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異世界だそうで2



「メイ」

「は、い」


 団長の声は大きくないけど、なんか威圧される感じがする。会社の社長みたいな。


「メイ、と呼んでいいのか」

「はい、それが、私の名なので」

「そうか。私はカイラというが、団長と呼んでくれていい。皆そう呼んでいる」

「団長、はい」


 団長は声の迫力の割に、とても優しい口調だった。それが緊張でがちがちだった私の心を少しほぐしてくれる。



 ――。


 ……。



 あれ。

 私、団長の言葉、分かる。

 それに。


「あの! 私の言葉、分かるんですか!」


 サリュにも分からないみたいだった私の言葉が。

 団長はさも当たり前のように言う。


「お前と同じ言葉を使う男に会った事があって、それで、俺とダジマは分かる」


 つまりそれは日本人だ。その人に会えば、日本に連れて帰って貰えるかもしれない。いやもう、日本大使館に連れてってくれたらいい。


「あの、私、なんでここにいるかもわからないし、気がついたら砂漠にいて、だから、お願いです、帰して下さい、帰りたいんです、日本に」


 団長とダジマさんは一瞬顔を見合すと、そっと首を横に振った。


「無理だ」


「何でですか?私は何も出来ないです、ただの大学生なんです、お願い、帰して」


 勝手に涙がこぼれて来る。日本を特別に好きとか考えた事がなかったけれど、今はどうしようもなく愛しくてたまらない。


「帰してやりたいが、その方法を俺らは分からない」

「日本大使館に連れていってくれたらいいんです、あの、ここはどこですか」

「エラルド大陸のマースだ」


 そんな大陸は知らない。どこの辺りなんだろう。


「あの」

「メイ」


 聞きたい事はたくさんある。けれど、私の言葉を遮ったのは、ここまで口を開かなかったダジマさんだった。やっぱり顔まで黒い布で覆って忍者みたいだ。


「多分、違う」


 ダジマさんは唐突に立ち上がり、私の手をとると、テントから外に出た。


「あの、何」

「君の知っている世界と、ここは違う」

「何を言ってるのか」

「空を見るんだ」


 言われた通り空を見上げると、今日はいい天気で気持ちいいくらいの青空が広がっていた。それが何というのだろう。


「太陽が見えるだろう」

「はい」

「後ろを見て」


 言われた通りに振り返り、私は息を飲んだ。

 そこには、もう一つ、太陽が出ていたのだから。


「え、何、太陽、二つ?」

「君の世界には一つしかないのではないか?」

「そうです」

「前に君と同じ言葉を話す男と会ったと言っただろう。彼から大体の話を聞いた。団長と私しか知らないが、どう考えても、彼は全く違う世界の住人だとしか思えなかったし、彼もそう言っていた。だから」


 ダジマさんはまっすぐに私を見て、続けた。


「君もそうなんじゃないかと」


 そう。

 そうって、それはつまり「違う世界の住人」って事?

 違う世界ってなに、日本じゃないのは確かなんだけど、それ以上に違うってなに、嘘じゃん、そんな、それってつまり。


「ち、地球じゃないって事?」


 そんな訳ない、だってあり得ない。だいたい意味が分からない、もし地球以外の星にまあ、文明があるとして、それでも、「何故」「私が」そこにいるというのか。


「もー、訳わかんないい」


 でも、空を見上げたら確かに二つの太陽。

 地球上でそんな場所があるなんて思えない。


「いやだいやだ、何、ここはどこなの」


 叫ぶ私をダジマさんがもう一度テントに連れていってくれる。団長とサリュが私を見て、神妙な顔つきで頷いた。


「ちょっとちょっと待って、私、いつ帰れるの」

「わからない」

「いやいやいや、おかしいよそんなのだって、私は普通に大学行って帰ってただけで」

「悪いが俺達にはどうしようもない」


 私が覚えているのはそこまでだった。目の前が真っ暗になって、そのまま倒れてしまったのだから。

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