プロローグ
いつもの塾帰り夜の街を歩いているとクラスメイトを見かけた。
僕は椎名 艶奏、周りの人がいうには冷静沈着で頭脳明晰かつ……優美だとか。
自分からしたら冷静とかは大したことではないし、頭が良いのは勉強しているからであって当然だ。外見は確かに整っているが。
まぁ、そんなことより今はそのクラスメイトについて話を戻そう。
すらりとした体型に眼鏡で茶髪というどこにでもいるような央己 夢喰という男子生徒だが一部女生徒によると「目を惹きつける不思議さがある」とか……んー、ただボーっとしてるだけにしか見えないけど。
聞けば、スポーツ万能で眼鏡を外すとカッコイイという女性票が多い。
そんな央己が夜道を歩いている。
聞いたところによると央己は塾に通っていないし、家はここら辺ではない。(女子の情報網恐るべしってところか)
……ふむ……。
こんなところでなにしてるのか知らないが分からないなら本人に聞けばいい。
足音を立てず歩く癖がついているので静かに央己に近づいていき、あと二メートルというところ。央己が物陰に隠れるようにしているのに気付いた。今うかつに声をかけたら驚かれるだろうか……まぁ、いいか。
「央己くん?そんな所でなにやってるの?」
央己は体をビクつかせすぐにこちらに向き直りサッと構えの姿勢をとった。
「……」
ふむ……出合い頭に襲うような事は僕は……しない、多分。
「…椎名さん?何してるの?」
……ん?もしかしなくても質問し返されてるみたいだな。
「塾の帰り。…央己くんは?」
「椎名さんにいう必要はないと思うけど?」
だったら言った僕はどうなるんだ?ま、言いたくないなら別にいいや。そこまで聞きたい訳じゃないし。
「そう。じゃあ!……」
そういいながら早く帰ろうと駆け出すと突然……。
「おい!ぶつか……る…」
小声で央己が注意するも何かに僕は体当たりしてしまった。