そして始まる
S# 122 SHINTOU支部道場内
道場で信者5人が瞑想をしている。
信者A 「何者?」
京香が光り輝く槍を持って中に入ってくる。
信者A 「まさか・・・幸村か・・?」
信者達の目が真っ赤になり、そこにあった木刀を手に取
る。黒い煙を帯びる木刀。
京香 「・・・」
幸村 「・・・恐れるな。京香・・・」
信者達が京香に襲い掛かるが、京香がうまくかわす。
信者A 「お前・・・幸村ではないな?・・・出て来い幸村!貴様
の魂が欲しいのだ!!」
京香が必死に信者達の攻撃をかわす。
幸村 「・・迷いは不要・・」
京香が相手の攻撃を読んでいる感じでかわす。
幸村 「・・・・」
S# 123 通り(回想)
狭い通りを車が走っている。
車の前に清家月香(17)が立っているため、車が止ま
り青年将校が出てくる。月香の槍が光り輝いているのを
見て青年将校が襲い掛かるが、見事な槍さばきで月香が
倒す。
S# 124 SHINTOU支部道場(夜)(回想終わり)
京香が信者達の攻撃をかわしている。
幸村 「・・・」
京香 「・・・」
京香の頭に月香の顔がフラッシュバックするが、信者達
の攻撃にかわすことに集中して、一人を残して、信者た
ちを封印する。
信者 「頼む。許してくれ!封印だけは・・・」
信者が土下座をしている。
幸村 「京香。やるんだ」
京香 「・・・でも」
京香が油断して幸村のほうを見た瞬間、信者が京香に襲
い掛かる。
京香 「・・・きゃ」
幸村 「京香!!」
幸村が京香の身体に入る。
京香(幸)がその信者を倒す。
京香(幸) 「やれ!といったろう!」
京香(霊) 「でも・・・なんかかわいそう」
京香(幸) 「奴らは悪霊。油断・・」
普通の信者達が騒動を聞きつけ現れる。
京香 「あっ・・・普通の人?」
幸村 「ああ・・・そのようだな」
京香 「にげて!早く!約束でしょ!第二条!人を傷つけないこ
と!」
京香(幸)が必死に逃げ出す。
S# 125 道路(夜)
京香と幸村がいる。
京香 「・・・まあ、ちょっとミスも合ったけど、成功だよね」
幸村 「・・・」
京香 「・・・ねえ!」
幸村 「・・・何ようだ?」
京香 「・・・もういい」
S# 126 学校の教室
京香が寝ている。
京香が昨日の事を夢見て、飛び起きる。
先生 「おい。上田。上田!寝るんじゃない」
京香 「・・・はい。すいません」
S# 127 女子トイレ
京香がぼんやりとして様子で掃除をしている。
幸村 「・・・どうした?」
京香 「・・・」
S# 128 川原(夕)
京香が歩いている。京香が西尾を討ったところを見てい
る。
京香 「・・・ねえ。ユッキー。ねえ。あの人の魂ってどうなっ
たの?」
幸村 「・・・かような事を知って如何する?」
京香 「なんとなく・・・」
幸村 「彼らはあるべきところに戻った・・・それだけのこと」
京香 「・・あるべきところって・・・地獄とか?」
幸村 「・・それは知らん・・だがここに居てはいかん」
京香 「・・・そっか」
京香が眠そうにあくびをする。
京香 「そろそろ行かないと・・・」
幸村 「ああ・・・」
京香 「・・・ねえ。ユッキー間違ってないよね・・」
幸村 「ああ・・・」
京香 「うん!ユッキーを信じるよ」
幸村 「・・・」
京香 「腹が減っては戦はできぬ。まんじゅう買おうっと!」
幸村と京香が歩いていく。
S# 129 ビルの一室(夜)
SHINTOUの講習会会場。
信者達がいる。京香が入って信者達を一瞥する。
京香の槍が光りだす。
信者A 「くっ・・・こやつは我々の敵じゃ!」
一般の信者達も京香に敵意をむき出しにする。
京香 「・・・」
京香が一般信者達の攻撃を簡単にかわして、信者Aの目
の前に一瞬で立つ。槍がさらに光りだす。
信者A 「まて!まってくれ!!」
京香が一瞬考えるが、信者Aを討つ。
信者A 「・・・」
信者Aの体から邪気が消えていく。
京香 「ごめんね・・・」
京香がその場から立ち去る。
S# 130 予備校教室
京香が模試を受けている。あくびを繰り返している。
京香がペンに力を込めると、ペンが弱く輝く。
S# 131 予備校玄関
京香があくびをしながら出てくる。
京香 「なんか・・・すごっい眠い」
幸村 「そうであろう・・・」
京香 「何が?そうであろう、なのよ。私は受験生なの。勉強以
外で・・くたくたになるなんて」
祥子が来る。
玲子 「京香~」
京香 「玲子!」
S# 132 カフェ
京香が玲子が話をしている。
京香N 「なんだろう・・・」
祥子の周りに薄く邪気が見える。
幸村 「・・・」
祥子が携帯を取り出すとストラップにSHINTOUの
お札がついている(邪気に覆われている)
京香 「玲子!・・・それ?」
玲子 「ああ、これ。知らない?最近これつけるのはやりなんだ
よ・・・」
京香 「はやり?」
玲子 「うん。モデルとか歌手とかけっこうみんなつけてる」
京香N 「ユッキー・・・」
幸村 「はずさせた方が良い。悪霊を受けいれやすい体になって
いる・・・」
京香 「それ・・・はずしたほうが」
玲子 「何言ってるの?クラスの子もみんなつけてるよ」
京香 「でも・・」
玲子 「ちょっと・・・トイレ行ってくるね」
京香が玲子のストラップを見ている。
京香 「・・・」
S# 133 カフェの外
京香が走って出てくる。手にはSHINTOUのストラ
ップ。京香がそれをゴミ箱に捨てる。
京香 「・・・ああ、玲子になんて言おう・・・」
京香がため息をついている。
幸村 「・・・周りを見てみろ」
京香が周りを見ると、若い人達の多くがこのストラップ
をつけていることを知る。
京香 「そんな・・・」
幸村 「・・・」
S# 134 川原(夕)
川原を歩いている老人。
老人 「(独り言)最近・・・川がきれいになったの・・・」
京香がぼんやり夕焼けを見ている。
京香 「ねえ・・・ユッキー」
少年 「すいません!!」
京香が飛んできたボールを素早く、つかみ少年に投げ返
す。驚く少年。
少年 「すいませんでした!」
幸村 「・・・」
京香 「もし玲子がストラップつけ続けたらどうなってたの?」
幸村 「今すぐ、どうということではないが・・・」
京香 「・・・」
幸村 「・・・悪霊を受け入れやすくなり、瞬く間に、奴らに完
全支配されよう」
京香 「・・・完全支配」
幸村 「・・・生きている人間の魂とは強い。それに比べ我々の
ような迷える魂は弱い・・・・悪霊に一時的に支配され
ようと、我々が封印すれば、元の魂が肉体に戻る事がで
きよう」
京香 「・・・」
幸村 「だが、支配の時が長く続き・・その者の魂が弱くなり、
完全支配されたとする・・その時、我らが封印しても、
その者の魂はもどらん」
京香 「・・・死んじゃうってこと?」
幸村 「魂の死が・・・人の死とすれば・・そうであろう」
京香 「そんな・・・どうしたら」
幸村 「どうもこうない・・・そうならざるよう封印するのみ」
京香 「・・・迷いのない世界って・そういうことだったんだ」
幸村 「・そう・・彼らにとって完全支配は迷いのない世界への
道・・・なのだろう」
京香 「・・・」
幸村 「・・見失うなよ」
京香 「えっ?」
幸村 「・・・霊力を込めてみろ」
京香 「光らない・・・」
幸村 「・・・魂の力は強いが、変わりやすい」
京香 「・・・」
幸村 「・誤った方向に力を使おうとすれば・力は失われる」
京香 「・・・」
幸村 「力だけではない・・・未来もだ」
京香 「うん」
京香と幸村が夕焼けを見ている。
S# 135 SHINTOU支部道場(夜)
前とは違う道場。
13人の信者達が講堂にいる。
制服に着替えた京香が中に入ってくる。
信者 「貴様!幸村だな!!」
信者達の目が赤くなる。京香が信者の数を数える。
京香 「一・二・・・・13人」
幸村 「まあよかろう。だがもっと素早く感じ取れんとな」
信者 「何を話している!」
信者達が京香に一斉に襲い掛かるが、京香が余裕な感じ
で倒してく。
京香 「少しぐらい褒めてもいいじゃん・・・褒められて伸びる
子なの。私は!」
幸村 「後ろ!!」
信者が京香の後ろから襲い掛かるが、京香が余裕で倒す。
京香が余裕の表情で幸村にVサインをする。
幸村がやれやれといった表情で見ている。
S# 136 SHINTOU支部道場前道路(夜)
何台もの車が来る。その一台から本山が降りてくる。
S# 137 SHINTOU支部道場(夜)
倒れている信者達が眠っている。
信者A 「封印されております」
本山 「幸村か・・・・」
本山がにやりとする。
信者A 「・・・本山さま?」
本山 「・・・敵ながら見事・・・」
S# 138 予備校(夜)
京香が英語の授業を受けている。
幸村も興味深そうに先生の話を聞いている。
先生が黒板に英語の問題を書く。
幸村 「・・・1であろう!なっ、京香。そうだよな」
京香 「あれは・・・引っ掛けで正解は2!」
幸村 「(残念そうに)さようか・・・」
先生 「これはな、模試とかで出ると面白いほど引っかかるんだ
が・・・正解は2だからな」
唖然としている京香。してやったりの幸村。
S# 139 川原(夜)
京香が修行完璧にこなしている。
京香 「どう?完璧でしょ?」
幸村 「うむ・・・まあまあだな」
京香が満足そうにしているが、大あくびをする。
京香 「・・・もう、今日終わりでいいでしょ」
幸村 「まだまだ!武の道に終わりなし!」
京香 「・・・別に武の道目指してないんだけど・・」
幸村 「つべこべ言うな!」
京香 「はいはい・・・」
京香が眠そうにしながら修行をする。
S# 140 道路(夜)
SHINTOUの信者の乗る車が走っている。その前に
京香が立ちはだかっている。
降りてきた信者達を倒し、封印するが眠そうな京香。
S# 141 京香の部屋(夜)
勉強に身が入らない様子の京香。
幸村 「京香。お前勉強しなくて良いのか?」
京香 「するよ!今からしようと思ってたの・・・」
京香が机で寝てしまう。
S# 142 予備校
京香が呆然と模試の結果を見ている。
幸村 「どうした?呆然として?」
京香が模試の結果を見せる。志望校がCとB判定。
京香 「下がった・・・」
幸村 「・・・」
京香 「滑り止めも・・・」
B判定の模試結果。
S# 143 京香の部屋(夜)
京香が鉢巻をして勉強をしている。
コーヒーを苦そうに飲んでいる。
幸村 「おい・そろそろ・・」
京香 「無理!」
幸村 「おい?」
京香 「・・・成績が上がるまではお休み!」
幸村 「おい・・・奴らは・・」
京香が必死に勉強をしている。
困った様子の幸村。
S# 144 SHINTOU支部道場外(夜)
京香がいらいらした様子で、
京香 「今日だけだからね。しばらく休み!分かった?」
幸村 「・・・」
京香 「・・・もう・早く終わらせて、勉強しないと」
幸村 「おい、油断だけは・・」
京香 「分かってるよ!早く行こう」
京香が適当に儀式を行い、道場に乗り込む。
S# 145 SHINTOU支部道場講堂(夜)
京香が乗り込んだ瞬間、部屋が真っ暗になり、太鼓の音が
鳴り響く。
京香 「えっ・・・罠!」
京香が逃げだろうと外に出る。
幸村 「・・・出るな!罠だ」
何本ものロープが京香に投げつけられる。
幸村 「かわせ!」
京香 「えっ・・・」
京香が何とかロープをかわし逃げようとするが、今度は一
斉に弓が射られる。京香が何とか、矢を払う。
道場の外をたくさんの信者が囲んでる。
京香 「ユッキー!代わって!!」
幸村 「くそ・・・」
京香の中に幸村が入ろうとするが、京香の首下に刃が突き
つけられる。
井川 「やめておけ・・・まあ、この女子に入ってくれたほうが手
っ取り早いがな・・・」
京香 「・・・」
幸村 「・・・」
井川 「この女子を見殺しにして・・・また来世で復活するか?も
うその時は・・・お前一人の力では変えようのない世にな
っているだろうがな・・・真田幸村!」
幸村 「・・・酒井・・忠次」
井川 「・・・久しいな。幸村」
幸村 「・・・」
京香 「ユッキー・・・どうしたら!?」
幸村 「・・・」
井川 「ひっとらえい!」
京香が信者達に縄で縛られる。
S# 146 車の中(夜)
京香が縛り付けられている。
井川が幸村の元に行く。
京香 「ユッキーのことが見えるの?」
井川 「こやつ等と同じ扱いか・・・女子よ」
赤い目の信者達。
京香が辺りを見回す。
井川 「・・・幸村・・・お前には二つの道がある」
幸村 「・・・」
井川 「お前がこの女子の身体を支配し、その後・・・」
井川が黒い煙を帯びた短刀を取り出す。
井川 「これで・・・胸を討たれ封印されるか」
幸村 「・・・」
井川 「それとも術で封印されるか」
幸村 「・・・」
井川が短刀でお面を切り裂く。
井川 「ここで、この女子を討つのも悪くないが、光陰の憂いを絶
つには・・・女子を支配した時のお前を討つこと・・」
幸村 「・・・」
井川 「・・・支配しろ!幸村!」
幸村 「・・・」
井川が京香の指に短刀を突きつける。
京香 「ユッキー・・・」
幸村 「・・・」
井川 「・・・こいつの指を一本一本切り落とし・・・全身の皮を
剥いでみようか・・・断末魔を聞けばお前の使命も少しは
揺らぐか?」
京香が青ざめるのを見て、井川が怪しく笑い、
井川 「安心しろ。この男は貴様がどんな目に合おうとも、代わり
に犠牲になるような男ではない・・」
幸村 「・・・」
京香 「・・・」
井川 「使命こそ命・・・・無駄なことはせぬ。望みどおり術で封
印をしてくれるわ。はっはっは!永遠の封印をな」
S# 147 山頂
山頂にある大木にくくり付けられる京香。幸村が月を見て
いる。信者と井川がいる。
井川 「今日、ここに地脈が集結する・・・」
井川が携帯電話で話し始める。
京香 「ユッキーの力だったら、こんな縄切れるでしょ!」
幸村 「無理だ・・・縄に邪の文様を刻まれている・・・某の力で
は切れん・・・それに」
京香 「じゃあ・・・どうするのよ!」
幸村 「お前がほどけ・・・」
京香 「そんなの無理だって」
幸村 「やれ!某が縄の絡み方を教える・・まず右手で一番近くに
ある縄を・・・」
京香 「・・・」
京香がもぞもぞしながら、縄をはずそうとする。
幸村 「(小声で)ちがう!そうではない!」
京香 「ぜったい・無理・・」
井川が電話を切る。
幸村 「某が奴の注意を逸らす・・・その間に何としても縄を解け」
井川 「大御所様もお前が封印される様子を一目ご覧になりたいそ
うだ」
幸村 「・・・」
井川 「会うのは、2・26以来か・・・」
幸村 「・・・」
京香 「2・26?」
井川 「・・・楽しみにしておられるよ。お前と会うのをな」
幸村 「・・・さようか。ならばここで討ち取ってやるわ」
井川 「・・・くっくっ。そのざまでか?」
幸村 「・・・」
井川 「・・・いいか忘れるな。今日、お前はここで封印される。
康正殿や井伊もお前が来るのを楽しみにしているはずだ・
・・」
幸村 「・・・」
井川が京香の顔を見る。
井川 「しかし・・・あの時の、女子に似ているな」
京香 「似てる?」
幸村 「・・・」
井川 「何と言ったかな・・・・そうだ。清家月香」
京香 「清家月香?」
井川 「話してないのか?幸村?まあお前にすれば触れなくない過
去かもしれんがな」
幸村 「・・・」
井川 「お前が殺した女の話だからなあ・・・」
京香 「ユッキーが殺した・・・?」
幸村 「・・・」
井川 「女子。教えてやろう。こいつは目的のためには・・・犠牲
を厭わない」
幸村 「・・・」
井川 「足元を犠牲で踏み固めている」
幸村 「・・・」
井川 「英雄の母は犠牲と言うが・・・まさにその通り」
京香の縄が外れる。その瞬間、幸村が京香の身体を借りて、
逃げ出す。
井川 「追え!奴を逃がすな!!」
信者達が京香(幸)を追っている。
S# 148 森の中(夜)
雷が鳴っている。京香(幸)が息を殺している。京香(霊
)も隠れている。
大勢の信者達が幸村たちを探しているが、去る。
京香(幸) 「行ったな・・・」
京香(霊) 「・・・ねえ。ユッキー?月香さんって」
京香(幸) 「・・・」
京香(霊) 「・・・」
京香(幸) 「行くぞ!」
京香(幸)が無視をするように、走り出す。
S# 149 森の中(夜)
雨が降っている。京香(幸)達が木の根元に隠れている。
京香(幸) 「今日は・・・ここで一先ず休もう・・・」
幸村が京香の身体から離れる。
京香 「・・・」
幸村 「闇では奴らの方が目が利く・・・夜明けと共にここを抜け
る」
京香 「・・・」
幸村 「某が張っているから、そなたは寝ろ」
幸村が京香を出来るだけ見ないようにして、周りを見てい
る。
京香 「・・・」
京香がそんな幸村をぼんやり見ているが、疲れのあまり寝
てしまう。
S# 150 白公神社庭(夜)(夢の中)
清家月香(17)が槍を振っている。幸村が隣で見てい
る。
京香の心の声 「・・・ユッキーに・・・月香さん?・・・」
月香が槍の練習を終えると、幸村に微笑み。幸村も月香
を見て、微笑む。そして二人が満月を見ている。
京香が講堂から二人を見ている。月香が京香を見て、微
笑む。
S# 151 森の中(夜)
京香が目を覚ます。雨がすっかりやみ、月が出ている。
幸村が満月を眺めている。
京香 「雨・・・止んだんだ・・・」
幸村 「ああ・・・」
京香 「ねえ・・・月香さんって?それに2・26って」
幸村 「・・・」
京香 「・・・」
幸村 「・・・」
京香 「ユッキーずるい」
幸村 「・・・」
京香 「ユッキーは私の事知ってるくせに・・自分の事は都合の
良いことしか教えてくれない・・・」
幸村 「・・・」
京香 「なんで、何も話してくれないの?」
幸村 「・・・」
京香 「ねえ!!」
幸村 「・・・」
京香 「・・・・・もういい」
京香がふてくされるように寝るふりをする。
幸村 「今から70年ほど前、某は今のよう蘇り、奴らと戦った」
京香 「・・・」
幸村 「・・・1936年何があった分かるか?」
京香 「1936年・・・」
幸村 「予備校の授業でやったはずだぞ・・・」
京香 「1・・9・・3・・・い・く・み・・なんだっけ?」
幸村 「1936年・・・2月26日・・」
京香 「2・26事件?!」
幸村 「そう。清家月香とは2・26事件・・と呼ばれる。あの
事件で共に戦った」
京香 「・・・」
S# 152 昭和前期の東京(回想)
昭和前期の東京の光景。
幸村N 「某は、大坂の陣で討ち取られた後の一切の記憶はない・
・だが現世に蘇った家康を討つ、その使命だけを持ち、
蘇った」
S# 153 白公神社講堂(夜)(回想)
月香が講堂で座禅を組んでいる。
月香が静かに目を開ける。
月香 「・・・出てきなさい」
幸村(霊)が柱から出てくる。
月香 「・・・」
幸村 「・・・」
月香 「何用だ?迷える魂よ・・・」
幸村 「見えるのか・・・某のことが」
月香が静かにうなづく。
S# 154白公神社庭(夜)(回想)
雪が降っている。
S# 155 白公神社講堂(夜)(回想)
月香と幸村が対峙している。
幸村 「・・・」
月香 「・・・」
幸村 「某は現世に蘇った家康を討つために・・・いる」
月香 「・・・」
幸村 「・・・信じられんか?」
月香 「・・・」
幸村 「正直、某も信じられん。だがこれはまことのこと」
月香 「・・・」
幸村 「・・・」
幸村が去ろうとする。
月香 「・・・ここ数ヶ月・・・ろうそくの明かりが落ちつく事
がなかった・・・」
幸村 「・・・」
月香 「・・・それに私はあなたに一度会っている」
幸村 「?」
月香 「満月の晩・・・夢の中で・・・」
幸村 「夢の中・・・?」
月香 「ええ・・・あの時の、床の冷たさ・・・今でもはっきり
覚えている・・・」
月香がゆっくり床に手を触れる。
月香 「信じられないか?」
幸村 「・・・」
月香 「・・・そうだろうな」
幸村 「・・・」
月香 「・・・何が望みだ・・・」
幸村 「ここで戦う力・・・肉体が欲しい・・・」
月香 「そうか・・・ならば私の肉体を使え」
幸村 「・・・まことか」
月香 「・・・」
幸村N 「月香は巫女の家系に生まれ、その中でも特別な力を持っ
ていた。一つの肉体に二つの魂を共存させることができ
た・・・」
月香が座禅を組んでいる。幸村が月香に近づき、中に入
る。
S# 156 東京(回想)
軍隊が整列して歩いている。民衆が不安そうな様子で眺
めている。
幸村N 「2・26事件の起こる前年。昭和10年・・・この国は
不穏な空気に包まれていた」
S# 157 白公神社外(回想)
月香が槍を振っている。
月香 「幸村!どうだ?私の槍の扱いは?」
幸村 「なかなか見事だ・・・」
月香 「そうか!」
幸村 「しかし・・・そなたが槍を振るうことはない」
月香 「いや・・・我が肉体を鍛え上げた方が・・・お前が戦う
ときにも有利であろう」
幸村 「・・・申し訳ない」
月香 「謝る事はない・・・今、私は何のためにこの世に生を受
け・このような力を授かったのか分かった気がする」
幸村 「・・・」
S# 158 白公神社講堂(回想)
外では雪が降っている。
月香が幸村と話をしている。
月香 「そうか・・・関が原の戦いに向かう前までに裏ではその
ような事が・・・」
幸村 「さよう・・・某と」
幸村と月香の顔が険しくなる。
月香 「誰?」
月香が障子を開けると千代(6)がいる。
月香 「・・・千代?」
千代 「月香さま・・・そこのお方はどなたですか?」
幸村 「・・・」
月香 「見えるのか?千代?」
千代 「はい!」
月香と千代が困った様子で見ている。
S# 159 白公神社外(回想)
月香が槍を振っている。その横で千代が遊んでいる。
幸村がやさしく微笑みかけている。千代が御神木に登
り始める。
千代 「見て!見て!」
月香 「千代!御神木になんて事を!早く降りなさい!」
千代 「はーい・・・」
千代が少し不満な顔をして、降りようとするが、雪で足
を滑らせ、落ちる。
千代 「きゃっ!」
月香 「千代!!」
幸村が千代の身体に乗り移り着地する。しかし、額を少
し切ってしまう。幸村が千代の身体から離れる。
それと同時に泣き出す千代。
月香 「大丈夫?」
幸村 「大丈夫か・・・」
幸村の問いかけに泣くのを止め、うなづく。
幸村 「よし・・・良い子だ・・・」
雪が降ってくる。
千代 「ゆき様・・・」
月香がその光景を微笑みながら、見ている。
S# 160 新聞の記事(回想)
永田鉄山の惨殺記事が載っている。
S# 161 飲み屋(夜)(回想)
幸村N 「当時、世間で陸軍の一部に不穏な空気アリとの噂が広が
り・・・某と月香は彼らを追っていた」
数名の青年将校が出てくる。
青年将校A 「何奴?」
月香が現れる。
青年将校B 「なにを・・・」
月下の持っていた槍が光輝く。
青年将校A 「貴様・・・何者だ!!」
青年将校たちの目が真っ赤に染まり、持っていた刀剣が
真っ黒な闇を帯びる。
月香 「やはり迷える魂達か・・・あるべきところに戻れ」
月香が瞬く間に青年将校たちを倒していく。
青年将校A 「この槍さばき・・・まさか・・」
月香が首から六文銭をアクセサリーにしている。
青年将校A 「・・・真田・・・信繁」
月香が青年将校Aを含め、全員を倒す。
月香 「・・・」
S# 162 道路(夜)(回想)
月香が真っ赤な目の青年将校たちを倒している。
S# 163 民家(夜)(回想)
青年将校たちが話をしていると別の部屋で悲鳴が聞こえ、
青年将校たちが真っ赤な目になり、臨戦態勢を取る。
月香が現れる。六文銭が見える。
青年将校A 「六文銭か!?」
青年将校たちが逃げ出す。
S# 164 広場(夜)(回想)
青年将校たちが一目散に逃げて来て、息を整えている。
月香がすでに広場の中心に一人いる。
青年将校A 「真田・・・」
逃げ出す青年将校たちを一人残らず倒す。
月香 「・・・・・」
幸村N 「我々は順調に彼らを封印していった・・・そして年が明
け・・・」
S# 165 料亭(夜)(回想)
料亭から出てくる飯田安正と青年将校たち。雪が降って
いる。
飯田 「・・・何奴?」
料亭の屋根にいる月香。飯田が月香の銭を六枚つけたア
クセサリーを見る。
飯田 「真田か・・・」
月香 「・・・井伊の赤鬼・・・待っていたよ」
飯田と青年将校の目が真っ赤に染まる。
飯田 「それは、某の言葉・・お前の首・・魂・・殿に捧げる」
飯田が自ら、月香と対峙しようとするが、青年将校が止
める。
青年将校A 「ご自重を・・・我々にお任せを」
飯田が残念そうに、下がる。
飯田 「・・・必ず・やれ」
月香が槍を振るうが、青年将校達も強い。
飯田 「武田より受け継いだ彼らだ・・お前でも容易には倒せん
だろう・・・」
月香 「くっ・・・」
月香が青年将校の一糸乱れぬ攻撃に苦戦をする。
月香心の声 「・・・幸村。強い」
幸村の心の声 「・・・井伊の赤備・・・今は絶えろ」
月香が青年将校達の攻撃を防いでいる。
青年将校A 「よこせ!お前の魂!!」
青年将校達の攻撃で月香が捌き切れなくなっている。
飯田 「いまだ!やれ!!」
青年将校たちが一斉に月香に襲い掛かる。
幸村の心の声 「月香!」
京香が攻撃をかわして、一振りする。青年将校たちが全
員倒される。将校一人が命かながらに飯田のもとによっ
ていくが、その部下を飯田が切り捨てる。
飯田 「失敗は死・・・どのような時が経とうと、この掟は絶対
だ」
月香 「・・・」
飯田 「使えん奴は死あるのみ・・・」
月香 「気づかなかったのか?」
飯田 「?」
月香 「・・・貴様の言葉で彼らの一糸乱れぬ攻撃も綻びた」
飯田 「なに・・・」
月香 「彼らは山県の家臣であり、お前の家臣ではないのだよ」
飯田 「・・・くっ」
月香 「人斬り兵部・・・貴様も時の流れに戻れ」
飯田が長槍を出し、月香に襲い掛かる。
月香 「・・・井伊家を再興した槍さばきか・・・見事」
飯田が何度も槍を振るう。
月香 「そして手数の多さ・・・大胆で豪腕・しかし」
飯田 「幸村!!貴様の首!魂をよこせ!!我が功名の糧にして
やるわ!!」
飯田が大振りで攻撃してくるが、紙一重でかわし飯田を
討つ。
月香 「・・・自らを抑えられんようでは、勝てん」
飯田 「・・・くっ・・我が魂・・に価値などない」
月香 「・・・」
飯田 「時の流れに戻れといったな・・時の流れは止められんぞ
・・・日が昇ると共に・・・この国はかわる・・・」」
飯田が消滅する。
S# 166 皇居前大通り(回想)
雪が降っている。誰もいないくて静かな大通り。
榊木が何十人もの青年将校を連れて、皇居に向かって走
っている。昭和維新と尊皇討奸の旗。
皇居の前で、真っ白な白装束を着た月香が長い木の槍を
持ち、雪降る空を眺めている。
榊木達が月香の前で立ち止まる。ゆっくりと月香が榊木
達を見る。
榊木 「・・・」
月香の槍が白い光を帯び始める。
青年将校達の構える。そして将校達の目の瞳孔が真っ赤
に開く。
榊木 「・・・」
青年将校の一部が銃で月香を撃つが、月香が舞うように
槍を振るい、銃弾を弾く。
そして、3人の青年将校が黒い煙に包まれた刀を抜き、
月香に襲い掛かる。
月香が槍を一回軽く回し、将校達を一蹴する。
同時に将校達が全員、刀を抜き、月香に向かってくる。
槍をゆっくりと静かに構える月香。
S# 167 帝都の全景(回想)
雪が降っている。
悲鳴や銃声の音が聞こえるが、人の姿はない。
S# 168 皇居前大通り(回想)
雪が降っている。辺りには青年将校が倒れている。
榊木が拍手をしている。
榊木 「・・・鬼島津が認め、三途の川の鬼達も認めた槍さばき
か・・・」
月香 「康政殿・・・某の渡し賃を貴殿に貸そう」
六文の銭をつけたネックレスを榊木の前に投げ渡す。
月香 「そなたも彼らと同じように眠れ。この雪を子守唄に」
榊木 「また貴様ら、親子に足止めを食うわけはいかん」
榊木が手を振り上げると、一斉にビルの屋上や路地から
青年将校が現れる。
榊木 「・・・さらばだ。幸村・・・我々の時に、貴公は必要な
い・・・」
青年将校が一斉に月香に襲い掛かる。
車が来て、乗り込む榊木。
S# 169 車の中(回想)
榊木が車に乗っている。
榊木 「皇居へ急げ・・・関が原の轍はふまん」
車が皇居の方へ向かう。
榊木が本を読んでいる。静まりかえった町。
車が急ブレーキで止まる。
榊木 「!」
榊木達の車の前に、月香がいる。
榊木 「また・我らの前に・・・」
S# 170 皇居前大通り(回想)
たくさんの青年将校が倒れている。
S# 171 通り(回想)
車から、榊木が降りてきて、雪を踏みしめる。
榊木 「・・・時の流れに・お前の血をささげよう」
月香が雪を眺めている。
榊木 「幸村・・・!」
榊木が邪気を帯びた刀剣を抜き、月香に襲い掛かる。何
度か打ち合う。
榊木 「・・・我が首うてるものなら討ってみろ!秀吉も欲した
我が首!貴様に取れるか!」
榊木と月香が互角の戦いをする。雪で足を滑らせたとこ
ろを、月香に一刀両断される。
榊木 「・・・」
榊木が「無」の旗印を握り締めて消滅する。
月香 「雪は我が故郷・・・そして我が友」
S# 172 東京の前景(回想)
天皇のビラがまかれている。多くの青年将校たちがその
ビラ(自分達が反乱軍とされている)を読んでいる。
武器を捨てる青年将校たち。
幸村 「・・・2・26事件はそれから3日後終結した」
S# 173白公神社(夜)(回想)
月香が戻ってくる。
幸村N 「2・26事件を裏に家康の存在は掴めたが、行方は掴めなか
った」
千代(6)(頭に包帯を巻いている)が荒城に人質に取
られている。
月香 「千代!!」
千代 「ゆきさま!!月香さま!!」
荒城 「・・・よくも我が策を邪魔してくれたな」
荒城が千代の首筋に刃を突きつける。
荒城 「まあ、良い・・・我等は明日の晩、命を絶つ。後の世で
蘇るためにな・・・」
月香 「・・・」
荒城 「だが、その前に貴様を封印する!」
月香の槍が光を帯びる。
月香心の声 「まって。幸村・・・大丈夫。全て私に・・・」
幸村心の声 「・・・月香」
月香の体から幸村が出る。
月香 「分かった。千代を放せ」
荒城 「それでは、武器を置き、ここに来い」
月香が武器を置き、荒城の剣先に近づく。
月香 「離せ・・」
荒城が千代を離す。
月香 「早く行きなさい!」
千代が泣きながら逃げる。
月香 「・・・」
荒城 「・・・幸村!この小娘の身体に入れ!」
幸村 「・・・」
月香 「幸村は・・・私の身体に入らない」
荒城 「何?!」
月香の顔を剣で切っていく。
幸村 「月香!」
月香が幸村を止める。
月香 「・・・私にどんなことをしようと無駄」
荒城 「貴様!あの小娘をもう一度!」
月香 「待ちなさい!」
荒城 「・・・」
月香 「どんな手段をとろうとも幸村は使命を取るわ」
荒城 「貴様!」
月香 「・・・」
月香 「呪術で幸村を封印しなさい」
荒城 「なに?貴様は幸村の味方ではないのか?」
月香 「千代を助けたい・・・ならば私の命はおしくない」
幸村 「・・・」
荒城 「・・・それはまことか」
月香 「・・・あなた方を復活させたものに聞けば分かること」
荒城が一瞬考えて、
荒城 「連れて行け!」
S# 174 牢屋(夜)(回想)
幸村と月香が捕らえられいる。
月香 「・・・」
幸村 「・・・」
月香 「・・・・・さようなら・・」
幸村 「月香!」
幸村が月香の身体に入る前に、月香が舌を噛み切ってし
まう。
月香が朦朧としながらも幸村に笑顔を見せて、死んでい
く。
幸村 「月香!!!」
幸村が消えていく。
S# 175 森の中(夜)(回想終わり)
幸村と京香がいる。
幸村 「・・・」
京香 「・・・」
幸村 「月香は私を後の世で復活する家康たちの元に送るため自
ら命を絶った」
京香 「・・・」
幸村 「そろそろ夜も更ける・・・身体を休めるために寝ろ」
京香 「・・・」
幸村 「・・・」
S# 176 森の中(朝)
京香が朝日で目を覚ます。
幸村 「行くぞ・・・」
京香 「・・・うん」
幸村 「・・・来たぞ!」
信者達が現れる。
京香が信者達を打ち倒し、逃げる。
S# 177 町はずれの田んぼ
京香が山のふもとにある小さな町に出てくる。
京香 「ここまで来れば・・・」
子ども達が遊んでる。
京香 「・・・あの子達に帰り道を・・」
幸村 「待て!京香!!」
京香 「えっ!」
子ども達の目が真っ赤になり、京香に襲い掛かってくる。
京香が子ども達を振り切り、逃げ出す。
S# 178 町の道路
誰もいない道路。京香が息を切らしながら走ってくる。
京香 「あんな子供たちにまで・・・ユッキーどうしよ!」
赤とんぼの音楽が流れる。
京香 「まだ・・・そんな時間じゃ・・・」
民家や商店から、目が赤い信者達が出てくる。
京香 「もしかして。町中敵?!」
京香が敵を振り切り、逃げ出す。
S# 179 山の道路
京香が歩いていると一台のダンプが止まる。
運転手 「姉ちゃん?こんな山奥で何してるんだ?」
京香 「えっと・・・」
運転手 「乗せてってやろうか?」
S# 180 ダンプカーの車内
京香と運転手が乗っている。
京香 「近くの駅とか・・までお願いできますか?」
運転手 「・・・・」
運転手の運転が荒い。
京香 「あの・・」
運転手 「遠慮するな・・・最後まで送ってやるよ」
京香 「えっ・・・」
運転手の目が真っ赤になる。
京香 「うそ。何も感じなかった・・・」
幸村 「忍び?!」
運転手 「・・・あと少しで目的地・・・地獄だ!!」
運転手がダンプから飛び降り、すごいスピードでぐんぐん
坂を下っていくダンプ。京香が何とかハンドルをにぎって
いる。
京香 「ユッキー!!」
幸村 「某は運転できん!」
京香 「なに開き直ってるのよ!」
目の前に、崖が見える。
幸村 「飛び降りろ!」
京香がダンプから飛び降りようとするが、怖がって出来な
い。
幸村 「くっ!」
幸村が京香の身体を支配して飛び降り、間一髪で助かる。
京香(幸) 「・・・」
京香(霊) 「ユッキー・・・」
京香(幸) 「この調子では辺り一体囲まれているな・・・」
一台の古くてぼろい、一台の車が来て、停まる。
京香(幸)が警戒している。
石原千代(76)が降りてくる。
千代 「・・・早う・・乗りなさい」
京香(霊) 「えっ・・・誰?このおばあちゃん?」
京香(幸) 「・・・」
千代 「・・・70年ぶりですか・・・お久しゅうございます」
京香(幸) 「?」
千代 「まあ、あの頃はまだこんな小さかったですが・・・」
京香(霊) 「???」
京香(幸) 「お千代坊?生きていたのか?」
千代が笑顔でうなづく。京香(幸)が車に乗り込む。
千代 「飛ばしますよ!!」
千代が年寄りとは思えないコーナーリングで運転する。
S# 181 車内
千代が運転をしている。
千代 「本当はもっと早く助けに来ようと思っていたのですが、幸
村様がその子の肉体に入るまでは力を感じることができず、
遅くなってしもうた」
京香(幸) 「・・・お前、本当にお千代坊か?」
千代が眉毛の古傷を見せる。
千代 「覚えておりますか?あの木から落ちたときの傷です」
京香(幸) 「おお!お千代坊・・大きくなって・・」
千代 「大きいのを通り越してしまいました・・」
意味が分からず戸惑っている京香。
道を封鎖している信者達。
千代 「しっかり捕まっていて下さいね!突っ切るので!!」
封鎖を突き破る。井川が駆けつけるが、車は行った後。
井川 「くそ!」
S# 182 田舎道
田舎道を走っている車
S# 183 車内
幸村が京香の身体から離れている。
千代 「当時・・まだ私も6つか7つの頃は・・・幸村様をこの
目で見ることができましたが・・」
千代が京香を見る。
千代 「もう今は見れなくなってしまいました」
京香 「・・・あの、ユッキーいえ、えっと」
千代 「ユッキー?幸村様の事ですか?」
京香 「ええ・・・まあ」
千代 「私も当時は幸村様を・・・雪の日に出会ったので、ゆき
様、ゆき様と呼んでおりました・・・」
幸村 「・・・」
京香 「・・・えっとユッキーのことを?」
千代 「清家月香をご存知で?」
京香 「ええ・・・ユッキーから」
千代 「月香は私の叔母です・・・」
京香 「・・・」
千代 「我が一族は巫女の家系・・・そのため一族はみな少なか
らず、霊感を持っています・・・まあ、叔母の力は特別
でしたがね・・・」
幸村 「・・・」
千代 「今日・・・ここで出会えたのも、叔母の力のおかげなん
ですよ・・・」
京香 「特別な力のおかげ?」
千代 「ええ・・・」
S# 184 山中にある白公神社
千代と京香たち歩いている。
千代 「東京にあった神社は戦争で焼け落ち、それからはここで
・・生活しております」
S# 185 山中にある白公神社本堂(夜)
京香、幸村がいる。
神壇に飾られた長い白い木の棒を千代が持ってくる。
京香 「これは・・・」
千代 「・・・空襲で焼かれた御神木から切りぬいて作ったもの
です・・・」
京香がその槍を触れる。
S# 186 東京の白公神社(回想)
月香が御神木に触れている。それを見ている幸村。
S# 187 白公神社本堂(夜)(回想終わり)
京香 「・・・・・・」
千代が巻物のような手紙を取り出す。
千代 「叔母が残した手紙です・・・」
京香が手紙を受け取る。
S# 188 東京の白公神社本堂前廊下(回想)
幸村が雪が降っている庭を見ている。それを悲しそうに
眺めている月香。
S# 189 東京の白公神社本堂(回想)
月香が着替え終わり、筆をとり手紙を書き始める。
月香N 「2月26日、東京は昨夜から雪が降っております。おそ
らく私はこれからの戦いで命を落とす事になるでしょう。
しかし、これも運命。そして私がこの世に生を受けた理
由。恐れることは何もありません。
ただ一つ書き残さなければいけない事があります。70
年の歳月が過ぎた時、幸村と一人の少女が危機に陥りま
す。二人を助け、後に焼け落ちるであろう御神木で槍を
作り、それを二人にお渡しください。
幸村となら、この運命を変えられると信じますが、もし
変わらなくても・・・私は幸せだった」
S# 190 白公神社本堂(回想終わり)
京香がその手紙を見ている。そして今日の日付と具体的
な場所が書かれている。
千代 「叔母は・・・私達一族の歴史で最も力のある巫女で、未
来を見ることができました」
千代が槍を見る。
千代 「ずっとこの時をお待ちしておりました・・・」
千代が丁寧に京香に槍を渡す。
京香 「・・・」
幸村 「・・・」
京香 「ユッキー?」
幸村がずっと手紙を見ている。
S# 191 道路(夕)
京香と幸村が歩いている。幸村が暗い顔。
京香 「ねえ・・・ユッキー?」
幸村 「・・・」
京香 「ねえったら!」
幸村 「・・・ああ」
京香 「月香さんのこと?」
幸村 「・・・」
京香 「・・・」
京香が心配そうに幸村を見ている。
S# 192 京香の部屋(夜)
京香が真剣に勉強をしている。
京香が時計を見ると、21:30を過ぎている。
京香が幸村を見ると、幸村は槍を見ている。
京香 「ねえ・・・そろそろ修行の時間じゃない?」
幸村が槍を見ている。
京香 「ユッキー!いいの?修行しなくても?」
幸村 「ああ・・・もうそのような時間か・・・」
京香 「・・・」
S# 193 川原(夜)
京香がゆっくりキャストをすると魚がかかる。
京香 「ほら!もう100発100中!」
幸村 「・・・」
京香 「私って、本当はユッキーより才能あるんじゃないの?」
京香が冗談っぽく言うが、幸村はうわの空。
幸村 「・・・」
S# 194 京香の部屋(夜)
京香がベットで寝ている。京香が目を開けると、幸村が悲
しそうに月を見ている。
京香 「・・・」
S# 195 駅(夕)
電光掲示板に長野新幹線の発車時刻が出ている。停車駅欄
に上田が出ている。
京香が電光掲示板を見ている。そしてぼんやりしている幸
村を見る。
京香が財布を取り出すと、冬季講習会の申込書とそのため
のお金が入っている。
京香 「・・・・」
京香が決心した顔をする。
S# 196 新幹線のホーム
京香がきょろきょろしながら、新幹線を待っている。
幸村 「京香?どこへ行くんだ?」
京香 「上田」
幸村 「上田・・・」
京香 「ユッキーの故郷なんでしょ」
幸村 「しかし今日は予備校では?」
京香 「・・・大丈夫・・・たまには息抜きも大事でしょ!それに
・・・」
京香が参考書を取り出す。
京香 「勉強はするし!」
幸村 「・・・・」
京香が参考書を読む。
少し、明るい表情になった幸村。
幸村 「上田か・・・・」
S# 197 新幹線車内
京香が参考書を読んでるふりをして、幸村を見ている。
懐かしそうに外を見ている幸村。
S# 198 上田駅前
京香と幸村が降りてくる。
京香 「ユッキー!どう懐かしい?」
幸村 「あの頃の面影はまったくないが・・・山の姿は変わらん」
幸村がうれしそうにつぶやく。
京香が幸村石像を見ている。
京香 「ほら!ユッキーの銅像!なかなかかっこいい!」
幸村 「ほう・・・某の・・・」
京香 「さあ、行こ!」
S# 199 バスの中
田舎の風景。
京香と幸村がのっている。
懐かしそうに眺めている幸村を、京香が参考書を読みなが
ら見ている。
S# 200 真田町
真田町の由来の看板を読んでいる。
S# 201 上田博物館
真田昌幸と信之と幸村が3人が会談している絵が飾ってあ
る。
京香 「これ・・・ユッキーのお父さんとお兄さん?」
幸村 「・・・ああ」
信之のその後の系図が描かれている。
京香 「お兄さんってどんな人だったの?」
幸村 「誰よりも真田の行く末を考えていた」
京香 「・・・そっか・ユッキーにもお兄ちゃんがいたんだね」
幸村 「・・・・・」
S# 202 上田城(夕)
京香と幸村が夕日を眺めている。
幸村 「・・・」
京香 「ねえ?ユッキー?」
幸村 「なんだ」
京香 「私にお兄ちゃんのお兄ちゃん覚えてる?」
幸村 「ああ・・・お前が6つの時に」
京香 「双子だから。年は同じなのに・・・私は怖がりですぐ泣い
て・・・お兄ちゃんは私をずっとやさしく見守ってくれて
た」
幸村 「ああ・・・」
京香 「お兄ちゃんが病気になって・・・亡くなった時」
幸村 「・・・」
京香 「パパもママも何もできないって自分達をずっとせめてた」
幸村 「・・・」
京香 「私も・・・何もできなかった」
幸村 「・・・」
京香 「お兄ちゃんの最後の言葉はありがと。あの時の私にはどう
してか分からなかったけど・・・なんとなく今は分かる気
がするんだ・・・」
幸村 「・・・」
京香 「月香さんが亡くなったのは悲しい事だと思うけど・・」
幸村 「・・・」
京香 「月香さんは・・・ユッキーと一緒にいられて幸せだったん
じゃないかな・・・」
幸村 「・・・・・いや」
京香 「えっ」
幸村 「・・・何でもない」
京香と幸村が夕日を眺めている。
S# 203 新幹線中(夜)
京香が参考書を読みながら寝ている。
幸村がそんな京香を見て、やさしく微笑む。
S# 204 京香の部屋(朝)
京香が目を覚まし、時計を見ると、朝6時半過ぎ。
京香がしまったと言う感じで起きる。
京香 「えっ!ユッキー。修行は?」
幸村 「たまには休む事も悪くなかろう・・・」
京香 「何?気持ち悪い!急にやさしくなったりして」
幸村 「・・・今日は・・・あまり良くない日なのだ」
京香 「・・・何??良くない日?」
幸村 「・・・えっ・・うん・・陰陽道では戦わん方が良い日」
京香 「・・・先月は戦ったじゃん」
幸村 「忘れてただけだ!冬の27日は不吉なのだ」」
京香 「・・・何それ?」
幸村 「そうゆう事だ・・・まあ、それにそなたも・・上田に行っ
て、疲れておろう・・・」
京香 「・・・そっか。うん」
幸村が困った感じで逃げるように消える。
京香がうれしそうに微笑み、布団に潜る。
S# 205 予備校玄関(夜)
予備校の玄関に申し訳なさ程度のクリスマスツリーが飾ら
れている。
扉の前でカップルがいちゃついている。
京香が迷惑そうに、中に入っていく。
おしゃれをした玲子がいる。
京香 「玲ちゃん・・・どうしたの?おめかしして・・そっか!」
京香が予備校の外のクリスマスの飾りつけを見る。
玲子 「京香も・・・まあ、受験が終わったら彼氏作ると良いよ」
京香 「・・・」
S# 206 道路(夜)
カップルや親子連れがきれいにライトアップされた通りを
歩いている。
幸村 「みな・・幸せそうだな」
京香 「うん・・・」
幸村 「・・・そなたは不幸そうだな」
京香 「受験生にクリスマスはないの!」
幸村 「彼氏とやらを作ったらどうだ?」
京香 「何よ・・・急に」
幸村 「自らよりも大切なものがある・・・それは幸せなことだ」
京香 「・・・」
幸村が小さな子どもを連れた家族連れをみている。
京香 「ねえ・・・ユッキーも恋とかしたの?」
幸村 「今のそなた達が考えるものとは違うかもしれんが、妻もい
たし子もいた。守るべき国もあり、名もあり、家臣もあり、
そして民もあった・・・守るべきものはそれはたくさんあ
った」
京香 「・・・そんなにあったら大変じゃない?」
幸村 「京香。それは違うぞ。守るべきものとは、守られていると
同じ事・・・」
京香 「・・・」
幸村 「某は多くのものに守られて・・・本当に幸せだった」
京香 「・・・」
幸村 「だが、某は何一つ守れなかったかもしれん」
京香 「ユッキー」
幸村 「お前は強くなれ。大切なものを守れる力を身につけてゆく
んだ・・・」
京香 「うん・・・」
京香と幸村がカップルや家族連れで埋め尽くされたライト
アップされた通りを歩いていく。
S# 207 SHINTOU本部(夜)
天波と井川が話をしている。
天波 「恐れながらそれはできませぬ・・・」
井川 「なぜじゃ?徳川家の跡取りぞ!」
天波 「あのお方の復活には多くの邪気が必要でございます・・・
今はあまり邪気を必要としない者を復活させることが先決
でございます・」
井川 「・・では、何時になったら可能なのだ?」
天波 「我々が世界を支配すれば・・・世界は邪で覆われるでしょ
う・・・その後でしたら・・・」
井川 「・そうか・・・あいわかった」
天波 「・・・」
井川が立ち去ると同時に荒城が入ってくる。
荒城 「・・・またあの話か」
荒城 「・・・」
天波 「やはり、まだ心を痛めていらっしゃるのでしょう・・・し
かし、酒井殿・・・いや井川殿の焦りは禁物かと」
荒城 「・・後悔も・・・また今の我々には力と申したな」
天波 「はっ・・・」
荒城 「・・・それが奴の力なら・・好きにさせろ」
S# 208 京香の部屋(夜)
京香が勉強をしていると目覚ましのタイマーが鳴る。
京香 「ユッキー!明日とあさっては休みで良いんでしょ?」
幸村 「ああ・・・年終わりと初めの日ぐらいはな」
京香 「じゃあ、今日の封印は今年ラストね!」
幸村 「ああ」
京香 「そしたら、早く行こ!休み休み!」
幸村 「はあ・・・そんなに休みがうれしいか」
S# 209 京香の部屋(夜)
京香が年またぎのテレビ番組をつけている。
京香 「ユッキー。あけましておめでとうございます。今年もよろ
しくおねがいします」
京香が深々と丁寧に挨拶をするのを見て、幸村がちょっと
照れた様子で、頭を下げる
幸村 「ああ・・・こちらこそ」
テレビコマーシャルにSHINTOUが流れている。「今
年、SHINTOUは迷いのない世界へ新たな一歩を歩み
ます」
幸村の顔つきが変わる。京香がテレビを消す。
京香 「ユッキー。新年からそんな顔しないの」
幸村 「ああ」
S# 210 上田家リビング
京香と辰巳と景子がおせち料理を楽しそうに食べている。
それを見ている幸村に京香軽くウインクをする。
S# 211 神社
京香がおみくじを見ている。
京香 「ほら!見て!!大吉!」
幸村 「ほう・・・めでたいな」
願い事欄「夢叶う。ただ失うものもあり」待ち人欄「待
ち人来るべし」とある。
京香 「夢叶う!だってさ」
幸村 「・・・」
京香が絵馬を買う。絵馬に「第一志望合格!」と書く。
京香 「ユッキーはなんて書いて欲しい?」
幸村 「・・・無論。やつらの野望阻止・・・」
京香 「そんなの書けるわけないでしょ・・・う~ん。よし」
京香が合格の後ろにぜったい勝つ!!と書く。
京香 「これでOK!二人の夢が叶うと良いね」
S# 212 京香の部屋
京香が勉強を始める。
幸村 「もう・・勉強はじめるのか?」
京香 「お正月は終了!もう試験まで日がないしね」
幸村 「・・・その辺りはえらいな・・・」
京香 「なに?見直した?」
幸村 「うむ・・・まあ、多少な・・・」
京香 「でも・・・時間がないのは本当だしね・・・」
京香がカレンダーを見ると、センター試験の日に赤丸が
付いている。
S# 213 予備校(夜)
先生 「お前らには正月はない・・・合格したら、合格に正月を
まとめて祝えばいいんだ!!それじゃ始めるぞ!」
京香が勉強をしている。
S# 214 SHINTOU支部(夜)
午前二時過ぎ、信者が作業をしている。京香と幸村が入
ってくる。槍を見て、臨戦態勢の信者達。
京香 「みなさん、あけましておめでとう」
呆気に取られる信者。
幸村 「京香!ふざけている場合か!」
京香 「新年の挨拶は大切だよ!」
信者達が襲い掛かってくるが、京香が瞬く間に倒す。
京香 「・・・18人。全員支配されてた」
幸村 「・・・・・」
京香 「倒しても倒しても・・・増えてく一方・・・」
幸村 「・・・」
S# 215 カレンダー
日めくりカレンダーがめくられ、1月19日になる。
S# 216 予備校(夜)
京香が授業を受けている。
先生 「え~皆さん。あさってはセンターですね。明日はゆっく
り休んで試験に臨んで下さい!」
京香 「・・・ユッキー。今日で一旦お休みね・・・」
幸村 「・・・休んでも構わんぞ?」
京香 「今日は大丈夫!ただ明日は休ませてもらうからね!」
S# 217 料亭の玄関(夜)
井川と幹部信者と数名の信者が出てくる。
京香 「あれって!」
井川の邪気がひときわ大きい。
幸村 「酒井・・・」
京香が信者達を倒していく。
井川 「幸村か・・・退け」
井川と幹部が逃げ出し、それを追う京香。
幹部が書類とパソコンを落とす。
京香 「パソコン?!」
井川 「奴に奪われるな!」
信者達が京香に襲い掛かるが、京香が一蹴する。
井川 「くっ」
信者A 「井川様・・・ここは退きましょう」
井川と信者が退く。
幸村 「京香追え!」
京香がパソコンと書類を見ている。
幸村 「京香!」
京香 「ユッキー待って・・・これって」」
毎日、数千人単位で悪霊が増加していて、それが全国に
広がる様子とクーデーターの計画が書かれている。
S# 218 京香の部屋(夜)
京香がパソコンを見ている。
各地の自衛隊や警察や行政機関の同時制圧計画がある。
様々な組織の上層部の協力リスト、そしてテロ予定日が
1月21日とある。
京香 「・・・あさって!・・センター試験の日!?」
幸村 「・・・」
京香 「・・・ユッキーどうしよう・・・」
幸村 「野戦では・・・どんな策も兵力の前では無力近い・」
京香 「・・・」
幸村 「・・・川中島の時、信玄公も謙信に裏をかかれたが、最
後は兵力差で引き分けに持ち込んだ事があった」
京香 「・・・それじゃあ、勝てないって事?」
幸村 「・・・かつて2千の兵で10倍以上の2万五千もの大軍
を破った戦があった・・・」
京香 「・・・」
幸村 「大将の首を挙げる・・・他に道はない」
京香 「・・・」
幸村が険しい顔をしている。
京香 「・・・不安なの?ユッキー?」
幸村 「・・・」
京香 「私・・・今、ユッキーが考えていたこと・・・なんとな
く分かるよ・・・」
幸村 「・・・」
京香 「ユッキーは家康を討ち取った・・・でも歴史は変わらな
かった・・・」
幸村 「・・・」
京香 「今度もそうなるんじゃないかって思ってるんでしょ?」
幸村 「・・・」
京香 「大丈夫だよ!今度は全部終わるよ!終わらせようよ!」
幸村 「京香・・・」
京香 「私も・・・ユッキーの事信じてるよ」
幸村 「・・・」
S# 219 京香の部屋(夜)
外では、大雪が降っている。
電気はついていない。ラジオが流れてる。
ラジオのDJ 「前線の影響で本日から明日にかけて、今年一番の雪が降
るでしょう・・・明日はセンター試験と言う事で、受験
生にとっては心配な雪ですね・・・」
京香がラジオを消す。
京香が戦闘服に着替え終わる。
京香がヘアピンの箱を開け、誕生日にもらったムーンス
トーンのヘアピンをつける。
幸村が現れる。
幸村 「・・・・準備は」
京香がゆっくりと力強くうなづく。
S# 220 上田家玄関(夜)
京香が静かに靴をはいている。
辰巳 「どこ行くんだ?」
京香 「パパ!」
辰巳 「明日試験だろ?早く寝ないと・・・」
京香 「うん・・・でも行かないとだめなの」
辰巳 「何処へ?」
京香 「・・・」
辰巳 「いえないのか?」
京香 「ごめんなさい・・・」
辰巳 「ちょっと待ってなさい」
辰巳が部屋に行きマフラーを持ってくる。
辰巳 「外寒いからな・・・ほら」
辰巳が京香にマフラーをかけてあげる。
辰巳 「・・・」
京香 「パパありがと。必ず戻ってくるね」
京香が出て行く。心配そうにみている辰巳。
幸村が辰巳に深々と礼をする。
S# 221 都内のオフィス街(夜)
雪が降っている。誰もいないオフィス街。
京香と幸村が忍者のように走っている。
S# 222 SHITOUタワー入り口(夜)
京香と幸村がビルを見上げている。
京香 「・・・」
緊張した様子の京香。
幸村が京香の肩に手をかけようとするが止める。
幸村 「そなたには・・・過酷な運命を強いてしまった」
京香 「・・・」
幸村 「・・・すまなかったな」
京香 「本当にそうだよ!」
幸村 「・・・」
京香 「でも・・謝罪の言葉は・・・ぜんぶ終わって家に帰って
から聞くよ」
幸村 「京香・・・」
京香 「行こう!ユッキー。早く帰って寝ないと駄目だしね!」
幸村 「・・・ああ」
京香も力強くうなづく。
S# 223 SHINTOUタワー一階ホール
広くて近代的な雰囲気。たくさんの警備員が警戒してい
る。警備員のイヤホンが何かを告げ、警備員が一斉に入
り口に目をやると、京香達がドアを突き破り、中に入っ
てくる。警備員の目が真っ赤に染まり、邪気を帯びた刀
で京香達に襲い掛かってくる。京香が槍を振るい、警備
員達を次々となぎ倒す。
幸村 「東!」
京香がその言葉に反応して、邪気を帯びた弓矢をかわす。
京香が短い木刀を弓兵に投げつける。
幸村 「西南!」
京香が今度は言われる前にかわし、木刀を投げつける。
幸村 「・・・」
京香が槍を華麗に使い、圧倒的な強さで、警備員達を倒
していく。
次々と現れる警備員。
幸村 「きりがない・・・先へゆけ」
京香が先を急ぐがエレベーターが動かない。
京香 「使えない!」
幸村 「階段だ!」
京香が敵の追撃をかわし、階段へ向かう。
S# 224 階段(夜)
階段にも敵が溢れている。京香が敵を倒しながら、ゆっ
くりと上の階に進む。
S# 225 警備室(夜)
近代的な警備室。あらゆるモニターに京香の戦ってる姿
が移っている。
警備員A 「Bブロックまで進入!!」
警備員B 「大御所様に直ちに退くようにお伝えしろ!!」
警備員C 「各種部隊は、直ちにBブロックへ向かえ!」
あわただしい警備室。モニターに写る華麗な槍さばきを
笑みを浮かべながら見ている本山。
本山 「兵を退けよ!」
静まる警備室。
警備員A 「・・・それでは・・・」
本山 「・・・某が出よう・・・」
警備員B 「・・・」
本山 「これからの国づくりに大切なお前らを失うわけにはゆか
ん」
警備員 「・・・忠勝さま・・・」
本山 「それに・・・かような日に某がここにおる理由・・・そ
れは奴を討てるのは某だけだからだ」
本山が蜻蛉切りの槍を振るう。
S# 226 3階ロビー
京香が息を切らしながら、警備員を倒している。
幸村 「まて・・・」
京香が辺りを見回すと、警備員が誰一人いない。
京香 「・・・」
幸村 「・・・」
急にエレベーターが開く。
京香と幸村が顔を見合わせる。
S# 227 エレベーター中
京香が息を整えている。腕からは血が流れている。
幸村 「・・・」
京香 「・・・」
49階までどんどん上がっていく。
S# 228 SHINTOUタワー大廊下(夜)
京香がエレベーターから降りてくる。
長い廊下で螺旋階段のようになっていて、少し坂道にな
っていて峠のような感じ。
京香が何か圧力を感じて、武者震いをする。
京香 「なに・・・これ」
幸村の顔が険しくなっている。
幸村 「・・・五十余度の戦で傷一つ受けず、戦国最強と謳われ
た武将・・・本多忠勝」
京香 「えっ・・・」
靴音と共に本山が蜻蛉切りの槍を持ち、現れる。
本山がスーツのジャケットを投げ捨てる。ジャケットが
槍の先に軽く触れただけでジャケットが綺麗に切れる。
本山 「・・・久しいな」
京香 「・・・」
幸村 「・・・」
本山 「叶わぬ夢だと思っていたよ・・・」
幸村の真剣な顔を見る京香。
京香 「いつもあれほど偉そうに言ってたんだから、負けたら許
さないからね」
幸村 「・・・ああ、」
幸村が京香の身体に入る。
本山が後ろに火をつける。
京香(幸) 「信玄公までが認めた貴殿までが・・・」
本山 「この国の事を憂いて・・・いや・・・」
京香(幸) 「・・・」
本山 「ただ貴公と槍を交えたかっただけのこと・・・」
京香(幸) 「・・・」
本山 「・・・私は・・・あの戦国の世を生きたが・・・一度た
りともまことの勝負をしたと感じた事がない・・・」
京香(幸) 「・・・」
本山 「まことの戦いをしたいのじゃ!貴様とならできる・・・
その思いこそが・・・・我が命をたぎらせる源よ!」
京香(幸) 「貴殿らしいな・・・」
本山 「まことの戦いをしようぞ!真田幸村!」
京香(幸) 「・・・」
本山 「・・・」
京香(幸) 「どれほどの時が経とうとも・・・貴殿や小松様には感謝
しておる」
本山 「言葉は不用・・・槍で返せ」
京香(幸) 「・・・承知つかまつった」
京香(幸)と本山が互いにゆっくりと構える。
京香(幸)が本山に挑む。二人が互いに槍を数回交わす
。京香(幸)はしなやかな槍さばき。本山は剛健といっ
た感じの槍さばき。本山の槍を紙一重で交わす京香(幸
)。そして互いに距離を取る。
その様子を興奮した様子で見ている京香(霊)。
京香(霊) 「ユッキーすごい!」
京香(幸)は緊張した様子で構えている。
本山がため息をつく。
本山 「なにゆえ・・・」
京香(幸)が冷や汗が流れ、それを振り払うように、打
ち込むが今度は簡単に返され、吹き飛ばされて壁にぶつ
かり、倒れこむ。
本山 「技は互角・・・だが今の某とでは肉体に差がありすぎる
!なぜかような弱き女子の身体に舞い戻った?」
京香(幸) 「(険しい表情)・・・」
京香(霊) 「・・・ユッキー」
京香(霊)が京香(幸)の顔を見るとそれを悟っている
様子。
京香(幸)が迷いを払うように何度も打ち込む。
簡単に払いのける本山。本山の攻撃に京香(幸)を受け
止めずにかわし続けたが、本山の槍を受け止め、吹き飛
ばされる。
本山 「その女子の身体がさように心配か?槍に迷いが見受けら
れる」
本山が本気で打ち込む。それを何とか槍で受け止めるが
、槍が曲がりそうになる。
本山 「・・・」
京香(幸)が華麗に何度も打ち込み、そして蹴りを本山
の顔面に打ち込むが、本山は動じない。
本山 「前世で傷一つ受けなかったおかげで、今の私は痛みを知
らん」
そして京香(幸)を投げ飛ばす。
情けない悲しそうな表情で見ている京香(霊)
京香(幸)が雄叫びを上げ、挑みつづける。
京香(霊) 「・・・・・ユッキーごめんね。私が弱いせいで・・」
京香(霊)が涙をこぼす。
京香(幸)がその掴めない涙を手で受け止め、拳を握り
締める。
京香(幸) 「今はまだ早い・・・」
京香(霊) 「ユッキー・・・」
京香(幸)がふらりと立ちあがり、何度も打ち込む。
本山 「ぬるい!」
京香(幸)をを吹き飛ばす。
本山が完全に失望した表情。しかしふと下に目をやると
、指に小さな切り傷を負っている。
本山 「何・・・完全に捌いたはず・・・」
京香(幸) 「借物の肉体で・・・我らに敵うものか・・」
本山 「・・・・・」
本山が感慨深い顔をして拳を握りしめる。
京香(幸) 「強さとは一つではない・・・」
そういって京香(幸)が打ち込むが、今度は完全に防が
れて吹き飛ばされる。
本山 「多少・・・貴様より反応が遅れたとしても、一撃の重み
が違う!!」
本山が京香(幸)の前に歩む。京香(幸)が本山の足元
にしがみ付きながら、立ち上がる。京香(幸)の留めて
いた長い髪が乱れる。
本山 「時は残酷だな・・・幸村」
ダメージが蓄積してふらふらしている京香(幸)が構え
る。
京香(幸) 「これで終わりだ・・・」
本山も一瞬考えてから構える。
本山 「・・・」
京香(幸) 「・・・」
京香(霊) 「ユッキー・・・」
本山 「最高の時だ・・・貴様もそうであろう・・・」
京香(幸) 「以前の某なら・・・かもしれん・・・が今は違う」
本山 「・・・・・覚悟!!!」
京香(幸) 「・・・」
京香(幸)と本山が最後の一太刀を互いに浴びせる。
本山が倒れる。
本山 「・・・」
本山の身体から、邪気が出ていく。
京香(幸) 「もっともの差を言うのを忘れていた・・・」
本山 「?」
京香(幸) 「この身体を大切にしようという思い・・・」
本山 「・・・」
京香(幸)が本山の足を指差す。足に京香の誕生日プレ
ゼントのヘアピンが刺さっている。
本山が大笑いする。
本山 「見事!」
本山の身体から本田忠勝の魂が消えていく。
京香(霊) 「勝ったの?ユッキー?」
京香(幸) 「・・・いや・・・忠勝殿が最後の一太刀の勝負を受けて
くれねば・・・敗れていた」
京香(霊) 「・・・」
京香(幸) 「誰よりも・・・侍だった・・・」
京香(霊)の身体が薄くなり始める。
京香(霊) 「えっ、何で?、まだ時間あるでしょ!」
京香(幸) 「早く、戻れ!」
京香(霊)が自分の肉体に戻る。幸村(霊)になる。
京香 「なんで?時間までまだあるはず!」
幸村 「・・・繋がりを高めすぎた・・・」
京香 「ってことは・・・これから私が戦うの!」
京香が不安そうに家康がいる部屋の扉を見る。
幸村 「・・・」
S# 229 大広間(夜)
京香が血のついたヘアピンを拭いている。
京香 「大切なヘアピンなのに・・・」
幸村 「・・・家康」
だだっ広い畳の部屋。
荒城が座っている。荒城の後ろは大きなガラスで東京を
一望できる。
京香と幸村が入ってくる。
荒城 「・・・」
幸村 「なぜ・・・退かん?」
荒城 「忠勝が敗れる・・・そんな事浮かびもせん」
幸村 「・・・」
荒城 「・・・徳川・・・いや、そんなに我が憎いか?」
幸村 「・・・」
荒城 「見てみろ・・・今の人間を・・・享楽のみを追求し、未
来を・見ようとしない・・我々はこんな奴らのために血
を流したのか?」
荒城が東京の景色を眺める。
幸村 「・・・」
荒城 「我々はこの国のために死んでいったもの全ての代弁者な
のだ!!!」
幸村 「思い上がるな。我々はあの時代を生きた・・・それ以上
のことを望むべきではない」
荒城 「・・・・・貴様らしいな」
荒城が刀を取り出す。
幸村 「・・・村正?」
荒城 「今の我は、不吉もまた力なり・・この妖刀も今は我が力
・・・消えろ!」
荒城が京香に襲いかかってくる。
京香が慌てふためく。
京香 「ユッキー!?」
幸村 「己・・・いや我ら・二人の感覚を信じろ!」
荒城の攻撃を京香が何とか防いでる。
荒城 「幸村!!出て来い!我を侮辱するつもりか?!」
幸村 「京香。そなたは槍の扱いを覚えてるはず・・・」
京香 「・・・」
S# 230 武家屋敷(回想)
雪が積もっている。
幸村(7)が昌幸の前で槍の稽古をしている。
昌幸 「槍にふられてる!」
幸村が槍を力強く振る
昌幸 「(優しい感じで)闇雲にふるな。相手の動く先に打ち込
むだけで十分じゃ」
幸村が槍を軽やかに振り始める。
S# 231 白公神社(回想)
雪が降っている。
月香が槍の稽古をしている。それを教えている幸村。
月香が降って来た雪を見事に切っていく。
うれしそうな月香と幸村。
S# 232 大広間(夜)(回想終わり)
京香が膝まついている。
荒城 「・・・貴様が出てこないなら、その小娘をひっとらえて
、封印するまでのこと」
荒城が京香を捕まえようとするが、京香が払いのける。
荒城 「抗うか、むすめ!」
荒城が京香に切りかかるが、それを受け止める京香。
京香 「ねえ・・・もうやめようよ?」
荒城 「なに?!」
京香 「・・・悲しいだけだよ」
荒城 「何だと・・・」
京香 「こんなことしたって誰も幸せになれない・・・」
荒城 「・・・小娘!」
荒城が村正で京香に切りかかる。
幸村 「京香!」
京香が荒城の攻撃を受け止めている。
荒城 「馬鹿な」
幸村 「京香・」
京香 「・・・ユッキー。私負けない・そんな気がする」
荒城 「・・・小娘が!?」
荒城が必死に刀を振るうが、京香が完璧に防ぎ続ける。
幸村 「・・・」
荒城が距離を取る。
荒城 「・・・なぜだ?」
京香 「・・・」
京香が槍を見る。
京香 「過去が・・・私に力をくれてる」
幸村 「・・・」
京香 「ユッキー・・・ううん。私達ってたくさんの人に支えら
れたんだね・・・」
幸村が京香を見ると、月香とかぶって見える。
荒城 「天下を治める私が!二度も小娘に敗れるわけには!」
荒城が京香に襲い掛かるが、京香が華麗にそして瞬く間
に荒城を倒す。
荒城 「・・・」
荒城があっけない感じで黒い煙に包まれ、消滅する。
京香 「・・・」
幸村 「・・・」
京香 「これで・・・終わり?」
幸村 「・・・ああ、終わった」
すると爆音と共に、国会議事堂の方から、火の手が上が
る。
京香と幸村が窓から、その光景を眺める。
京香 「家康を封印したら終わりじゃないの?!」
幸村 「・・・馬鹿な」
地響きがなり、床から黒い煙が舞い上がる。
京香 「なに?」
幸村が苦しそうにうずくまる。
京香 「ユッキー!?」
天波 「・・・・・時は満ちた」
京香 「?」
幸村 「・・・・」
天波と月香が現れる。
天波 「計画が前倒しとなったが・・・400年待ったのだ・・
少し早めたところで支障はなかろう・・・」
京香 「・・・」
幸村 「・・・この邪気・・・天海」
天波 「かの・・・真田幸村に知られてるとは光栄だ」
京香 「・・・天海?」
幸村 「南光坊天海・・・表の顔は天台宗の僧・・・そして黒の
宰相と呼ばれ、徳川の基礎を作った男・・・」
天波 「・・・」
幸村 「全ての元凶は・・・貴様か」
天波 「・・・」
幸村 「・・・お前の目的は・・・何だ?」
天波 「この国を一つにすること・・・」
京香 「一つにすること?」
天波 「さよう・・この国は、長い時、一つでなかった・」
幸村 「・・・」
天波 「絶えず、様々な権力が存在した・・・それが、この国に
歪みを生じさせた」
幸村 「・・・」
天波 「我が望みは永遠の統一・・・強者による絶対の」
幸村 「・・・」
天波 「我が血にはその権利がある・・」
幸村 「我が血?・・・そうか・・・しかし家康はそれを利用し
ただけに過ぎん」
天波 「・・・構わんのだよ・・・それは」
幸村 「・・・」
天波 「新田であろうと全ての源がどこにあるか。大切なのは真
実ではない・・・永遠に残る事実なのだ」
幸村 「・・・尊皇討奸だと・・・よくそんなふざけたことを・
・・」
天波 「全て理解したか・・・あの時は、邪魔な老臣どもを消す
・・・その事実が大切だったのだ」
幸村 「くっ・・・」
幸村が動こうとするが、苦しむ。
天波 「もがけばもがくほど術はお前を縛る」
京香 「ユッキー?!」
天波 「・・・今ここに封印の儀式は始まる」
京香 「封印の儀式?!」
床に真っ黒な呪詛が書かれている。
天波 「今、この時、この地を司る全ての地脈の力が、ここに集
結している」
京香 「・・・」
天波 「今回の計画がどのような形で行われたか?気づかなかっ
たか?」
幸村 「なるほどな・・・」
天波 「山伏の真似事をしただけのことはあるな・・・」
京香 「ユッキー」
幸村 「五色不動・・・」
天波 「そう・・・国を支配するだけの計略ではないのだ。貴様
を封印するための計略でもあるのだ」
幸村 「・・・」
天波 「貴様が消えれば、この世界を支配する事もたやすい」
京香 「ちょっと待ってよ!私がいることを忘れてない?!」
天波 「女子・・・黄泉の世界に落ちたくなければ、消えろ!」
幸村 「京香・・・」
京香 「・・・ここで逃げたら、何のために受験勉強をあんな時
間に費やしたのよ!!」
天波 「くっくっくっ・・・面白い」
京香が構える。
天波 「・・・ならば、貴様には最高の相手を用意しよう」
天波が術を唱える。
床から手が出てきて、悪霊となった月香が這い上がって
くる。髪は乱れ、白装束は血で赤黒く染まり、赤い目で
京香を睨み付ける。
京香 「・・・まさか」
幸村 「・・・」
天波 「そう・・・お前達とは因縁が深かろう・・・」
京香 「ユッキー・・・」
幸村 「月香・・・」
月香 「(何か話してるが、言葉になっていない)」
月香は舌がないため、言葉にならない。
京香が悲しそうに月香を見る。幸村は悲しさと悔しさが
入り混じった表情で、震えている。
京香 「ユッキー・・・」
天波が不敵な笑みをこぼしている。
京香の顔が怒りの表情に変わっていく。
京香 「許せないよ・・・こんな事・・絶対許さない!!」
幸村 「京香・・・・」
京香が身構える。月香もぎこちない感じで構える。
京香 「ひどい!ひどすぎる!!」
京香が天波に向かうが、月香がじゃまをして、槍を交わ
す二人だが、ほぼ互角。
京香 「月香さん!やめて!!」
月香が乱暴な感じなぎなたを振り回す。紙一重で対応す
る京香。
京香 「えっ・・・」
京香の槍が輝かなくなっている。
幸村 「京香!」
S# 233 道場(早朝)(回想)
月香が白い息を吐きつつ(息を整えている)なぎなたの
稽古をひとりしている。
S# 234 本部室(夜)(回想終わり)
次第に京香が疲れて、息遣いが荒くなる。月香がにやり
と笑い、奇声を上げ、京香に襲いかかる。
S# 235 皇居前道路(回想)
雪が降っている。
月香がなぎなたを美しく使い青年将校を倒している。
悲しそうな表情で戦いつづける月香。
S# 236 本部室(夜)(回想終わり)
月香の攻撃を交わしきれず攻撃を少し受け、血が出る。
京香が倒れ、槍を落としてしまう。そこにゆっくりとに
やけながら、近づく月香。
S# 237 牢屋(夜)(回想)
月香が鉄格子の窓から望める満月を、寂しそうに眺め、
その後、幸村に微笑み、舌を噛み切る。
幸村 「月香!!」
S# 238 本部室(夜)(回想終わり)
倒れている京香に近づく月香。
幸村 「某が、けりをつける。少々ならやれるはず」
幸村が京香の身体を借りようとするが、京香がそれを止
める。
京香 「大丈夫だから・・・」
幸村 「京香!?」
京香 「ユッキーと月香さんは・・・戦っちゃ駄目だよ・・」
幸村 「京香・・・」
京香の槍がまた輝き始める。
月香の呼吸に合わせてる京香。
月香が奇声を上げて、京香になぎなたを振り上げる。
幸村 「京香!!」
無刀取りのような形で、月香を倒して、なぎなたを奪い
取る。
京香 「これだけは、最初から得意なんだよね」
なぎなたを月香に突きつける。
月香 「・・・(にらんでいる)」
幸村 「京香・・・」
京香のなぎなたを持つ手が震えている。
京香 「・・・」
天波 「また・・・地獄に突き落とすか?!幸村!」
幸村 「・・・」
天波 「あの時、お前はこの女子を助けることができたはずだ・
・・」
幸村 「・・・」
S# 239 牢屋(夜)(回想)
月香が舌を噛み切ろうとする。幸村が月香の身体に入り、
とめようとする。
天波N 「しかしお前は躊躇した・・・助けては復活の機会を失う
からな・・・」
幸村が月香の身体に入るのを躊躇した瞬間に月香が舌を
噛み切る。
S# 240 大広間(夜)(回想終わり)
月香が雄たけびを上げている。
天波 「あの時、お前が止めていれば・・・この女子も地獄の業
火に焼かれることもなかったろうに・・・」
苦しそうにしている月香。
京香 「ユッキー・・・」
幸村 「・・・」
天波 「ここまで・・・私を苦しめたことに敬意を表し、選ばせ
てやろう・・・」
幸村 「・・・」
天波 「この女子・・・そして」
幸村 「・・・」
天波 「あの戦いで貴様と共に死んだ家臣たちは今でも地獄の業
火に焼かれている・・・」
幸村 「・・・」
天波 「その女子の身体を完全に支配し、我が支配に入れば、お
前の家臣達を甦らせ・・・貴様とこの女子の魂も永遠に
生かし続けてやろう」
幸村 「・・・」
天波 「お前も元をたどれば我が一族と共にあるはず・・私に力
を貸すのだ」
幸村 「・・・」
京香 「ユッキー・・・」
京香の頭に幸村の思いが伝わってくる。大坂夏の陣で死
んでいく幸村の家臣の姿。そして月香が自害する姿。
幸村 「・・・」
京香 「ユッキー・・・」
幸村 「?」
京香 「・・・ユッキーにあげる。私の身体・・・」
幸村 「京香?」
京香 「・・・ユッキーの気持ち。私、痛いほど分かるよ」
幸村 「京香・・・」
天波 「早く支配しろ!幸村!そして我に救いを求めよ!」
幸村 「某は・・・・・」
京香が目を瞑って、幸村を受け入れようとする。
幸村 「もう同じ過ちを繰り返さん!・・・京香やるんだ!」
京香 「・・・えっ」
幸村 「・・・案ずるな。たとえ地獄であろうと。某がこれから
未来永劫・・月香達の魂を守り続ける!!」
月香の目に生気が宿り、光輝く短刀で天波を刺す。
天波 「貴様、何を・・・闇に舞い戻りたいのか・・?」
月香が天波を刺し続けて、大きな窓ガラスを突き破る。
突き破れた窓から、雪が部屋に入ってくる。
天波と月香が落下しそうになる。
天波 「止めろ!我ら積年の夢を・・・」
月香が京香と幸村を見て、言葉にはならないが、口文字
で「ありがとう」と笑顔で呟き、天波と共に落下する。
京香と幸村がすぐにその階下を見ると、二人が落ちてい
く。しかし途中で月香のみ光に包まれ、消える。
天浪だけ落ちて地上に落下する。
S# 241 SHINTOUタワー前広場(夜)
天浪が落ちて、倒れている。手を天に伸ばし、
天波 「・せい・・わ・げ・ん・・・の・よ・・・・・・が」
そしてその後、闇に包まれて肉体が消える。二つ引き両
の紋(赤黒い古くなった血跡がついている)それが上空
を舞っていく。
S# 242 国会議事堂(夜)
井川が信者達の指揮を執っているが、信者達が苦しみだ
す。
井川 「これは・・・」
S# 243 警視庁(夜)
警官隊と戦っていた信者達が倒れ、苦しんでいる。
S# 244 皇居前(夜)
皇居を襲おうとしていた信者達が倒れていく。
S# 245 国会議事堂(夜)
どんどん消えていく信者達の悪霊。
井川が部下を抱きかかえている。
井川 「徳川のためとはいえ・・・の・ぶや・・す・・・さま・
・・申し訳・・・」
井川も消滅する。
S# 246 SHINTOUタワー本部(夜)
破れた窓から、雪が入ってくる。
ぼんやりしている京香と幸村。
幸村が自分の身体が消えかかっている事に気づく。
幸村が一瞬悲しそうな顔をするが、すぐ首をふり、笑顔
で京香を見る。
幸村 「京香・・・」
京香が幸村を見ると、幸村が消えかかっている。
京香 「ユッキー・・・」
幸村 「そなたとの約束果たせそうにない・・・」
京香 「ユッキー」
幸村 「家まで・・・もたんな」
京香 「そんな・・・嫌だよ。ずっと一緒にいようよ!」
幸村 「それはできん・・・某の役目は終わった」
幸村が少しずつ消えていく。京香が必死に幸村を引きと
めようとするが、触れる事はできない。
京香 「絶対、嫌だ・・・嫌だよ」
幸村 「・・・本当にすまなかったな・・京香」
京香 「嫌だ・・・そんな言葉聞きたくない!一緒に家に帰ろう
!!」
京香が涙を流す。
幸村がやさしく微笑み。京香の涙を指で拭いてあげる。
(もちろん拭く事はできない)
幸村 「涙はまだ早いと言ったろう・・・夢を叶えるその時まで
取っておけ」
京香 「・・・ユッキー・・・」
幸村 「それに・・・出陣前の・・・涙は縁起が悪い」
京香 「幽霊のくせに・・・縁起を気にしてどうするの?」
幸村がにっこり笑う。京香も笑う。
幸村 「・・・そなたの看護師姿見たかった」
京香 「・・・大丈夫だよ・・・」
幸村 「・・・」
京香 「私の生まれ変わりなんでしょ。ユッキーは・・・。だか
ら・・・私達ずっと一緒!」
幸村 「ああ・・・ずっと共にある」
二人が見つめ合う。
風が強く吹き、窓からたくさんの雪が入ってくる。京香
が、目を瞑った瞬間に幸村が消える。
京香 「ユッキー?ユッキー?ユッキー~~!?」
京香が辺りを見まわしている。しかし幸村はいない。
京香が涙を流すのを必死に堪えているが、涙が溢れ、地
面にひざまずく。
S# 247 東京の全景(夜)
雪が降っている。
S# 248 センター試験の会場
たくさんの学生が会場に入っていく。
テレビ局が取材のために撮影している。
アナウンサー 「・・・昨日の雪が嘘のように消えた東京です。受験生に
とって今日は、最高の受験日和となりました」
ディレクターが困った顔でその様子を見ている。
ディレクター 「あ~・・・これ撮っても、流す時間あんのか」
AD 「SHINTOUのニュースで持ちきりですもんね~」
SHITOU壊滅のニュースが小型テレビで流れてる。
S# 249 センター試験の会場中
たくさん学生が試験を受けている。
目の周りが赤く、眠そうな京香。黙々と問題を解いてい
る。京香がペンに力をぐっと力を入れるが、何も起こら
ない。
京香 「・・・」
京香が気を取り直したように、問題を解き始める。
テロップ 「半年後」
S# 250 駅
○○大学前駅、夏服の大学生がたくさん降りてくる。
駅の近くに本屋がある。
S# 251 本屋
ふわふわ饅頭の袋と鞄が下に置かれている。その隣で大
人っぽくなった京香が本を読んでいる。
そこに友達が現れる。
友達 「京香!そろそろ行こ!」
京香が笑顔でうなづき、本をしまう。看護学の本。
友達が先に歩き出し、京香がついていく。
新刊コーナーの所に真田幸村の小説が並んでいる。
京香 「・・・」
その内の一冊が、乱雑に置かれている。
京香が丁寧にそれを並べる。
京香 「・・・」
友達 「京香!?何してるの?早く!授業遅れちゃうよ!」
京香が友達の方に行き、歩き出す。京香が振り返り、新
刊コーナーを見て微笑み、歩き出す。
☆☆☆終わり☆☆☆