表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/62

私のライバル(2)

『貴方へ捧げる愛のメヌエット』という乙女ゲームは、数ある乙女ゲームを制覇した私の中で一番のお気に入りだったわ。きちんと描かれたキャラたち。彼ら彼女らが、そこに至るまでの背景も丁寧に描かれている。ご都合主義の乙女ゲームが多い中、あのゲームはリアルだった……リアルすぎるほどに。(/_;)


 ゲームの中で兄の須佐道真は『ロンリーエロフ(通称ロンロフ……ぷっ)』と呼ばれていたし、妹の政子わたくしはバッドエンディングでヒロインを『悪の女王様』へと導く『エロ魔女』と呼ばれていたのよね。


 でも、「高校生なのにエロ最強!」とまでファンに言わしめた兄妹にも、立派な理由があったわ。須佐家は、泣く子も黙る反社会的勢力やくざなので、父も祖父も山ほど愛人を囲っていたの。家に連れてくることもしばしば。大抵は金銭目当てで愛人になる人たちだから、次代のトップである兄に目をつけたのも当然だった。父や祖父の目を盗んで、幼い頃から兄に性的な接触を図っていたのよ。


 そりゃもう、エロくもなるし、極度の女性不審になるのも当たり前よね。ゲームが始まる頃には、女なんて使い捨てのティッシュほどの価値すらないと考えていたもの。そんな寒々とした世界へ颯爽とヒロイン登場。同じ泥沼に引きずり込んでも挫けない彼女に段々と興味を持つようになるのよねぇ。


 ええ、妹であるわたくしも兄と似たり寄ったり。幼い頃から大人しか入れない所へ連れて行かれ、あんなことやこんなことまで。そりゃもう人間不信も甚だしいってわけ。


 私も兄と一緒にヒロインを穢すべく策を弄するので、ライバル令嬢であっても没落や死亡エンドはないのよ、これが。と言っても、そこに至るまでの経過が既にアウトよね!


 ストップ、性的虐待!!ダメ、絶対!!!(>_<)


 ゲームの中では過去のことだったし、所詮、二次元の世界だったから他人事だったけれど、これから実際に自分の身に降りかかるなんて……何としても阻止せねばっ!!(ノД`)・゜・。


 しかも、反社会的勢力の家に生まれてしまったのは不可抗力だとして、これからは何とか真っ当な職業に就いてもらいたい。父と祖父には。


 その為には何をしたら良いのか?!


 先ずは、祖父の機嫌をとって、暴力はダメと訴えてみようかしら。『ケンカしたらイタイイタイよ?!』とか『ましゃこ、じぃじのお嫁しゃんになるんだから死んじゃダメッ!』とか言って甘えれば何とかなるかも。


 いや、じじぃの嫁は流石にありえないかしら?!一般的には『ととしゃまのお嫁しゃんになりたい』だけれど、あの父は娘に懐かれたくらいでフラグを折ったりしない気がするのよね。


 脳裏に父の顔が浮かぶ。兄も私も父と同じ色を継ぎ、髪も瞳も漆黒色。前世、日本人だった私からみても、黒すぎる黒で、漆黒とか闇色とかが似合う程に黒々としている。


 母は、ラベンダー色というか、柔らかい紫色の髪で、ふんわりしている。瞳も薄い青というか菫色というか、子供を2人産んでも少女のような可愛らしさがあった。私も少しは母の遺伝子を受け継ぎたかったわぁ。(ノД`)・゜・。


 駄菓子菓子だがしかし、ほぼ100%父の遺伝子が幅を利かせている。色もしかりだけれど、鋼鉄製と言われても違和感ない程、真っ直ぐで頑なな髪質もそっくりそのまま。ゲームの中では、ツインテールをしていたけれど、スプレーでがちがちに固めるぐらいしないと形状が保てないんじゃないかしら。ゲームが始まるのは私が高校に入ってからだから、それまでに少しは柔らかくなることを祈りましょう。


 あ、勿論、髪以外にもつり上がった瞳とか、考えたくはないけれど性格も似ている気がするのよねぇ。


 反社会的勢力やくざの現在、実質上のトップを務める父。てっきり反社会的勢力というのは、相手に理解不能な巻き舌で怒鳴るのが通常仕様と思っていたけれど、父は怒鳴らない。少なくとも私は、怒鳴っている姿を見たことはない。その代り、絶対零度の雰囲気で静かに怒るのよ、これが。


 一度だけ、父の書斎のドアが少しだけ開いていたので覗いたことがあるけれど、ここは南極か?!と驚くほどの冷気が漂っていて、私も思わず凍り付いてしまったわ。それでも、目だけはしっかり開いていたから室内の様子が良く見えたけれど、父に叱責されている男性は、父よりがっしりした体型を出来る限り小さく小さく竦ませていたっけ。いっそ縮んで縮んで消滅出来れば本望と言わんばかりの雰囲気だったわね。


 私が覗いているのに気付いた父は、私にも絶対零度の視線を向けたけれど、それほど恐くはなかったわ。その時は気づいていなかったけれど、前世の職業柄、恫喝には免疫があったみたい。とはいえ、仕事中の部屋を勝手に覗くは規則違反よね。めんなさい、と口パクで伝え、一礼してドアを閉めたってわけ。


 その時、前世の私と性格が似ているのかもと感じたわねぇ。弁護士と反社会的勢力なんて、全然似ていないようで実は似ている。序でに警察関係者も。三位一体というか似たり寄ったりなんだろうね。


 どれも他人に対する権力を持っている。反社会的勢力は警察にから逃れるために弁護士を雇う。弁護士は法律の裏を掻いて警察から反社会的勢力を守る。そして、弁護士は反社会的勢力に雇われているので立場的に弱いという関係だ。


 私は反社会的勢力や悪徳企業、強欲政治家たちに陥れられた人たちを弁護するのが仕事だったから三位一体ではないけれど、司法に対する強みという意味では、似たり寄ったりの存在ではあると思う。


 父はその反社会的勢力のトップ。一方、前世の私も中々に凄腕だったと自負している。その共通点は、常に冷静であり続けること。頭に血が昇れば周囲が見渡せなくなる。周囲が見えていれば、必ずどこかに窮地を抜け出せる道があるのだ。


 そして、目的を絶対に見失わないこと。目的の為には手段を択ばないのは当たり前だが、人間という者は往々にして目的からそれてしまうことが多い。例えば、家族を大事にしようと思っている所へ大金を見せられ、家族を捨ててしまうなど珍しくはない話だ。


 大抵の場合、目的を忘れた輩がトップに上り詰めることは絶対できない。目の前の欲に溺れてしまうから。つまり、生来の気質というより職業柄身についた気性が似ているのか。それとも生来の気質があるから職業に適しているのか。


 私も冤罪を張らずためなら手段を選ばなかった。法律を逆手にとって、危ない橋も良く渡った。蛇の道は蛇。弁護士時代に培ったノウハウは、今も廃れていないだろう。


 自分の幸せの為に、須佐一家を改造してみせましょう。ええ、必ず!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ