16話 「暴露」
これまでの話
種族間交流に憧れと不安を抱くオーグン。
ゴブリンの里を貶めた、悪魔王をぶん殴るべく旅をする。
オーガの里に立ち寄り、
イルスより不干渉条約はある者の策略だと知る。
オーグン母より里を逃れ、
次にすべきことは一つになった。
しかし、そこでメルサの突然の告白。
「悪魔軍が人間の国に総攻撃をかけるだと…
なんで、ずっとだまっていたんだ!!」
俺はつい声を荒げてしまった。
以前幹部一人の襲来ですら、大苦戦を強いている状況。
悪魔軍の総攻撃に、人間の国が耐えられるはずがない。
「ウィル!抑えろよ…」
メルサの危機を感じた俺は、
すぐさまウィルを止めに入ろうとした。
俺の焦りとは裏腹にウィルは冷静だった。
ウィルは腕を組み、
少し考え込む仕草をして、
「ふぅ」と溜息一つ、
腕をほどき、口を開く、
「分かった…
もう少し早かったら、良かった…
いや、むしろいいタイミングなんだね」
ウィルはそう言いながら、メルサに近づく。
「ウィル待て! 早まるな!」
俺は声を上げることしか出来ない。
身体が動かない。
おそらく、今まで故郷にいたからこそ、
そこを攻撃されると知り、
ウィルと同じ気持ちになっているのだろうか。
ウィルはメルサの手を取る。
それに反応するように、メルサはビクッと身体を震わせる。
メルサの手の魔法陣が光りだした。
「やめろ!」
やはり身体は動かない。
テンも顔を背け目を閉じてる。
光は一瞬閃光のように輝き、
魔法陣の光は弱まっていった。
「メルサぁ!」
メルサはきょとんとし、
ハッと我に返り手を見た。
魔法陣が消えている。
「え?」
一同の頭に?が浮かんだ。
「何を勘違いしてるの、
僕がメルサを殺すと思った?
”今”だからいいんでしょ」
困惑する俺らにウィルは続けた。
「悪魔軍の秘密を隠し”今”話したってことは、
今までは悪魔側か、
もしくは保身で動いていたけど、
これからは諜報としてでなく、
俺ら側につきたい、って事でしょう?」
俺は頭の中が真っ白になった。
ウィルの言っていることは分かる。
でも俺の感情がついていっていない。
「国は心配だけど、今すぐってわけじゃない。
これから悪魔王のところに行くのに、
メルサがこっち側って確信を持てるのは、
余計な心配をしなくていい。
まあ君らの反応を見たい気持ちもあったけどね。
ははは!」
メルサはウィルに何かされる覚悟はしていたんだろう、
ほっとした顔をしていた。
テンもほっとした顔をして、
「魔法陣解いたんだったら、
メルサの脱皮を見れなくて残念だね、オーグン」
と洒落のように言った。
「はははは! 確かに、
もうすぐ一年だから、
そろそろだったかもしれないのにね」
ウィルもその場の空気を変えるべく、続いた
「そうね でも大変だから、
手伝ってくれると助かるんだけど」
メルサは洒落?
に混ぜ、少し照れたように言う。
「なぬ!」
今まで考えないようにしてきたが、
心の奥底ではメルサの脱皮、
つまり、裸をタダで見られる事、を楽しみにしてきていた。
それが縛りなく、
メルサ公認で見ていいだと…
最近隠している、大きな乳の中には何があるのか。
たけが長くなった、パンツの中には俺らにあるものが、
無いのか…
そもそもどうなっているのか。
想像が膨らむ…
俺の息子が反応しかけた時、
「それは許さないから」
ウィルがピリッとした雰囲気で言う。
俺とメルサは背筋に、冷や汗をかいていた。
これは罠だ…地雷だ。
ダメだ触れては。
テンもそれには納得したように、うなずいてる。
「とまあ、こうなったら僕は国に帰るしかないね。
悪魔王の所へは、ここから近いといっても、
往復したら月日もかかるし」
「一人で大丈夫なのか?」
「うん これまでで長旅にも慣れてきたし、
それにムーもいるから」
ムーも任せろと言わんばかりに、胸をポンと叩く。
「じゃあ悪魔王に攻撃を止めさせるように、頼んだよ」
「お、おいらがウィルの代わりに、
オーグンが変なことしないよう、見張っとくから!」
テンがそういうと、
ウィルはにこっと微笑み、
あっさりと来た道を戻っていった。
こうしてウィルは人間の国に、
俺、テン、メルサは悪魔王の所へ道を分かちた。
ウィルと別れて数日後
メルサは一人で脱皮を終えた。
大変と言っていたのは本当のようで、夜通し
「うぐぐぐ」
とかもがいている声が聞こえてきた。
ウィルがいないので、ちゃんとした寝床もなく、
ほぼ野宿状態。
つまり野ざらしで行う。
ここら辺は強い魔物も多く、
俺らもあまり離れるわけにもいかず、
近くでもがいているメルサを、
一目でも覗いてみたい衝動に駆られ、
「メルサ 夜食食べるか?」とか
「悪魔王の弱点教えてくれ」とか
なんとかハプニングを装って
何とか覗けないかと、思案するも、
テンがずっと俺の事を監視していて、
それは叶わなかった。
一晩中悶々とした思いで過ごしていた。
翌朝メルサは疲れた様子だったが、
いつも以上に肌はつやつやしていた。
せめて脱皮の皮でも見たいと思ったが、
それすらもメルサは処理をした後だった。
うーん残念…
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筆者が泣いて喜びます。
⚫︎囚われ姫は魔王に救われる
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恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。
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