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あれ、手違いですか?!(;一_一)

 突然ですが、ここで学校のシステムを解説しよう。


 高天原学園は、中等部から高等部へ進学するために進級テストを受けるのだ。それは、外部入試と同じ内容で、内部生・外部生合わせて上位30名がカトレアクラスに振り分けられる。


 つまり、外部受験をしても内部生の上位30名に及ばなければ入学することが出来ない。カトレアクラス以外に、2クラスあるが、どちらも中等部から上がって来た内部生で占められている。


 31位~60位の内部生は『ラナンキュラス』クラス、61位~90位の内部生は『アマリリス』クラスに、91位以下の生徒は進学そのものが出来ない。


 そして、特待生枠が10名。学力、音楽、美術、体育、その他の5種目で、各2名ずつ。もちろん、特待生といっても簡単に入れる訳ではない。学力の場合は上位30位以内のみ入学が許される。音楽、美術、体育・その他の特待生は、何らかのメジャーな大会で功績を残した者だけが認められる。


『その他』という特待生は、何でも一芸があればOKなんだとか。生憎、私たちの学年にはいないが、祐兄の学年にいる人は中学生で会社を経営していたらしい。


『一芸』って言うから、てっきり安来節のどじょうすくい踊りとか、お腹に顔を描いて踊る腹芸とか、そんなのを想像したよ。会社経営する子供と聞いてガックリしたのは記憶に新しい。


 ちなみに、実南の情報によると、私たちの学年は、学力での特待生が1名、音楽・美術部門が各1名、体育・その他の特待生はいなかったので総勢93名となる。


 カトレアクラスは学力での特待生を含めて上位30名。それに各部門の特待生が加わって、32名で構成されている。実南、音楽部門・美術部門の特待生を除く28名の視線が絡みつく。


 このままでは私の平穏な学園生活が1日目にして台無しになってしまうではないかっ!!


 大体、なんで教師が生徒の個人情報を晒して攻撃するのか?!

(成績を張り出されてるから個人情報じゃないけどさ)


 ヒロインである私が、ヒロインらしからぬからか?!

(一理あるけど、どうにもできないんだから不可抗力じゃんね)


 そもそも好感度の高い攻略対象者が、生徒たちの反感を買うような台詞を言うか?!

(いや、でも顔が良ければオールOKなのか)


 ぐるぐる思考が駆け巡る中、じわじわと思い出して来た。彼の言葉には続きがあったことを。言わせてあげても良いけれど、ここはひとつ先手を打って牽制しよう。私の穏やかな学生ライフのために。


「佐野先生!発言を許可願います!」


 突然、ガタリと席を立った私に、話を続けようとしていた先生は、暫く口をパクパクしていたが、私の気迫に押されたのか、「特別に許す」と恩着せがましく言い放った。


「今しがたの先生の発言は、頑張って試験を受けた私たち全員を侮辱しているように感じます」

「……私は!」

「ええ、もちろん、先生が生徒を侮辱するような人とは思えません。では、なぜ、先ほどの発言が起きたのか?!」


 先生には、一言も口を挟ませないよう、流れるように言葉を続ける。所々、緩急をつけ、クラスメイト達に視線を合わせることで、こちらのペースに巻き込んでゆく。


「学生の本分は、勉学にあります。例え、先生自身が嫌われようとも、先生の言葉によって他の生徒たちと切磋琢磨し、一つでも多くの知識を学ぶ。それが、先生の狙いだったのでしょう。違いますか?」

「……そうだ」


 どこか信じられない表情を見せる先生だが、私の記憶の中では見慣れた顔だった。


 ゲームの中での先生は、一部の生徒たちから嫌われる存在だった。それは、生徒のためを思ってわざと嫌われるような台詞を言うのだと、ヒロインだけが見抜く。最初は信じられない様子だったが、徐々に初めての理解者を得たのだと分かり、教師と生徒という道ならぬ恋に発展していくのだ。


 理解者を得たから10歳以上も年下の教え子に手を出すってどうよ?!しかも、自分を理解できたから恋に落ちるって、どんだけ自分が好きなんだよ?!とコントローラー片手に憤ったのものだった。


 そんな私が先生と恋に落ちるなどありえないので、ここは完膚なきまでに叩き潰させて貰う。


「一つでも多くの知識を学生に得てもらいたい。そのためには自分が嫌われる存在であっても良いという先生のお気持ちは誠にありがたく、私は感銘を覚えました」

「そ、そうか」


 何となく頬が上気し、嬉しそうな表情をしているが、上げて落とすのがドSのやり方!てへぺろ!(^_-)-☆


「ですが、社会に出て必要なことは知識だけなのでしょうか?」


 私の演説は見事に生徒たちを惹きつけ、誰も言葉を発することが出来ないようだった。


「我が道を行くアーティストであればいざしらず、私たちの将来の多くは、会社に勤めるか、会社を経営するか、はたまた若くして名家へ嫁ぐ、いや永久就職する女性もいるでしょう。いずれにしても他者との連携を必要とする職に就くのです」


 言いながら同調を促すように右手を広げる。中にはうんうんと頷く生徒たちの姿もあった。


「そんな時、数式が、歴史の年代が役に立つでしょうか?!むしろ、今、私たちに必要なことは、協調性と指導力、そして、コミュニケーション能力なのです。先生の仰るような、他者との点数争いで成績順位を気にするようでは、協調性が育つでしょうか?!指導力が発揮できるでしょうか?!コミュニケーションが取れるのでしょうか?!」


 おお~っと生徒たちから、どよめきが走る。


「無論、先生の仰る通り、争うのではなく、互いを切磋琢磨することも必要です。そして互いに協力し合うことも。そんな高校生活を目指して頑張りたいと思います。以上、天野愛里の自己紹介でした!」


 軽く手を挙げて挨拶をすると、教室内から歓声があがり、拍手が巻き起こる。生徒たちは、その場のノリに流されて騒いでいるだけだが、先生としては面目丸つぶれだろう。何しろ一番の見せ場を乗っ取られたわけだから。


 とその時、廊下側の前方の席からがたんと立ち上がる生徒がいた。


「みんな、ひどいっ!さ、佐野先生は、佐野先生は、みんなのためを思ってわざと嫌われるようなことを言ったのにっ!」


 嗚咽を堪えながら先生を庇った生徒は、私と同じ、淡い薄紅色の髪を肩の辺りでふんわりなびかせていた。


 あ、あれ、ヒロインが2人?!ってか、むしろ彼女がヒロイン?!


内容は変わってませんが、表記を一部手直ししました。

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