プロローグ 「許されざる者」
俺の名はオーグン、
最強種族の一種と言われている。
オーガ族の族長、
(といっても強いってだけ
普段は外で好き勝手生きている)
そしてここは人間の国。
オルミナ王国
王都ウィンザード
何しに来ているかって?
もちろん……
人間の女の子と仲良くなりたくて、遊びに来たんだ!!!
人間の女の子は良い。
綺麗に梳かれた髪
出るところは出て
締まるとこはしまった
程よく芳醇な身体
焦点がはっきりわかる
透き通るような眼
体毛がほとんど生えていなく
すべすべと柔らかい肌
是非一度お話をしたい。
だが、目の前に立つ、
こいつはそれを許さない。
(不吉な)一つ目の妖精を連れた、
人間の王子ウィルヘルム。
顔は王子に似合った、整った顔をしているくせに、小汚ない自然派の服装をしてる。
こいつは常に女の子から
キャーキャー言われ
俺のような悩みを、持ち合わせてはいないんだろう。
ただの自然派イケメンならまだよい。
こいつは顔だけじゃない、
戦いも強い。
俺は生まれてから500年、
(オーガ族の寿命は1000年程)
負けたことは一切無い。
倒しきれない奴は片手で数えきれる程だが、
この若造はその一人だ。
「お、お、お、お、オーグン!!
この国から立ち去れ!!」
「疫病をもたらすものめぇ!」
「いやよこんなのに犯されるのわぁ!!」
酷い言われようだ
無理やり犯したりはしない…
合意の上でのことを狙ってはいるが
城壁の前にずらっと並んだ兵士が、声を震わせ、罵声を浴びせてくる。
ただ遊びに来た俺が、なぜここまで嫌われ恐れられるのか。
・強すぎるから?
それは否めない。
しかし、それを言ったらこの目の前にいる、
いけ好かない王子も恐れられるだろう。
・見た目が怖いから?
確かに見た目は人間の冒険者が、俺の顔を見ただけで、気絶する程怖いらしい。
分かっている…
この世界には鉄の掟がある…
【他種族交流の禁止】
それを俺は今も破り続けているからだ。
ある者は他種族と交わる事で、病原体に犯されるといい、
ある者は世界の崩壊を招くと恐れている。
どれも根拠のない嘘。
と言いたいが確かめようもない。
嘘かもわからない。
たとえ、世界をまたにかけるような、人間の冒険者でも、魔族の生活圏に入るものはいない。
逆もまたしかりである。
なぜ、俺が禁忌を破り続けるのか…
いる
いる
いるいるいるいる
人間の女の子がたくさん!
人間の女の子は可愛いんだぁ!!!
「うぉおおおおおお」
いちもつをおったてながら、
突進していく。
女の子の冒険者達は、
この世の終わりのような顔をしている。
ウィルヘルムは手を前にかざすと、
目の前に魔法の盾が現れ、
ドォオン
俺とウィルヘルムの衝撃音が一面に響き渡る。
いつも俺の攻撃を簡単に止めてくる。
こいつはどこへ行っても強くてモテて、
何不自由なく過ごしているんだろう…
衝撃で地面が揺れる。
俺とウィルヘルム以外立つことすら出来ない。
「ウィルヘルム!!いつも邪魔をしやがって」
世の中理不尽だ、
ただ俺は人間の女の子と、
仲良くしたいだけなのに…
それが許されない。
「僕も普段は王子とか関係なく、好き勝手生きているが、
君のような国に脅威をもたらす者は、放っておけない」
まさに王子を絵に描いたようなやつだ。
モテるのだろう。
ウィルヘルムが
空いている手で氷のつららを作り、
目に突き刺そうとしてくる。
俺はとっさに、
頭付きでつららを砕く。
ここでお互い距離をとる。
ウィルヘルムは、
「ここじゃお互い思い切り戦えないだろう?
場所を変えて、今日こそ決着をつけよう」
「ああ、望むところだ」
悪魔が俺の身体に触れると、
広い荒野に着いた。
普通なら罠を警戒するべきなんだが、
何度も顔合わせてればわかる。
こいつはそんなことをしない。
腰にかけてあった相棒(鬼の棍棒)を取り出し、
ウィルヘルムに殴りかかる。
ウィルヘルムは紙一重でかわし、
俺の懐に入り込み、
俺の鳩尾に凝縮した火焔魔法を撃ち込んできた。
数十メートル吹っ飛ばされるも、
少し皮膚が焦げた程度。
身体の内部までダメージが浸透していない。
俺の力はウィルヘルムの回避に通用せず、
ウィルヘルムの多彩な魔法は、
俺の身体に致命傷を与えられない。
故に二人の戦いは、いつも引き分けになってしまう。
はぁ……はぁ……
「オーグン…はぁ…いい加減僕らの国を襲うのは、やめてくれないか……」
いつもこの男に止められる。
この男がいる限り、俺は夢を叶えられない…
「うおぉぉぉ!
なんで…
なんでなんだ!!
俺はただ人間の女の子と
話して!
飯食って!
笑いあったりしたいだけなのに、
なんでお前はいつも、
俺の前に立ちふさがるんだ!!」
正義を振りかざすこいつに、
怒りと悲しみがこみ上げ、
溢れ出てしまった。
いきなり泣きながら喚きだす俺を、
ポカンと見つめているウィルヘルム。
「なんなんだ……
他種族で交流してはいけないとか、
誰がそんなこと決めたんだぁー!!
うぉおおおおおお!!」
「ちょっと待って……
オーグン…君は人を襲ったり、
拐ったりしに来てるんじゃないのかい?」
「誰がそんなことするんだ!
俺は世界の女の子の味方だ!
ただ、仲良くなりたいだけなんだよぉ……」
「え、え、…
だって伝承では…
それに君は…その…
あそこを立てながら、
襲って来て……」
「それは生理現象で、
普通の事だろうが!
女の子見るだけで反応しちゃうんだ!
普通の反応だろ!?!?」
「え、まさかオーグン……童貞なの?」
「な、な、な、馬鹿にしているのか!!!!」
顔をうずめるウィルヘルム。
「くっ…… くっ……くっ……
はっはははは!!」
いきなり笑いだすウィルヘルムに、
ムッとする。
「てめぇ何がおかしい!」
「いや、だって…
君って500歳…
500歳で童貞でち○こおったてて、
人間の国にくるなんて、
はっはははは‼
しかも、ただ女の子と、
仲良くなりたいなんて、
子供かよ…
はっはははははは‼
はぁ…
ボソッ…何が魔族に近づくなだよ…」
「ん?」
「いや、なんでもないよ、
僕はウィルヘルム、
ウィルってよんで!!」
「はぁ!?
いきなりどうした??」
俺の冷めた返しにウィルは怒り、
もう一戦繰り広げられた。
こうして人間の王子ウィルとの生活が始まる。
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筆者が泣いて喜びます。
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恋愛に憧れるが運命を定められた姫を封印が解かれた暴君魔王が攫う物語です。
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