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最恐オーガですが、他種族の女の子と仲良くしたいだけです  作者: あいだのも
悪魔王

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17話 「おやしき」



悪魔軍本拠地に向かう途中、


ウィルの偉大さを噛み締める日々だった。


今まで一人旅をしているときは、全く気にならなかった。

一度快適を覚えてしまうと、ダメになるらしい。


今までだったら、目が覚めたら美味しい料理があった。

ウィルが早起きして、作ってくれていたから。


しかし、今はない。


腹ペコのなか狩りをし、

魔物を焼いただけの食べ物に、

不満などなかっただろう。


喉が乾いたら、水がいつでも飲めた。

ウィルが魔法で大気中から、水を抽出してくれたから。


しかし、今はない


水は貴重だという考えが、薄れているのだろう。


雨風を凌げる、即席の寝床を作ってくれていた。


しかし、今はない。


この耐え難い状況は、皆の精神を削る。

俺は別の意味でだが…


そんなこんなで、ギリギリの状況のなか、

悪魔軍の本拠地に向かう。


目の前に現れたのは、

なんとも怪しげな木造の屋敷。


周囲には何もなく、ポツンと一軒だけ建っている。


メルサは危険を察知して、身震いしている。

だが、少しの間でも休まないと、皆の身が持たない。


「休もう」

異論がある人はいなかった。


そこまで古くはない建物。


誰か住んでいるのだろうか。

建物とは逆に、古く錆びた取っ手に手をかける。


ギィィィと扉は開いた。


中は比較的綺麗だ。

こんなところに、綺麗な建物があるのが、逆に不気味だが。


「誰かいるかー?」


俺の声が家の中に響き渡る。


「悪いが休ませてもらうぞ」


中から返事はない。


家の中に入っていった。


家の中は美に無関心な俺でも、趣味が悪いと感じる。


魔物の皮を敷物にし、

首を額縁にいれ飾り、

生きているかのような、死体の置物群。

それらが所狭しと並んでいる、小奇麗な部屋。


しかも、何処からか死体ではなく。

生物の気配もする。


「いるな?」


「い、いるね」


「ええ、…でも地下ですわ」


「地下があるのか?

誰が住んでんだ?」


「結界かなにかが邪魔して、分かりませんわ」


コツコツと廊下の板の間を歩いていると、

コーンと床下に空洞がある音がした。


三人は目で合図し、

板の間を外し、

そこにあった階段を下りていった。



階段の下にあったのは、

実験場とも、解体場とも、言えるような一室。


しかも荒らされた後のような感じであった。


そこらじゅうに散らばっている紙。

読めないくらい、ぐちゃぐちゃに書かれている。


本棚もあったが、



器材もナイフや針等

何処でもあるような物ばかり残っていた。


やはり、誰かが持ち出した後なのであろうか。


散らばった紙の中に、一冊の本があった。

俺は読み書きが出来ないので、メルサに読んでもらう。


表紙には何も書かれていない本。


内容は、

『とうとう実験は完成した。

私達はこの世の真理を解き明かしたのだ。

私達は何も変わらない。

いや、この世の森羅万象、人、魔族、悪魔然り

動物、魔物、植物、鉱物、水や大気、魔法に至るまで、

すべて同じだ。


誰か…

いや私たちが、分けて呼んでいるだけなのだ。


あの場所に行けたのは、幸運でしかない。

一宮には世話になった。

彼女はこうなってしまった私を蔑むだろうが。


5人ともよくついてきてくれた。

黄は国に帰ると言っているが、それが良いだろう。


彼がどの道を辿り、

たとえ私たちに牙を向こうとも、

私たちは変わらない。


私も寿命だ。


だがやるべき事の一欠片も、出来ていない。

藍が言うには、この場所で私は生き永らえれない。

新しい場所を探さねばならぬだろう。


そして永久の愛を我が子たちに…』

ここで紙は破れたいた。


ここの主の手記だろうか、

いつ頃書かれたものなのか、



突然、後ろから気配がする。


反射的に振り返ると、目の前にはメルサの顔があった。


脱皮のせいか、ますます美しくなったメルサの顔に照れる。

心なしかメルサも顔を赤くしている気がしている。


がそうじゃない。


「い、今、後ろから気配がしなかったか?」


「わ、私は前から気配がした気がしたのですが…?」


お互い顔を合わせ、心臓が高鳴り、

テンに足の小指のつま先を踏まれる。


それは痛てぇぞ。


いや待てよ、 

俺は後ろに感じ、メルサは前に感じたということは、

メルサの目の前に、一瞬だけ現れたということ。

それなのにあのメルサが、姿すら確認できなかった。


この場に緊張が走る。


そこまで速いということは、

下手したら、次に気配を感じた時には、

俺らのうち、誰かがやられる可能性すらあるということ。

俺ら三人で全く反応できないとなると、

それほどの強者が、この世界に存在するということ。


三人背中合わせになり、

一瞬の気を見逃さないよう、

全神経を集中させる。


時間にして幾秒過ぎただろうか。


また瞬間的に後ろから気配を感じ、

バッっと振り返ると、

テンとメルサも振り返っていた。


俺らは顔を見合わせていた。

そこには誰もいなかった。


が少なくとも、誰かが攻撃されたわけではなさそうだ。


「クククククク」

部屋中からあざ笑うかのような、声がして前に顔を戻すと、


目の前でムーが三人の外周をとびながら、

クルクル回っていた。


「ムーなぜおまえがここに?」


そいつは首を傾げた。


目を閉じていて分からなかったが、

よく見ると、左右に目が二つ、

ムーじゃない。


「お前は何者だ? ここはなんだ?」

と問うと、


クルっと縦に一回転して、

小さい手から火の粉を出した。


火は木の天井を焼いている。

「おい! 俺らを生き埋めにするのか?」


「クククク」

とまた笑いながら、手から水を出し、火を消す。

焦げた木が残る。


「お前は…何がしたいんだ」


そいつは焦げた木に手をやると、

木が生きているかのように、焦げた部分を落とし、

木が意思を持つように、べしっとそいつを殴ろうとしたが、

瞬間移動でかわした。


木は諦めたかのように、新しい木を伸ばすと元通りに戻った


「こいつはここを守っているんじゃないのかな?」

テンがそういうと、


小さい妖精はテンの頭にポンと乗り、テンの頭をなでる。

どうやら正解のようだ。

そしてからかうかのように、四方八方に瞬間移動した。

まるで遊びたがっているかのように。


「悪いな 俺らは急ぎでやるべきことがあるんだ」

というと

小さな頭をガックシと落とした。



俺らはここで、一晩だけ休ませてもらうことにした。


ムーに似たクーは、

ずっとちょっかいをかけてきていたが、

それも気にならないほどに、俺らの心身は疲れ切っており、

深い眠りに入っていた。


クーが居るのに、

地下室が荒らされていたのは、何でだろうか…?

と頭の隅にあったが、 

それ以上に思考が出来ぬほど、疲れていた。


翌朝、

「じゃあな いきなり邪魔して悪かったな」

そういうと、クーは俺の耳に手をやる。

チクっと針の刺したような痛み。


耳に手をやると、小さな耳飾りがついていた。


「お前 これ呪いじゃねぇだろうな…」


「クククク」

と逆さまになりながら、クーは笑っていた。


メルサがじっと耳飾りを観て、

「私の眼には 魔法もかかっていない、

ただの耳飾りに見えますわ」

と言った。


こうして俺らは、この奇妙な屋敷を後にした。



「良かった」と思ってくださったら

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筆者が泣いて喜びます。




⚫︎囚われ姫は魔王に救われる

https://ncode.syosetu.com/n1925ii/


恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。

勇者が姫を救おうとするが、姫は運命か自由かの選択を迫られます。



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