたのは、
メルサがイルスに吹き飛ばされたのを、
キャッチした以来だ。
メルサはなんだかんだ、修羅場を潜り抜けていて、
女らしさの中にも、弾力…強さがあった。
人間だからなのか、
ウィンディの肌感は吸い付くようだ。
それに香りなんて、付けていないはずなのに、
めちゃくちゃ甘く、
フローラルな良い香りがする。
ああ、ダメだ…
理性を保つんだ俺…
「これでどうですか!
何なら私…
オーグン…さん…の事
受け入れられますよ!
死ぬよりはマシです!!」
「うっ…」
メルサは顔を引きつらせている。
テンは何が起こっているのか、分からない様子だ。
ここは俺が男らしく、ビシっと決断しよう。
「ウィンディを連れて行くぞ!」
メルサは表情を曇らせる。
「いいんじゃないか?
ここに置いて行っちゃうのは、かわいそうだよ。
ウィルに会わせた方がいいしね」
「テンさん!ありがとうございます!
テンさんもモフモフで、好きです!
後でぎゅーって、させて下さい!」
「分かったわ…
オーグン分かっているわね。
ウィンディちゃんに変なことをしたら、
ただじゃおかないわよ」
そう言うメルサは、
今までで、初めて見せる表情を見せた。
最近のメルサの戦闘能力だと、
冗談抜きで、殺られる気がする…
「お、おう!」
「ありがとうございます!メルサさん!」
メルサからの許可が下りた瞬間、
ウィンディは俺を突き飛ばし、
テンに抱きついた。
「テンさんもありがとうございます。
このモフモフ…気持ちいいです!」
テンもまんざらではない顔をしている。
羨ましい…
羨ましいぞテン
そんなにギューギューされたら…俺なら…
「私、もしオーグンに襲われたら、
その場は耐えますけど、
すぐ二人に言います。
その時は、しかるべき対応をお願いしますね」
ウィンディは二人に可愛く会釈した。
三人からの冷たい視線を感じる。
そこまでされたら、興奮は一気に冷めた。
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筆者が泣いて喜びます。
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恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。
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