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最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい【完結】  作者: あいだのも
オーガの里
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13話 「親指の真実」




村では宴が催された。


イルスと酒を飲みかわし、

女どもの襲来をはねのけ、


ウィルは一人でガブガブ酒を飲み、

テンは女どもにわしゃわしゃ触られている。


メルサは母に酌をし、

ご機嫌を取っている。


楽しくも、

中々大変な宴であった。


宴後両親に呼び出された。


イルスが両親のとなりで、

おいおいと泣いている。

先にじいちゃんの話をしてたのだろう。


「それであなたたちはこれからどうするの?

身に染みて分かっていると思うけど、

種族のコミュニティを離れ、

生きていくのは楽ではないわ」


「それでも俺は外で生きていく」

今まで色々あったけど、

やっぱり俺は外が好きだ。


夢をかなえるに、

どうしたらいいかなんて分からないが…


「そう」

母は無表情に頷いた。


隣にいた、イルスが口を開いた。

「人間…貴様を見ていると、

ウィンザードを思い出す。

無論やつは貴様のように、

魔法は使えず、か弱く、

お世辞にも強くは無かったがな」


「武神ウィンザードがか弱い?」


「武神か、

やつはそんなやつでは無かったが、

我とオーガスタ、ウィンザード、ティムは

お前らのように世界を旅していた。

ウィンザードが武神…

はっはは…

やっぱり人間が考えることは、わからんのぉ」


イルスは懐かしむような、

後悔するような、

複雑な表情を浮かべていた。

色々と思うところがあるのだろう。


「イルス様、

歴史についてお話してくださいませんか?

我々オーガ族に伝わる歴史と、

相違があるかと思いますので」


「か、母さん…

オーガ族にも伝わる物があんのかよ?」

初耳だ…

オーガにはそのようなものが無いと思っていた。


「当たり前でしょ?

あなたと、このデブ父さんが馬鹿過ぎて、

かつ歴史に興味を全く示さないから、

わたしが代わりに、

オーガスタ様から聞いていたのよ」


「あー納得!!」

周囲は満場一致で腑に落ちていた。


「じゃねぇよ!

皆して俺を馬鹿にしやがって、

そりゃぁ、俺も、多分……いやきっと」

心外だ…とも言い切れないのが悲しい。


親父が隣に来て、ポンと肩を叩く。

「お前は俺の息子だ」

親父の腹を見て、

血の気が引いていくのを感じた。


「イルス様は幾年から生まれているのですか?」

テンが聞く。


「…覚えておらぬ、

寿命とは、種族によって決まるものではなく、

個体の生命力。

オーガスタもオーガでありながら、

かなり生きただろう。


そうだな…

我が卵から孵った時は、

まだこっちの大陸に、

人間はいなかったな……」


「方舟!?」

ウィルが目を見開いた。

ウィルにとっては、嘘と思っていた歴史だ。


「人間ではそのように伝えられておるのか?

乗り物の事は知らぬが、

その伝承はおそらく合っている。

人間は沈んだ大陸から来た者だ」


「沈んだ大陸?」


「大昔、大海にもう一つ大陸があった、

そこに人間が住んでいていたが、

その大陸は沈んだ」


「大陸が沈む?

何があったんだ?」


「さ、さあな我は知らねぇが」

なんだその反応…?


「イルスは人間が嫌いなのか?」

テンが問いかける。


今までのテンだったら、

自分より強い者に、すぐ物怖じしていたが、

イルス相手には積極的だな、


イルスに戦いで認められたのが、

自信になったのか。


「基本的にはな…

個の力は弱いくせに、

どんな手を使ってでも、

相手を滅ぼそうとしてくる、

厄介極まりない。

一度滅んだのもそれが原因なのだろう」


「そうか…」

俺はなんだか、残念な気持ちになった。


「オーガの伝承にも、

人間族には気を付けろとあります。

境界線の人間、

魔族の棲み分け然り、

過度な接触は避けるべきなのでしょう」


「あの……悪魔とは悪なのでしょうか?」

メルサはテンとは逆に、

いつもに比べ控えめだな。

「そうか、お主は見慣れぬと同時に、

親近感があった、

どこかで我ら龍族の血がはいってるのだろう。


結論から言うと、悪ではない。

ただ、コミュニティでは変わり者は、

悪とされるのだろう。


種の多様化とは自然の摂理、

環境が変われば生き残るため、

種も変化していく。


テン お主のような突然変異も、

自然の摂理じゃ、

じゃが、種を守り、

生き残るために、

その他を排除する。

これもまた自然の摂理。


つまり争いとは必然。


結局のところ、何が正しいかではない」

メルサはそれを聞くと、

俺の陰に隠れるように下を向いた。



「最後にイルス、お前に聞きたいことがある」


「なんだ?」


「お前は俺に他種族の女の子と仲良くなるため、

挨拶には親指を仰け反らすって言ってた。

けどあれは俺を騙していたのか?」


「はっはは!!

貴様!本当にあれをやってたのか!!

はっはは!

やはり馬鹿だのぉー」


「てめぇ!!」


「そうか、そうか…

お主らはあの契りを、

無くそうとしてるのか…」


しばらくの沈黙が場を制す。


「不干渉……

あれを作ったのは、奴だ。

世界で交流しよう、と言ったのも奴ら。

世界で交流するな、と決めたのも奴…

奴らに世界は振り回されてる」


イルスは続けた。


「我が教えていたことは、

半分は冗談だけど、半分は本気だ。

他種族の性器なんて分からんだろう?

ちゃんと見える形で表現しねぇと」


「うぐっ…」

俺は何も言えなかった。


「で、お主ら次はどこに行くんだ?」


「悪魔王をぶん殴りに」


「はっはは、愉快!

是非、奴をぶん殴ってやってくれ。

出来たらの話だがな。

うむ、今回の目覚めも楽しかったのぉー

次回はこの中のどれだけの者が、

生きて会えるか分からんが、

是非会いたいのぉ友よ」


「あらまだ2日目ではなくて?」


「オーグンとの戦いで、使いすぎたし、

そろそろ年かのぉ、

活動時間がだんだん短くなっとるわい、

もう眠くなってきた」


「そうですか

次回はしっかり話を聞いてくれると、

助かりますが」


「はっは!

いかんせん寝起きは、

寝ぼけてるからのぉ!

それにそろそろ寿命かのぉ、、

はっはは」


「次回この村を襲ってくるのなら、

寿命の前に私が殺しますよ」


「おおお、怖いのー、、

ちゃんと起こしてくれのぉー」



そうして俺らは、

過去を懐かしむように、

今を後悔しないように、

未来に希望を見出すように、

記憶をなくすほど飲んだ。


この後一番の修羅場がまっているとも知らず。






「良かった」と思ってくださったら

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筆者が泣いて喜びます。




⚫︎囚われ姫は魔王に救われる

https://ncode.syosetu.com/n1925ii/


恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。

勇者が姫を救おうとするが、姫は運命か自由かの選択を迫られます。



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