異世界の扉
木の箱の中に閉じ込められ、土の中にいることにも気が付いた昇一郎。異世界の話はもう少し先になります。
~人間の衝動と殺意~
お出掛けと言われ一郎先生と車に乗り込み施設を離れる。いつも先生達の行く下の街なのかなぁなどと考えながら車の窓から外を見る。いつもは普通の空なはずなのに何故か空は夕日の様に茜色に染まって見えた。まだお昼過ぎなのに。
「一郎先生、空が赤くなってるよ何でだろうね。」
「昇君・・・? 空なんて赤くないけどどうしたの?」
えっ! 僕にしか見えてないの? 空一面の真っ赤な世界が・・・。
「一郎先生、ぼく 眼がおかしくなったのかな?空だけでなく変な犬も見えるよ。」
沢山犬にしては大きい。まるで狼みたいな動物もそこいらに見えてきた。もしかして一郎先生はそれが分かって僕を病院に連れて行ってくれるのかも。一郎先生は僕のことすごく気にしてくれるし、一番の僕の理解者だから。あの葬儀の時の黙っていた男の子は今では普通に会話もでき、人の輪の中に溶け込めるようにまでなった。周りの優しさ、温もりもあるのだろうがこれは全て作られたものだと言う事には昇一郎は知らない。長谷川一郎もその一人だと言う事も。
「昇君犬も見えないけど?」
「一郎先生! 沢山いるの! 見えないの・・・?」
「先生はいつもの道にしか見えないよ。」
「そっか(ニヤリ)昇君見えるようになったのかもね(笑)」
「ちょっと早いけど覚醒しちゃったのかも・・・・・・」
「もう少し先だと思ったんだけどなぁ先生ちょっと困ったなぁ。」
覚醒? 見えるもの? もう少し先ってどう言う意味なの? 一郎先生は見えないの? なら僕だけに見えるのは何故? 施設にいるときは同じものがみんなと見えてた時があった。たしか必ず夕食の後に飲むフルーツジュースを飲むと必ず。みんなは追いかけたり、捕まえようと転んだりと様々だけど。
見ている先生達はと言うと微笑みながら眺めている。僕達にはまだ幼く分からない事ばかりだった。
「一郎先生? 僕おかしくなったの? だから連れて行かれるの?」
「ハハハハ。違うよ昇君。おかしくなんてなってないよ人より感受性が豊かなだけ。」
~~~~少し感じ方は違うけどね~~~~
一郎先生が大丈夫って言ってくれたから大丈夫だよね。でも何処に行くのかなぁ? 買い物にしてもいつもの街は通り過ぎたし。
「一郎先生、今日は何処に行くの?」
「昇君気になる? 今日はお泊まりになるよ。」
「お泊まり? ホテルにでも泊まるの?」
「いやいや 知り合いのお家になるけどすごく大きな建物なんだよ。」
大きなお家なんて施設に来てからは行った事もないから少し楽しみ。 だけどなんか胸騒ぎがするのは何でなのかな? さっき見えた大きな犬のせいだな。 僕は勝手に考え勝手に納得していた。この胸騒ぎに従えばもしかしたら僕は助かっていたのかもしれない。車に揺られる事、約3時間も走った位にその建物はあった。大きいのは大きいんだけど・・・ まるでお家と言う・・・ 何かの施設? 研究所? 何で? これがお家なの・・・。 僕の胸騒ぎが現実になろうとしていた。
「昇君? この建物はちょっと前までは研究施設だったんだよ。だからちょっとね。」
「一郎先生、僕悪い病気なの?」
「違う違う! 先生が用事があって、昇君はたまにゆっくりしたら良いかなって。」
「そうなんだ。わかった。今日はゆっくりするね。ありがとう一郎先生。」
僕達は先生の知り合いと言う人のお家に向かった。入り口は本当に普通の玄関だった。僕の思い違いなのかも。チャイムを鳴らすとインターフォンから女の人の声が。
「は~~~い。どちら様~~~?」
う~ん何かほわっとした感じの女の人だなぁ。
「今晩は。長谷川です。お久しぶりです。」
「一郎君なの~~~~ いらっしゃ~~~~い 今開けるね~~~~~~~」
やっぱりほわっとしてる。 でも「一郎君」って言ってたから先生より上の女の人かな? 少しして扉の鍵を開ける音と共に女の人が顔を覗かせる。
「お・ま・た・せ」
「どうもお久しぶりです。桐ヶ谷さん。」
「えらい他人行儀なのね一郎君」
「そうですかね。なんせ私は今連れがいますし変に思われるのもちょっと・・・」
変って何だろ? 外人みたいにキスするとか、ハグするとか? 僕はあんまり気にしないよ。まずは挨拶からだね。
「今晩は 僕は早乙女昇一郎です。よろしくお願いします。」
「まぁ~~~~元気な良い男の子ね~~~~」
「はい すごく良い子ですよ」
先生が僕のことを褒めてくれる。 まぁ確かに大人しいし・・・・ ちょっと嬉しい
「まずは中にど~~~~ぞ~~~~。」
先生と中に入る。中は施設と言うか本当に普通のお家みたい。良かった~。僕の思い違いで終わりそうだ。でもお家にしては部屋ごとに何故か色が付いてる。それも原色を使ってる。今歩いてる廊下は全体が真っ赤な色。リビングと思わしい部屋は何と真っ青な色。何か落ち着かない。先生は・・・・・? あまり変わってないし落ち着いている。 僕は何故かすごい気持ち悪さを感じて・・・・ 眼をつぶってしまう。
「昇君? 気分良くないのかな? 大丈夫かい。」
「うん 大丈夫。色が眼に入ると気持ち悪くなるからちょっと眼をつぶるね。」
「あんまり無理しないでね。 桐ヶ谷さん今日はここに泊まりたいんですが?」
先生が桐ヶ谷さんと言う女の人に話しかける。僕は別にここじゃなくても先生がいれば大丈夫なんだけどな。 なんて眼をつぶりながら思った。
「そ~~~ね~~~ 客間と寝室はこんなに派手ではないよのね~~~~ 」
え~~~~~~~~~っ。 それならそっちに案内してほしかったよ。
「桐ヶ谷さんそれならそっちに案内してほしかったですよ。子供もいるから。」
「こっちの~~~色の方が~~~好きかと思ったのに~~~~~~~」
「覚醒するとこの色は攻撃シグナルになりますよ! わざとにしましたね!」
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~そう?」
また一郎先生から「覚醒」の二文字が・・・・? やっぱり僕の中に何かが起こってるのかも じゃぁ僕のいた施設は普通じゃないってこと? 先生が僕の手を引き急ぎ客間の方へ。
「昇君、眼を開けても大丈夫だよ。」
ゆっくりと眼を開けると・・・・ わぁ~~~~ 普通の部屋だ。 あれ? 僕普通の部屋に喜んでる。気持ちを落ち着けよう。 すぅ~~~はぁ~~~ 落ち着いた~~。 一郎先生が用事があるんだから僕は違う部屋に移った方が良いかなと思い先生に聞いてみた。
「一郎先生? 用事があるなら僕、寝室でゆっくりしてようかな。」
「昇君、疲れてるのかな? そうだお水持って行くと良いよ。」
先生は客間に置いてある水差しとコップを僕に渡してくれた。僕はそれを持ち客間を後にして寝室へと場所を変えることにした。 寝室に着いて水を一口飲む。 ちょっと落ち着いてベットに腰を下ろす。今日は一日不思議だった。見えないものが見えたり、「覚醒」なんて言葉を聞いたりと僕にはさっぱりな一日でした。このまま何もしなければご飯食べなくても寝てしまいそう。だってウトウトしてきたし、夢の中に出航してしまいそう・・・・・・zzzzzzzzzzzzzzz。多分寝てる と僕は自分で確認してる。でも意識は寝てないむしろはっきりしっかりしている。すると誰かが入ってきた。
~~~カチャッ! コツコツコツ~~~
「寝てしまいましたね。本当はまだこの子は完成品ではないんですよ」
「でも仕方ありませんわね。他の施設の子供よりも感受性は高いみたいね」
「もちろんそのようになるように両親も目の前で殺したんですよ。事故に似せて」
「私たちに協力していてくれればこんなことにはならなかったのに残念よ。」
「そうですね。この子の両親はこの研究の第一人者でしたからね。」
多分、一郎先生と桐ヶ谷さんが話している。それも僕のお父さん、お母さんの事だ。事故に似せた? 僕の目の前で殺した? 研究の第一人者? 研究って何? 一郎先生に桐ヶ谷さん、施設に先生達、みんな何かの研究をしてたと言う事? 僕には分からない。今起きたら話が聞けるのかな? あれ? 意識はあっても体が動かない。
「水は・・・えっと、あっ!飲んでますね。」
「それなら起きられないわね。」
「このままいつもの様にすれば」
「でも最近ここの森臭いのよね」
「臭いと言う事は失敗してますね。う~~~ん」
「と言う事は~~~腐ってるって事ですか~~~?」
「そうですね。ここは研究施設で政府に守られてますから人は来ませんがね。」
腐ってるって何が? 失敗してるって・・・・・・! まさか!! 施設の子供達が里親の元、親の元に帰るって言ってたけど・・・ もしかして! みんな嫌な顔してたし、泣く子もいた。考えたくはないけど・・・ ないけど・・ 僕の頭の中には、みんな死んだって事? 僕が来てから19人は施設から出て行った。僕も同じなら20人目は僕?
「覚醒してたら意識がもしかしたらあるかもしれませんよ。」
「完全に意識を取らないといけないわね~~~」
「睡眠薬嗅がせます?」
「聞かれてるとまずいわね。そうしましょうか。」
~~~~~ピキン~~~~~
何か割れる音が、それと共に僕の鼻にちょっとした刺激がその後、急に意識が無くなる。僕はどうなるの? このまま僕も死んでしまうの?
~~~~~~~気が付くと・・・・~~~~~~~
あれ? ここは? 僕は何処にいるの? どうしてここにいるの? 手を動かす。 何か堅い重たい物に触れる。僕は何かの実験材料にされたみたい・・・・・・・。
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