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92話:全ての魔物使いの戦い

お待たせしました、92話更新です!


 魔物使いの学校の入り口、城の如き巨大な門。

 閉ざされたその門の前には、人々が今にも飛び出さんとばかりにひしめき合っていた。


 彼らの瞳には、殺意にも似た強烈な怒気と活力が満ち溢れている。

 パールセノンに相棒を奪われたことに対する怒り――そして、相棒を取り返してやるという決意が、彼らの心を奮い立たたせているのだ。


 大半の人々は相棒が欠けているのにもかかわらず、無茶と無謀をものともしない迫力がそこにあった。



(凄いな……みんな、本当に魔物が大好きなんだ)


 人々の最前列に立っている俺は、魔物使いという人種の気質を改めて思い知らされる。

 この怒りも、活力も、全ては家族である魔物達の為に発揮されるものなのだと。




「さあ――ゆくぞ皆の衆! 我らの半身を取り戻す時じゃ!!!」


 そして、その時が訪れる。

 ホーボックに騎乗し人々の上を飛ぶ学園長。

 彼がひときわ大きな声で啖呵を切ると、城門が勢いよく開かれ――



「「「「「おおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」


 地鳴りの如き足音と雄たけびを上げて、俺達は一斉に外へと駆けていく。

 取り戻すための戦いが、幕を開けた。




 飛ぶ、飛ぶ、飛び進んでいく。

 俺はティコに騎乗し、他の面々はそれぞれ一番早く移動できる手段で、植物園めがけて歩を進めていく。


 その途中で目に入るのは、崩れた街並み、暴れる魔物達、そして――人々の奮闘。


「フシャ―ッ!!!」

「くっ、なんてすばしっこいネコちゃん達だっ……!」


 見覚えのあるネコちゃん達の群れに、複数人が翻弄されている。

 あれは「ニャンちゃんち」のところのネコちゃん達か!


 数が多い上に、パールセノンに操られている所為か、いつもののほほんとした雰囲気は一変し殺意と警戒心で満ち溢れている。

 あれだけ人間に甘えていた姿は、見る影もなかった。


「はーい! どいたどいた! ウチの稼ぎ頭達は、アタシたちの手で取り戻すってね!」

「くらえー! マタタビ爆弾ッス!!!」


 そこにさっそうと現れて何やら丸いものを投げつけたのは、「ニャンちゃんち」の店長さんとトキコ先輩である。

 マタタビ爆弾と称したそれは、ネコちゃん達の群れに放り込まれた途端に破裂し、茶色いガスを一面に広めていく。


「「「「ふにゃぁ~」」」」

「ふっふーん、理性は操れても酔っぱらう本能までは操れないみたいッスね!」

「トキコ! 今のうちにマジックアイテムを飲ませるわよ!」


 ガスを吸ってベロベロに酔っぱらい、地面へとへたれこむネコちゃん達。

 そこへ店長さんたちがすかさず体内魔法陣無力化くんを手に駆け寄っていく。


 うん、どうやら俺が手を貸すまでもなかったようだ。



「くそっ……カリュドンっ! 俺が分からないのか!?」

「ブヒィィィ!!!」


 息を荒げる巨大なイノシシ型魔物に、飼い主らしき魔物使いの男性が必死に呼びかけている。

 だがカリュドンと呼ばれたその魔物は、呼びかけを無視し、無情にも男性めがけて突っ込んでいく。

 危ない――そう思った瞬間。


「うぉぉおおおおっ!!!」

「ゴ、ゴンズさんっ!?」


 強烈な衝突音と、砂煙が上がる――しかし、そこには一切の流血は無かった。

 なんとゴンズのおっちゃんが男性の目の前に飛び出してきて、魔物の突進を真正面から受け止めたのだ。

 怪力の札を使用しているのだろう、その肉体はかつての時と同じで筋骨隆々となっている。


「大丈夫ですか!?」

「へっ、こんなのウチのモウモウ達に比べりゃ屁でもねぇ! おらボウズ、はやいとこマジックアイテムを飲ませてやれや」

「わかりました!」


 男性が急いだ様子でゴンズさんと魔物の間へと駆け寄り、体内魔法陣無力化くんをイノシシの口内へぶちまける。

 すると、洗脳魔法の効力が消えていって、見る見るうちに魔物から敵意が消失していった。


「おー、こりゃすげえマジックアイテムだ」

「ありがとうございます!」

「いいってことよ。俺んとこのモウモウは無事だからよ、その分俺は働かねぇとな!」


 ゴンズのおっちゃんは魔物が正気を取り戻したのを確認したのち、次の魔物が居る方向へと走り出ていった。



「ふっふっふ、ここは僕達の出番ですね! さあサッキュ! 魅了の魔法で操られた魔物の動きを止めるんだ!」

「――!」


 イヴァルトが、どうやら操られていないらしいサキュバスのサッキュに魅了の魔法を使うよう指示を下す。


「グ……!? グググ……!?」


 すると、周囲の魔物達の動きがぎこちなくなった。

 精神に作用する洗脳の魔法と魅了の魔法が拮抗することで、動きを止めているのか。

 あれなら、容易く体内魔法陣無力化くんを飲ませられるだろう。



「グレープ、落ち着け、大丈夫だ……! よし、今だ皆、睡眠魔法で眠らせろ!」

「アサイラムゥゥ!!! オラぁ口を開けやがれぇ!!!」

「マジックアイテムが尽きたわ! 補給お願い!」


 ――このように、見渡す限り魔物と人々の戦闘が繰り広げられている。

 その混戦ぶりは、まさしく戦争と言ってもいい。



「ダグラスさんッ! 私達は、このままレナータのとこまで直行で良いんですよね!?」

「ああ! 魔物達の相手は最低限に、最優先でレナータちゃんを助けに行くぞ!」


 パールセノン以外の魔物の対処は、他の皆に任せておけば大丈夫だ。

 俺とティコ、シャーロットとココ、リアーネさんとシャッピー、エリーちゃんとジンクス、学園長とホーボック、そして母さんのマギアゴーレムを含めた5人と5匹と1機は、一塊となって植物園へと進んでゆく。


 ――その時であった。



「! 全員気を付けろ! 狙われて――」

「シャァッッ!!!」


 がぎん、と硬い何かと何かがぶつかり合う音が俺の目の前で発生した。

 それが、ティコの尻尾で攻撃を防いだ音だと気づくのは、その音がもう三度ほど響いた後である。

 

「こ、いつはッ……!?」


 速い、あまりにも速過ぎて、姿を捉えられない。

 リアーネさんが何かを言いかける前に、俺の首目掛けて飛びかかってきたソレ。

 そいつは俺に何度も攻撃を加えると、やがてソレが全て防がれてしまうことを察してか、少し離れた位置へと着地する。


 目で捕らえられないほどの高速の斬撃、そして小さな体に黄緑色の体毛、見間違えるわけがない。

 俺たちに襲いかかってきたのは――


「フシュルルルルル……!」


「まるもち……!?」


 ――タクマの相棒にして最強の殺人ウサギ(ヴォーパルバニー)、まるもちであった。


「そんな、まるもちまで……!?」

「パールセノンに操られてるのかー!?」


 エリーちゃんとシャーロットが息をのむ。

 眼前に対峙するまるもちの瞳からは正気が失われ、明確な殺意に満ち溢れていた。


 間違いない、パールセノンに操られている。

 まるもちもまた、モンスターフードを主食としていたのだ。


「ヴォーパルバニーか。くそ、厄介だな。……おいお前ら、先に行け。コイツは俺が相手する」

「ま、待ってくださいリアーネさん。貴女が抜けたらこちらの戦力がガタ落ちに」

ダメだ(・・・)、本気で殺す気のヴォーパルバニーを舐めるな。俺じゃなきゃ最悪殺されるぞ」


 ヴォーパルバニーの危険性を説き、自ら止めに行こうとするリアーネさん。

 確かにその通りなのだろう、タクマというストッパーが外れた今のまるもちを相手にして、無傷でいられるような人間はそういない。


 だが、ここでリアーネさんが足止めを喰らえば、俺達の戦力は致命的に低下してしまう。

 レナータちゃん救出が叶わなくなる最悪の可能性を危惧し止めようとするも、俺には双方を止める力などなく。


「シャッ!」

「いいから先に行け! 後で追いつく!」


 まるもちの姿が再びかき消え、リアーネさんが拳を構え、そして。



「ちょっと待ったぁぁぁ!!!」

「「「「!?」」」」


 混沌とする戦場の中より飛び出してきたタクマが、リアーネさんとまるもちの間に割り込んできた。


「タクマ!? あんた、血が……!」

「見つけたぜ、まるもち……!」


 ブシュ、とタクマの腕から血が飛び散ちって、シャーロットは思わず心配する。

 だがタクマはそんなものはかすり傷だと言わんばかりに、噛み付いているまるもちを睨みつけていた。


「フシュルルル……!」

「ツクヨ! 頼むっ(・・・)!」


 タクマはまるもちに腕を噛ませたまま上を向き、叫ぶ。


「……分かった……いくよ! バグ、ライナ、サラス――」


 すると上空より巨大なカブトムシに乗った少女が、結界魔法をタクマに向かって放った。

 張られた結界はドーム状にタクマとまるもちを包み込んでいく。

 それはまるで、周囲からまるもちとタクマを隔離するかのようであった。


「よし、これで一対一だぜ、まるもち……!」

「タクマ、あんたまさか1人でまるもちを戻す気!?」

「あったり前だろ! まるもちは俺の相棒だ! 俺の相棒は……俺が取り戻す!」


 無茶だと言わんばかりに叫ぶシャーロットに対し、タクマは当然だとばかりに言い返す。


「……みんな……ここはタクマを信じて……先に行って」

「ツクヨ……」

「で、でもいくらタクマがまるもちのご主人様だからって、1人で相手をするのは危険すぎるぞー……」

「……大丈夫……策はあるから」


 上空より降りてきたツクヨもまた、まるもちはタクマに任せて欲しいと言う。



「エリーちゃん、シャーロット、行こう。ここはタクマに任せるんだ。リアーネさんもそれでいいですよね」

「え、でも……」

「だな。ご主人様が出張ってくるなら、俺が手ェ出すのは野暮だ」

「う、うう……タクマー! 気を付けろよー!」


 ……俺も心配ではあったが、策もあると言われた以上この好機を逃す手はない。

 エリーちゃんとシャーロットはなおも心配していたが、既に納得した俺とリアーネさんを見て、2人とも折れてくれた。


「ああ! 絶っ体にまるもちを戻してみせる!」

「シャァ!!」


 力強い返事と共に、タクマは結界の中でまるもちと戦いを始めた。

 俺たちはそれに背を向け、進み出す。

 こうして、タクマとツクヨにまるもちの対処を任せ、俺たちは改めて植物園へと向かうのであった。





「見えてきたぞー! 多分アレが植物園だー!」

「むぅ……木々や蔦に呑みこまれておるな……。まるで城のようじゃ……」


 国の人達が頑張っているお陰で、さしたる妨害はなく植物園まで近づくことが出来た。

 エリーちゃんが指さす方向には、学園長が言った通り植物園の面影がまるで残っていない、植物の城とでもいうべき代物が建っている。


「で、レナータは、パールセノンはどこに居やがる!?」 

「恐らくあそこの頂上付近か、その奥か――」

索敵魔法レーダーによると頂上だよ!』

「――頂上です!」

「便利だなコイツ」


 母さんのマギアゴーレムが即座に探知した結果、パールセノンはあの城の頂上に居るらしい。

 奥に行くか上に行くかで戦力を二分するのはあまりやりたくなかったのでとてもありがたかった、リアーネさんもこれには思わず感心する。

 たぶんそのレーダーとやらの本来の使い方は、対象を狙撃するための位置特定に使われるものなんだろうけどね……。


「……ふと思ったけど、コイツさっきから翼もなしに飛んでるんだが、どーいう理屈だ?」

『うっひっひ、重力魔法とかアレコレ組みあわせてるんだけど、脳筋にはどうせ分かんないから教えなーい』

「ほーう……? つまり俺に喧嘩売ってるってことでいいんだよな?」

「ちょ、ちょっと2人とも!? ここまできて喧嘩は無しでお願いします!」


 いかん、母さんとリアーネさんが一触即発である。

 リアーネさんとマギアゴーレムが喧嘩し出したらもはやレナータちゃん救出どころではない、直ちに俺は2人を仲裁した。

 いやまあ、今のは母さんの言い方が全面的に悪いんだけどね、うん、この人自分の興味のない人間はとことん軽視するような人なんだよね……。



「お主ら、喧嘩をしておる場合ではないぞ! 既にここはパールセノンが支配する領域じゃ、つまり――」

「ガぁアアアァァ!!!」

「操られた魔物が、集まってるってわけね……!」


 学園長が全員に気を引き締めるよう警告した直後、前方の植物園より獣の吠え声が轟いた。

 見れば、そこにはウルフへジンやフォレストマンティスなどの凶悪な魔物達が集まっており、これにはシャーロットも忌々しそうに顔をしかめる。

 

「くっ、パールセノンの奴め。護衛のつもりで強そうな魔物を固めてきたか……!」

「こ、これはちょっとやばいぞー!?」


 思わず足を止める俺たち。

 大部分はメルツェルの従えていた魔物達のようだが、よく見てみると、見知らぬ魔物もいくつか存在している。

 どうやら、操った魔物たちの中でも選りすぐりの強さを持った魔物だけをここに集結しているらしかった。



「ちっ、二手に分かれるぞ。魔物どもを引きつけるのとレナータを助けにいく方で……」


「――その必要はありません!」


 苦肉の策で二手に分かれようとリアーネさんが提案したその時、1人の女性の声が響き渡った。

 その声を聞いた俺たちが振り向くと……。


「ここは私が引き受けます!」

「アォンッ!」

「セラ先生!?」

「む、無茶だぞー!?」


 セラ先生とエンリルが、俺たちの後方より颯爽と現れたではないか。

 彼女はあっという間に俺たちを追い抜いて、魔物の群れへと突撃していく。

 思わずエリーちゃんとシャーロットが驚き、慌てて止めようとするも、既に止めようがない。


「ギチギチィ!」

「言うことを聞かない悪い子は――――」


 1人と1匹の接近に真っ先に気づいたのは、フォレストマンティス。

 真正面から突っ込んでくる彼女に向かって、その鋭く巨大な鎌を振り下ろす。

 その動作は1秒にも満たない、人を魂ごと両断する死神の斬撃、それをセラ先生は。


「――先生が、お仕置きしちゃいます!」

「ワンっ!」


 エンリルがフォレストマンティスの腕へ噛みつき、鎌の軌道が逸れる。

 セラ先生はひらりと跳んで、地面へと斜めに突き刺さった鎌の上に着地した。


 そして彼女が懐から取り出したるは一本のロープ、ソレを手にした彼女は、フォレストマンティスの周囲を跳ね回って――


「まずは、一匹!」

「ギチィィィィッ!!?」


 ――あっという間に、フォレストマンティスを縛り上げてしまった。

 閉じる力は強くとも開く力は弱いらしく、御自慢の鎌はきっちりとしまった状態のままで、その巨体は地面へと転がる。


「す、すごい……!?」

「そ、そういえばセラ先生は、魔物の捕縛術の達人だったぞー!?」

「私もココも、あのコンビに何もできないまま縛られたのよね……タクマ諸共」


 普段の優しくて一生懸命な雰囲気とはまるで違う、熟達した達人技に開いた口が塞がらない。

 確かに彼女はかつて、タクマとシャーロットをいとも容易く沈黙させたとは聞いていたが、ここまでとは……。


「セラ君、助かった。しかしなぜここに……?」


 しかし、学園長の疑問も尤もである。

 セラ先生には作戦の事も、詳しい事情も話してないのに、タイミングを見計らったように来てくれたのはなぜだろうか?




「リアーネ様のお姿を発見しましたので、つい追いかけてきました! 臭いを辿って!」

 

 うーんこの筋金入りの追っかけファンよ。

 俺達――正確にはリアーネさんの方を向いて、褒めて褒めてと言わんばかりに輝く笑顔を見せるセラ先生。

 多分臭いを辿ったのはエンリルがやったのだろうけど、こうもにこやかに言われると自前の鼻でもいけるんじゃないかと錯覚してしまう。



「気持ちわりぃなコイツ」

「がーん!!!?」


 しかし現実は何と無情か、リアーネさんからセラ先生にかけられた言葉は、実に率直な感想であった。



「あっああでも、リアーネ様直々に罵倒していただけるのもそれはそれでいい! とてもいい!」

「ゴアァァァ!!?」


 流石のファンでもこれはキツいんじゃなかろうかと思ったのだが、何故か喜びで身悶えしながら益々テンションを上げていくセラ先生の姿がそこにあった。

 それを隙と見たサイクロプスが殴りかかってきたものの、セラ先生は見向きもせずに腕を取り、その勢いのまま地面へと叩きつける始末。

 心なしか、先ほどよりも更に動きのキレが増している気がする……。



「さあリアーネ様! ここは私とエンリルに任せて、パールセノンを倒しに行ってくださーい!」

「お、おう。…………頑張れよ!」

「ひゃぁぁぁぁ!? が、頑張れって! 今聴いてたエンリル! リアーネ様が、私に、頑張れってー!?」

「クゥーン…………」


 どうみてもドン引きした末に適当に発したリアーネさんの「頑張れ」が、セラ先生を無限にブーストさせていく。

 黄色い声を上げながら次々と周囲の魔物を引き付けては縛り上げていくその姿に、俺たち全員もドン引きである。

 


「……う、うむ、ここはセラ君に任せよう」

「正直、今のセラ先生なら何があっても死にそうに無い気がするわ……」

「セラ先生って、リアーネさんの事になると豹変するんだなー……」


 ちょっと知りたくなかった担任の先生の一面に、どんよりするエリーちゃんとシャーロット。

 とはいえ彼女のおかげでパールセノンへの道筋が見えたのも事実。



「皆、行こう。レナータちゃんを助けに!」


 俺たちはこの場をセラ先生に任せ、パールセノンのもとへと行くことにした。






 ――植物の蔦でできた城を、俺たちは飛んで、或いは駆け上がり、登っていく。


 魔物使いの国の人々、タクマに、そしてセラ先生。

 沢山の人達の手を借りたおかげで、俺たちは誰1人欠けることなく、ここまで辿り着くことが出来た。


「ここが、頂上――」

 

 城を登り切った俺は、周囲を見渡す。

 城の頂上は、広場のように丸く円形に開けた場所であった。

 その中央にはポツンと一つだけ、玉座を模したような形の蔦の塊がある。


 パールセノンは、その玉座に腰掛けていた。


『「くふ、くふふふふ。羽虫が飛んできたかと思えば、またおぬしらか」』

「パールセノンッ……!」


 レナータちゃんの体、レナータちゃんの顔で妖しく嘲笑うパールセノン。

 そして前とは違い、万全の態勢を整えてレナータちゃんを取り戻すべくここへ来た俺たち。

 魔物使いの国の存亡がかかった、最大の戦いが幕を開けようとしていた。

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