プロローグ
良かった点、悪かった点書いていただけると幸いです。
「いやいや、こまるんですよねぇ。そんなこと申されても。」
俺は全力で噛みついてくる相手に冷たく言い放つ。
契約を結ぶ前ならともかく、今さら不公平だと文句を言われてもねぇ。それも承知の上での契約だったろうに。気づかなかった奴が文句なんて筋違いにも程がある。文句は見落とした自分に。
俺の目に何を見たのか、さらに赤くなったが、俺は引き払おうと決める。
「では、また。」
するりと抜け出し、表通りの人ごみに紛れる。
「ふざけんじゃねぇぞ。覚えてろよ、ゲルドォォォォ!」
後ろからそんな声が聞こえた。周りの人が何ごとかと興味をしめし足を止める中、当事者の俺は振り返らない。
憎まれていることがわかっているのに足を止める馬鹿がどこにいる。
それから少しした後、闇が満ちている裏路地に足音が1人分響く。先ほどゲルドと呼ばれていた男だ。男は念入りに辺りを見回し、自分以外誰もいないことを確認すると、顔に手をかけた。そして皮をはいだ。すると皮の下から何か落ち、音を立てた。
「ぷはぁぁぁ。この矯正はいつになっても慣れないなぁ。やっぱり素顔が1番だぜ。」
その下から別の顔が現れた。驚いたことに声までかわっている。
「あいつ、大分俺のことにらんでいたなぁ。...よし、少し早いけどこの町でゲルド・ライリアムはやめとくか。」
服の下から次々と矯正具を外していく。そこにゲルドと呼ばれた恰幅のいい男は存在せず、まだ子供の面影を残した青年がいた。そして去っていく。
裏路地はまた、闇に包まれていく。
「よお、ファルス。景気はどうだ?」
「おぉ、ランカードか。いい感じだ。」
「へぇ、この不景気でね。全くどんな商売してるんだか。」
「それは内緒。それより見たぞ。また、無償で人助けしていたな。」
「なんだよ。見てたのかよ。」
「お前は大の付くお人好しだからなぁ。このご時世によくやるよ。ホント人を見た目で判断しちゃいけないよなぁ。」
「どういうことだ、おい。」
この街で1番世話になっていて、邪険には出来ない。ランカードとの会話は楽しいから邪険にする気もないけど。
「それよりも最近詐欺師が出るらしい。」
「・・・へぇ。」
「それも1件や2件じゃねぇ。」
「・・・それは危険だねぇ。」
「一向に捕まらないということはかなりの腕だ。詐欺が上手い奴がそう何人もいるとは思えないが、詐欺師の外見的特徴は1つも合わない。」
「・・・じゃあたくさんいるんじゃないかなぁ。」
「あぁ、そうとしか考えられん。お前も気をつけろよな。俺も近々ここを出る。」
「・・・わかった。情報ありがとう。」
1人になった後誰にも聞こえないようにファルスは呟いた。
「・・・潮時か…。」