11話 「駆け引き」
そこから先は地獄だった、
前に毒を飲み死にかけた時のが、
可愛く見える…
いや、あっちのメルサの膝枕は天国だった…
未婚のオーガの女が、
婚齢期の女すべてが…
いや、明らかにババアも混じっている…
玉の輿を狙い、あらゆる攻撃を掛けてくる。
俺は何とか人一人入り込める、岩山の切れ目に
入り込み、入り口を手で塞ぐ。
塞いだ手に女が、胸を押し付けながら喚く。
「私がオーグン様と結ばれるのよ」
「オーグン様私をめちゃくちゃにしてください」
「オーグン様ぁああ
私100番目でもいいから子種を下さいぃい」
こんな状況に性的興奮もクソもねぇ。
するするっとテンがネズミに化け、
女どもの隙間を縫ってやって来た。
「オーグンが他種族女性に拘るのが分かったよ、
内心ただの他種族好き、変態野郎だと思ってた。
ごめん…」
テンは泣きながら謝ってきた。
お前は俺をそんな風に思っていたのか…?
テンは一通りおいおい泣いたら、
帰って行ってしまった。
薄情な‼
夜になった。
さすがに前も見えない位、辺りも暗くなると、
人は減っていった。
メルサがやって来た。
彼女の感覚なら、暗闇も関係なく動ける。
「私たちは離れの小屋をあてがって貰えましたわ、
私がそこまで先導しますわ」
メルサの先導…
どうしても胸に肘が当たる。
わざそか?…いや違う。
以前まではわざとだったろうが、
ウィルや母との契りがある。
それを破るはずがあるまい。
当たる感触は服の上から、
普通にしてても、暗く前が見えない。
転ばないように、身体を寄せることで、
周りに感ずかれず、早く移動でき、
足元の凹凸に引っかからないようにしてくれている。
そう こうゆう状況がそそる。
ってそうじゃない。
「私たちが借りている外れにも、
先ほどまで、大勢の女の子が集っていましたわ。
女性のオーガ然り、
大奥様は本当におっかない方ですね」
このいつにも増して、丁寧な言葉使い。
メルサと母との出会いは、
メルサに恐怖を植え付けたようだ。
朝騒がしくて起きた。
ウィルが離れの家、周囲に作った壁を、
どんどん叩かれている。
「ちょっとオーグン、何とかしてよ。
うるさいんだけど」
ウィルはご機嫌ななめだ。
「仕方ねぇだろう、
こんなことになるなんて、
思ってもいなかったんだから」
「はぁー、
アキナに触発されて、来てみればこれか…
情けなくフラれたんだから、
諦めてここで余生を過ごせば?
こんなに君のことが好きな女の人がいるなら、
ハーレムでも築けるでしょう?
僕がアキナと君の分、
悪魔王とやらを痛めつけとくから」
「あ?」
流石に今の発言は頭にきた。
図星だが、言い方が気にくわない。
「ちょっと!
喧嘩してる場合じゃないだろ」
「そうですわ、
あなたたちこのままでは私たちも、
この場から動けなくなりますわよ」
「ちっ…」
しばらく、壁の音をドンドン叩く音のみが、
この場を支配した。
この状況がずっと続くのだろうか。
俺の貞操が奪われるまで…
いやだ!
もう怖いとか言ってられない。
「母さんと話しをつけてくる」
「この中どう行くの?」
「それに話をしたところで、
どうにかなりそうな感じでは、
なさそうでしたけど」
「うっ…」
俺は…いや俺らは、もう外には出られないのか。
「ち、力ずくでも、
このバカげた狩りを辞めさせる」
はぁ…とメルサがため息をつくと、
テンの方に歩いて行った。
「テンちゃんウィルちゃん、
あの魔道具使ってもいいかしら?
オーグンちゃん、おうちの方角と目印は?
あ、ウィルちゃん、
この魔法陣って、即死とかは無いわよね?」
「感覚器官を鋭くするのは、
魔法に数えられないと思うよ、
それに即死は無いよ」
ウィル…案外簡単に教えたな…?
「そう」
メルサはテンから、魔道具を受け取ると
精神を魔道具に集中する。
「俺の家は、ここらで一番大きい家。
って言えばわかるか」
メルサは魔道具を覗き込みながら、
目をきょろきょろと動かす。
「ええ、ありましたわ。
北北東に256mの所のね。
あとはウィルちゃんの魔法で、
地下に穴をあけて貰えれば、
誰にもバレずにいけるわよ」
あらま結構簡単に解決しちゃった…
魔法と魔道具ってすげぇんだな。
感心している場合じゃない、
あの母と一戦交えるかもしれないんだ。
気を引き締めねぇと。
掘ってもらった穴を進み、
決死の覚悟で地表に出ると、
懐かしき俺が育った家のリビングであった。
そこには母の肩に、
にゃんにゃんしている父がいた。
おい父よ、
威厳とはなんぞや。
父は一瞬はっとすると、
表情を引き締め語りだした。
「我が息子よ、
俺も小さい時は俺の親父…
お前の祖父が世界中を旅し、
様々な女と関係を持ち、
帰ってきてからは、
様々なオーガを妻としたと聞き、
羨ましく思っていたが、
自分より強い一人の女に、蹂躙されるのも、
悪くは無いぞ!」
と、いきなりドンっと部屋の扉が空いた。
「襲来、襲来です」
父は母の方にもたれながら、
クワっと鋭い視線を、
入ってきた村人に向けた。
「バカ者!
家族水入らずに、
水を指すやつがあるかぁ!」
「す、すみません」
母が父を殴った。
「バカはあなたでしょ」
「へ、へぇ」
見ると、親父の下半身に傘を指している。
俺は死んでも、あれにはなりたくない。
母は相変わらず、冷静な表情を崩さない。
「百年単位の節目…
前回は来なかったけど…
イルスが来たのね?」
「い、イルスってなんだっけ」
ドゴッっと、また母が父を殴る。
「バカは黙っていなさい、
そうねぇ…
うちの村の者に、イルスは厳しいものね…
あなたたち、イルスの脅威をはね除けたのなら」
「イルス…あいつが…」
「あら、知り合い?
ちょうど良いのか、悪いのか…
話の通じないもの同士って、
なんで逆に通じるのかしらね…?」
俺のはあなたの血筋…
とは口が裂けても、言えない。
とにかく話はまとまった。
外に出ると、今までの晴天が、嘘だったかのような
暴風だった。
イルス…あいつには因縁がある。
今日こそ積年の恨みを晴らす時。
「良かった」と思ってくださったら
是非ブックマーク、★★★★★をお願いします。
筆者が泣いて喜びます。
⚫︎囚われ姫は魔王に救われる
https://ncode.syosetu.com/n1925ii/
恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。
勇者が姫を救おうとするが、姫は運命か自由かの選択を迫られます。