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最恐オーガは他種族女子と仲良くなりたい【完結】  作者: あいだのも
ゴブリンの村
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8話 「幕引き 世界の真実」


 朝になった。


 俺らがここにいる理由は無くなった。


 この洞窟に住み着いたとて、

 またゴブリン達を不安にさせるだけ。


 心残りはある…


 アキナと仲良くなれたんだ。

 初めて女の子と仲良くなれた…

 一緒にいたい。


 もっと仲良くなりたい。

 アキナの事が好きだ。


 だが、連れていくにも、

 アキナの体力は足を引っ張ってしまう。


 彼女にはこの村に愛してくれる両親がいる。

 


 「オーグン、

 そんなに頭掻きむしって、

 痛くないの?」


 「あっ……」

 気づいたら俺の頭は鋭い爪で、

 血だらけになっていた。


 「メルサの事もあるし、

 ここには長居出来ないんだから、

 ちゃんとアキナにお別れするんだよ。

 テン、君もだよ」

 テンは尻尾をビクッとさせてから、

 シュンとした。


 ウィルは俺の頭に回復魔法をかけてくれた。


 やっぱりアキナとはここで別れなくてはならないのか…


 「あらあら、お早いわね、

 なんの相談かしら?」

 洞窟の奥から旅支度を済ませた、メルサが出てきた。


 「………君を始末する方法を相談してたんだよ」

 うおっ…ウィル怖い。

 

 「あらやだ、物騒な相談だこと、

 レディの寝床を襲うのだけは、

 勘弁してくださいな」


 「君のような人は寝床を襲われたら、

 歓迎するんだろ」


 「ふふっ あなた以外でしたら

 歓迎致しますわよ」

 なっ これは俺に言ってる?

 明らかに視線がこっちを向いている… 

 俺の顔が赤くなる。


 俺は良くてウィルはだめなのか。

 案外ウィルもモテないのか。


 ざまぁ!


 オーガ一族は一夫多妻制なんだ。

 

 だからアキナも好きなんだ。

 アキナともメルサとも

 やっぱ一緒に旅したいな…


 「冗談はさておき、

 これからの相談でしたわよね」


 冗談…なのか…?

 てか、メルサは話聞いてたんだな、

 感覚器官が敏感って言ってたからな。

 感覚器官が敏感…?はっ!!!


 「ウィルちゃん、

 あなたオーグンちゃんに、

 隠していることがあるわね。

 私の説明で省いてましたもんね。

 オーグンちゃんが傷付くから、

 隠しているんだろうけど、

 いずれは知ること」

 

 「ウィルなんか隠していたのか?」

 

 「……」


 「…私から言った方がよさそうね。 

 オーグンちゃん、悪魔ってどんな人?」


 「奇数目じゃないのか?

 いや、でもメルサは違うのか?

 そういえばパズズ軍は偶数目ばかりだったな

 てか、奇数目なんか居たか?」


 「目の数は比喩なのよ」


 「…どうゆうことだ?」


 「おはよー!! 

 みんな…ご飯…あれ?」

 アキナが朝ご飯を持ってきたが、

 重い雰囲気に戸惑う。


 「ちょうど良いわ、 

 あなたも聞いてくださいな、

 悪魔とは種族に数えられないもの。

 私がここでオーガを使って、やっていたのは、統治実験ではなく、悪魔軍を増やす実験。

 つまり、

 オーガとゴブリンのハーフの量産。

 わかる?

 他種族が結ばれれば、

 生まれるのはこの世界で、悪魔と言われる者。

 オーグンちゃんとそこの小娘が

 結ばれたとて、生まれるのは、悪魔ってことよ。

 妊娠の可能性は低いけどね」


 俺は金槌で脳を直接殴られたような、

 衝撃を受けた。


 悪魔の、この世界でのひどい扱われようは、

 俺でも分かる。


 自分ならまだしも、

 自分の子があんな目に合うと分かって、

 なお子を持とうと思えるのか。


 俺はオーガとしか結ばれられないのか……?

 今までの俺の行動は、

 気持ちは無駄だったのか…?


 アキナはきっ、と強い眼差しをメルサに向けた。

 「私…村の子達…育てる」


 メルサは少し目を見開く。

 「私が言いたかったことは、

 そうゆうことでは無いのだけれど…

 まあ、良いわ、私に責任があるもの」


 メルサはそういうと、

 きれいな宝石がついた首飾りをアキナに渡し、


 「物に困ったらこれを、

 東の山にいる炭鉱族にあげなさい。

 東の山なら魔物も少なく、

 彼らなら騙したりせず、

 欲しいものと交換してくれるはずよ。

 それから…」


 鞄から一枚の魔方陣の書かれた布

 を取り出し、アキナに渡す。

 「子供達が手に負えなくなったら、

 鳥にこの布を巻き付けて飛ばしなさい。

 悪魔軍の基地まで鳥が飛んで行き、

 悪魔軍の誰かが来るから、

 子供達を引き渡しなさい。

 野に放るよりは、良い対応をしてるれるから」


 アキナは軽く頷くと布を受け取った。


 「ありがとう」

 メルサはアキナにそう言った。

 目は優しかった。


 やはりメルサの事はどうしても、

 悪いやつには思えない。


 悪いのは悪魔王だ。

 ぶん殴ってやる。


 それにしてもアキナ、


 アキナは俺らと来る気は全くないのか…

 心のどこかでもしかしたら、

 俺らと一緒に来てくれる、

 そう思っていたのに…



 ウィルは軽くアキナの頭を撫でて、

 「元気でね」

 とそれだけ言った。

 ウィルらしい挨拶だった。


 テンはアキナ抱きつき、

 涙を流しながらも嬉しそうだった。

 「良かったな…村に戻れて」

 アキナは逆に寂しそうだった。

 

 「テン…ありがとう…あなたは私の恩人」

 テンはそれを聞くとニコッと笑った。


 アキナは涙で濡れた顔のまま俺を見た。

 「オーグン…その女にフラれたら、

 私が相手してあげる」

 俺はアキナと二人で過ごした日を、

 思い出してしまった。


 アキナと暮らせたら幸せなのか…

 とか思ってしまう。

 もしかしたら村の外れでなら、

 一緒に暮らせるのではと…

 

 でも、皆とも旅を続けたい。

 何かを諦めなきゃいけない選択…

 出来ない…


 

  情けない…



 アキナは俺の気持ちを察したのか、

 「ばーか…うそよ…

 私は…オーグンいなくても…幸せよ」

 そう言うと俺の股間を蹴りあげた。


 軽い痛みだったが、

 俺はうずくまって、

 立ち上がれなくなってしまった。

 「アキナ…」

 何も言葉が掛けられなかった。


 アキナの事は好きだ。

 アキナも拒絶はしないだろう。

 だが、これからの事と…

 二人の子供の事を考えたら…


 何も言えなかった。

 強さなんてなんも役に立たない。


 本当に情けない…


 そのまま動けないでいたら、

 ウィルが魔法で立ち上がらせ歩きだした。

 周りを見れなかった。


 結局最後の最後まで、

 アキナの顔を見れなかった。



 好きな人との別れが、

 こんなにも辛いものだとは、

 思わなかった。





50年後------


悪魔軍拠点に鳥を使役した手紙が届けられた

オーガとゴブリンのハーフの子供からだった


中々汚い字であったがかろうじて読めた。

『オーグン様とそのご一行に転送願います

先日、アキナ氏が崩御しました。


彼女は実の母親が投げ出しかけた

私達のような者にも

精一杯の愛情を注いでくれました。


お陰様で私達も

この村で幸せに過ごせております。


こうして筆を取ったのは

アキナ氏に一度だけ

何で私達みたいな者の世話をするのか

結婚をしないのかと聞いた事があります。


彼女は嬉しそうに

あなた達の事を話すのです。


私は正直、良い気はしませんでした。

彼女はいつも幸せそうでしたが

独身でいるのはあなた様を待っている様に

私の目には映ったからです。


でも、それは間違いでした。


実際、自分の子を持った私なら分かります。


あなた様が現在どのような状況なのかは

分かりかねます

もし、自分の子がいらっしゃられるのなら

分かるかと思います。


自分の子は「特別」なのですね


アキナ氏もその事が

分かっていたんだと思います。


あなたと子を成したとしたら

私達を平等に扱えず

私達が村で生きていくことなど

出来なかったでしょう。


彼女は楽しかった数日の思い出を胸にしまい

幸せな今を幸せに生きていたんだと思います。

そして幸せそうに逝きました。


私達は彼女に大恩があります。


そしてあなた方にも


その小さな恩返しが出来ればと思い

頂いた宝石を対価に

炭鉱族に言葉と文字を教えてもらい

この手紙を書きました。


長寿のオーガにとって50年というのは

あっという間だったと思います。

あなた様方がこちらに足を運ばれないのは


彼女との数日は記憶に残らない程度の事

だったのかもしれません。


あなた様との別れは

アキナ氏から見ても情けない様子だった

との事だったので

顔を会わせづらいと言うことも

あるのかもしれません。


ですが、もし、

彼女の事を覚えていらっしゃいましたら

村に足を運んで頂けたら

歓迎致します


彼女を忘れないでいることが

この大恩を返すことになると信じて』


ゴブリン族兵士長パンタ


「良かった」と思ってくださったら

是非ブックマーク、★★★★★をお願いします。

筆者が泣いて喜びます。




⚫︎囚われ姫は魔王に救われる

https://ncode.syosetu.com/n1925ii/


恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。

勇者が姫を救おうとするが、姫は運命か自由かの選択を迫られます。



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