閑話 死亡報告
------メルサ視点-------
オーガの里について初日、
オーグンはオーガの女性から逃げ回っている。
私はここでするべきことがある。
悪魔軍として使い死んだオーガの親族探しだ。
気が重い
でもいかなくてはならない。
彼はこの里で嫌われ者だったとしても。
親にとっては大事な息子、
男が少ないオーガ、
必ず伝えなくてはならない。
誰に聞いてもすぐわかると思った。
しかし思ったより、
彼を知るものは居なかった。
聞き始めて7人目でようやく、
彼を知る者に出会えた。
その者の案内のもと、
彼の実家にたどり着いた。
ふう…
深く深呼吸をする。
いうことは決まっている。
たとえ罵られようとも、
伝えることは伝えなくてはならない。
「……すみません」
ドアなど無い家、
見た目でもわかる貧しそうな家、
その中に向かって声をかける。
中からオーガの老婆が出てきた。
老婆は見たこともない。
私の姿に一瞬ぎょっとする。
「ど、どちらさまですか」
この里の人々はエネルギッシュな印象であったが、
老婆には覇気というものが無かった。
「オーギ君の事で伺わせて頂きました」
老婆は目を見開き複雑そうな顔をした。
「たしかにオーギは私の息子ですが
あのクズはこの里を追放された身
私の知るところはございません」と
つきはなすように言った。
しかし、
伝えるべきことは、伝えなくてはならない。
私はオーギの事をできるかぎり正確に伝えた。
もちろん私との悪事を含め正確に…
そして死んだことのみ伝え、
誰が殺したのかだけは伏せておいた。
殺したウィルがこの里にいると知ったら、
流石に心中穏やかではないだろう。
彼女は淡々と聞いていた。
「そうですか。死にましたか…
族長と関係ない男との子を宿し、
それがたまたま男だった。
男はまた別の娘と子を宿し、
私はオーギと二人で過ごしました。
でも、オーギは男のくせに華も無く、
女から好かれることもなかった。
あれは弱くダメな息子。
おまけに里で問題を起こし、
外でも問題を起こし、
今までの罪が死んで晴れる事は無いが、
死ぬことで他の者が救われるなら、
…良かったです。」
老婆の冷たい言葉。
私自身も咎められてている言葉。
私は拳を強く握りしめるしか出来なかった。
「あなたも億劫だったろうが、
わざわざ知らせてくれて、
ありがとうございます」
そういうと老婆は奥へ戻ってしまった。
私も煮え切らない思いを抱え、
その場を後にしようとしたが、
「うっ」
私の聴覚が家の奥で泣いている、
老婆の嗚咽を聞いた。
あんなこと言っても、
彼はこの老婆のたった一人の息子だったんだ。
産んだら産みっぱなしの私の親とは違う。
彼女なりの愛情を注いで、
育てた息子が道を外し、そして死んだ。
悲しくないはずはないんだ。
私は静かにその場を後にした。
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筆者が泣いて喜びます。
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