これって、もしかしてフラグってやつですか?!(; ・`д・´)
坂口君とお菓子談話で盛り上がっていると、あっという間に会議室へ到着した。てっきりここもベルサイユ宮殿かと思いきや、めちゃくちゃ近代的な会議室だった。
靴音も高く響く大理石の床に、円形に並べられた机と椅子。それも学生が使うような合板とパイプを組み合わせたものじゃない。いわゆる大企業の社長室にあるような重厚かつ高級そうなデスクに、背もたれが高く、柔らかい革張りのチェア。私の身長なら寄りかかってもスッポリはまる心地良さだ。
流石にバカ高い寄付金を取る私立校だけはある。つい燥いで椅子をくるくる回していたら、生徒会長の冷たい視線にぶつかった。きょろきょろ辺りを見回すと、他の生徒たちもこちらを見ていた。
坂口君は、「さっきから注意してたのに、聞こえてないんだから……」とため息を吐いた。ごめん、全然気づいてなかったよ。(;´Д`)
そう言えば、この会議室、円形にぐるりと机が並べられている。正面に生徒会役員が陣取り、その隣が風紀委員会、反対隣りが3年のクラス委員、ついで1年、2年のクラス委員が座って一周する。つまり、どこに座っても、隠れる場所は存在しない。
出来れば後ろに座って、こっそり居眠りをしたかったのに残念である。
「ごほん。では全員揃ったところで、第一回クラス委員総会を始めたいと思う。新入生もいることだし、まずは簡単な自己紹介から始めようか」
生徒会長の早乙女貴教が簡単に挨拶を終えると、副会長の須佐道真が自己紹介をした。そして、須佐の隣に座る緑川棗が口を開いた。
「僕は、緑川千歳。2年生で生徒会の書記をしている。よろしく」
え?と驚いていると、間髪を入れず、緑川千歳が緑川棗として自己紹介をした。確かゲームでも入れ替わって混乱する人たちを面白そうに眺めていたけれど、まさかクラス委員の総会でもやるとは!余りの非常識さというか、バカさ加減に呆然としていると、緑川棗と目が合った。
(……なんか睨まれてる?!)
睨まれる筋合いはないッ!とばかり睨み返すと、隣に座る緑川千歳もこちらを睨んで来た。黙ってろよッと脅しをかけているのだろうか。それにしても生徒会長や祐兄たちも気付いていないらしい。辛うじて、呆れた顔をしている須佐道真は気づいてるようだが。
まあ、いいか。質が悪い悪戯だけど、私には関係ないし。(~_~;)
そんなこんなで、あっという間に全員の自己紹介が済んだ。私の番が巡ってきた時、妙に周りの視線がイタい気がしたけれど、気のせいだろう。きっとそうだと信じたい。(ノД`)・゜・。
「少なくとも一年間、このメンバーで学園行事を運営していくので、くれぐれも揉め事など起こさないように」
生徒会長がこちらをねめつけながら注意している。自分のことしか興味がないオレサマ生徒会長だと思ったら、意外と他人の言動を根に持つタイプだったらしい。今後は、うっかり接触しないよう気を付けよう。
「では、本題に入ろう。先ずは、5月末に行われる体育祭について……」
(あれ、体育祭ってなんか聞き覚えがある……って、そうか!ライバル令嬢との直接対決だ!)
確かゲームでは、選択した攻略対象者のライバルから対決を挑まれ、ミニゲームをしてポイントを稼ぐのだ。ここで高得点を叩き出すと、ライバル令嬢を見下すことが出来る。
見下すといっても、ヒロインはあくまで『慈愛』とか『清楚』が売りなので、「勝つつもりはなかったんですけど、ごめんなさいっ!」と謝るのだ。悔しがるライバル令嬢たちのスチールを眺めながら、実はヒロインって腹黒?!と思ったのは不可抗力だ。
結果、攻略対象者から注目を浴びて恋愛モードに突入し易くなるが、敵もさるもの引っ掻くもの。ライバル令嬢たちが見えない所でチクチク意地悪をしてくるのだ。最終的に、攻略対象者に意地悪がバレて、ライバル令嬢たちが振られるという展開だ。
大差ない点数だと、「なかなかやるじゃない!」と勝手にライバル認定され、事あるごとに攻略対象者との仲を邪魔してくる。といっても、意地悪ではなく、ツンデレというか、友達になってあげても良いわよ!的な展開となる。ここで地道にライバル令嬢たちと交流を深めると、「仕方ないから譲って差し上げるわ!」と自ら身を引き、大団円となる。
大負けすると、「おーほほほほっ!あなたは彼にとって役不足よっ!」とばかり高笑いをされ、恋愛モードが遠ざかる。まあ、ライバル令嬢たちから意地悪はされなくなるので、恋愛とは無縁のノンビリ学園ライフを送って卒業となる。
そして、ミニゲームと言っても、『モグラたたき』とか、ヘルメットとピコピコハンマーで戦う『叩いて被ってジャンケンポン』とか子供でも出来るゲームなのだが、何度でも挑戦できる代わりにクリアとなる合格ラインが異常に高い。
負けるたびに、ライバル令嬢たちが思い思いの罵り言葉で嘲笑うのを聞かされていると、本当にムカつくというか、「やってやろうじゃないの!」と白熱したゲーム展開が待っている。
ええ、このミニゲームだけで3ヶ月を費やし、全てのルートで満点を叩き出しましたが、何か?腹黒なセリフを吐いて、ライバル令嬢たちを悔しがらせ、ニヤニヤしましたが、何か?!( `ー´)ノ
とはいえ、現実世界でミニゲームはないから大丈夫だろうと思っていたら、隣に座る女生徒が軍隊も真っ青な角度で真っ直ぐ手を挙げた。うち(カトレアクラス)の隣だから、恐らくはラナンキュラスの委員長だろう。反対隣りは3年生のクラスだから間違いない。
(黒髪のツインテールに、黒い切れ長の瞳。何故だかツインテールががちがちに固められて、ウル○ラの母みたいになってるけど、どこかで見たような……誰だっけ?!)
「私、ラナンキュラスのクラス委員である須佐政子は、カトレアクラスの委員長である天野愛里に決闘を申し込む所存でございます!」
(おお、やっぱりラナンキュラス!……え~っと、すさまさこ、スサマサコ……須佐政子?!って、須佐道真ルートのライバル令嬢で、極度のブラコンを発揮する妹じゃね!?)
そう言えば、きつい顔立ちが良く似ている。事の成り行きが呑み込めず、ぼんやりしている私に、ライバル令嬢は、ふふんと鼻で笑ってみせた。ミニゲームの時と同じ、私の闘争本能に火をつける微笑みだった。




