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フラグは徹底的に折らせていただきますっ!(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

「次期須佐コーポレーションの長となるお兄さまの動向をチェックするのは当然のことですわ」

「……俺の部屋には指紋認証システムの鍵をつけているのに、どうやってチェックするんだ?!」


 玄関じゃなくて個人の部屋に指紋認証システムって。まあ、幼稚園の頃から日記を盗み見されているなら、これまでに様々な攻防戦があったことは想像に難くない。それでも日記を読まれてしまう須佐兄、不憫だ。


「まあ、指紋認証なんて玩具同然ですわ。お兄さまも好い加減、政子に開けられない鍵などないと分かって下さらないと」


 ニッコリ笑っておーほほほほっと高笑いしている須佐妹に歯がみをしている須佐兄。あれ、でも待って。須佐兄ってこんなキャラだっけ?!


「須佐先輩は、バリバリの硬派で一部の男子生徒から兄貴と慕われている存在です。けれど妹さんが絡むと、まあ、大体あんな感じです」

「……いつものことなんだね」


 いつの間にか心の声が漏れていたらしい。坂口君からさっくりと説明された。本当は、見かけと中身のギャップではなく、乙女ゲームとの違いが疑問だったんだけど、まあいいか。


 ざっと見渡すと、みんなの須佐兄妹を見つめる視線が生暖かった。ほとんどの生徒たちが幼稚舎あるいは初等部から通っている。下手をすれば、家族より長い時間、共に過ごしているのだから良い所も悪い所も知られているという訳だ。怖いわ~。


「そろそろ兄妹喧嘩は終わりにしろ。次回の会合は4月25日だ。それまでに各クラスで出場者を決めること。天野」

「……はい?」


 突然、生徒会長から名前を呼ばれ、思わず怪訝な声が漏れる。生徒会長は、ちょっと目を見開いたが、直ぐに表情を隠し、言葉を続けた。


「決闘の内容を次回の会合までに決めろ。以上だ」

「あ、それならもう決まりました」


 さらりと告げる私に、周囲がざわめき、視線が集中する。あれ、困ったな。そんな大層な内容じゃないんだけども。


「……何にするんだ?」


 漸く緑川兄弟から解放された須佐兄が、厳しい目つきで問い質す。いや、だからそんな御大層な内容じゃないんだって!と思いつつ、言葉を返した。


「叩いて被ってジャンケンポン」

「……はあ?!」


 やっぱり決闘と言えば、これでしょう!(^0_0^)






『俺に指図するとはいい度胸だな、ええ?今夜もお仕置き、されてぇのか?んん?』


 耳元で須佐道真の、高校生にしては妙に艶のある声が響いた。愛里は、昨夜の出来事を思い出し、震えが起きると同時に、下腹部に抑えきれない熱が溢れ出るのを感じていた。


 理性では押し流されてはダメと思う一方、自分の体は、何も考えられなくなるほど押し流されたい、全てを彼に委ねたいと服従している。


 彼の厚みのある唇が近づいて来る。拒絶しなさいと理性が命じるのに、自然と体が反り、彼の接吻を受け入れる態勢になった。近づいてくる唇の端がくっと持ち上がり、彼が嘲笑うのが分かった。


 ああ、拒絶しないといけないのに。どうしたら良いの?



 ⇒ キスを受け入れる。

   キスを拒絶する。







 須佐道真と妹の政子の両親が経営する須佐コーポレーションは、表向き、建設業を主軸とし、不動産業や建設機械を扱う会社だ。だが、元々は反社会的勢力、つまり暴力団から始まった組織で、現在でも裏の顔として存在すると噂されている。


 私は彼らと全く接点がないので、あくまで巷の噂、であるが。


 もっとも、乙女ゲームの中ではハッキリと裏の顔が見えていた。生徒会長が表のボスだとすれば、彼は裏のボス。脅しや暴力で影から学園を支配していた。


 前世で幼少時からイジメにあっていた私は、どんな理由があれ暴力を振るうなんて最低と思うけれど、『暴力(=普通ではないこと)』が『影』となって魅力的に映ることもあるのだ。特に世間を知らない、うら若き女性たちにとっては。


 加えて、親衛隊は全員彼のお手つきというほど、須佐道真というキャラはエロさも全開だった。ゆるめられたネクタイと外されたボタンの隙間から除く小麦色の肌。けだるい笑みを浮かべて壁ドンされ、耳元で「今日、ヒマ?」なんて囁かれた日にゃあ、高校生なんてイ・チ・コ・ロよ~ん。


 という訳で、彼を嬉々として選ぶプレイヤーも多かったが、ところがどっこい、ゲームには4つのエンディングがある。ハッピーエンドとノーマルエンドでは、裏の顔が明かされることなく幸せに暮らしてメデタシメデタシ。


 バッドエンドでは、裏の顔が明かされ、なおかつ受け入れられず、逃げることも出来ず、暴力に怯えて暮らすというもの。更に、トゥルーエンドでは、なんとヒロイン自ら須佐道真と共に組の頂点に立ち、暴力を容認し、次第に清い心が失われていくというもの。


 まあ、それはそれで聖女が悪女に堕ちていく(というか、悪のトップへ伸し上がる)ところがカッコいいと一部のプレイヤーたちからは絶大な人気があった。聞いた話によると、同人誌業界では『悪の女王様』として君臨するヒロインの姿が数多く描かれたらしい。


 そんな『ロンリーエロフ』、あ、これはネットで須佐道真を呼ぶ愛称で、一匹狼ロンリーウルフとエロを合わせた言葉。略して『ロンロフ』なんて呼ぶプレイヤーもいた。ロンロフが、モフモフに響きが近くて可愛いらしい。ぷ。


 とにかく、そんなロンロフが幼稚舎の先生以来、女を好きになったことがないって、どういうこと?


 あ、私を好きになったっていうのは政子さんの勘違いだと思う。多分、私が彼を睨み付けたから生意気とかそういう内容だったのを勘違いしたんだろう。うん、絶対そうに違いないっ!(; ・`д・´)


 ……で、話を元に戻すけれど、百歩譲って、お遊びの女性たちを日記に書いてないだけという可能性もあるけれど、そもそも、目の前にいる須佐道真ってゲームほど色気がない。いっそ皆無と言っても差支えないほどエロさがないんだよね。


 襟元までキッチリ留められたボタン。ピシッと絞められたネクタイ。さり気なく実南に聞いた彼の親衛隊は、99%男子生徒で構成されているらしい。残り1%は政子さんで、親衛隊隊長を務めているそうだ。とはいえ、同性が好きな訳ではないだろう、多分。恐らく。いや、もしかして、好きなのか?……ううむ。まあ、ゲームと違っても問題ないか。


 だってここは現実の世界だし、そもそも私も祐兄も玲菜ちゃんたちもゲームとキャラが変わっているのだから、生徒会のメンバーだけ変わってないとは断言できない。むしろ生徒会長と緑川兄弟も変わっていないか調べた方が良いかもしれない。それによって犯人の目星が付くかもしれないから。


 なんて、つらつら考えていたら、目の前に人影が立った。


「天野さん。私、負けませんことよっ!お兄さまは決闘に勝ってから堂々と奪い取って下さいましっ!」


 政子さんが得意げな顔をして宣言する。下から見上げると、腰に手をあてているので、意図せず柔らかそうな胸が張り出し、机の上に置いておいた手が思わずワキワキと動いた。


「男は要りませんっ!それより、貴女を下さい!」

「……へぇ?!」


 静まり返った室内に、政子さんの間抜けな声が響いた。


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