3日も寝込んでいたようです。(;゜Д゜)
その後、夏彦から高天原学園で注意すべき人物を教えてもらった。
「攻略対象者たちは見張らなくて良いの?」
「お前が動くと、ヤツらを惹きつける結果になるぞ。面倒なことになっても良いのか?!」
夏彦が、冷たい視線で言い退けた。はい、お叱りは、ごもっともでございます。
「それより、御崎愛璃に張り付いてろ」
「え、なんで?」
真人から予想外の名前を聞かされ、驚く。
「あいつも前世の記憶があるんだろ?それに、ヒロインを真似てるから、どう転ぶか分からない」
「ヒロインを真似てる?」
御崎さんに会ったことのない夏彦が、怪訝そうに聞き返す。真人は、いつの間にか入学式で歌を披露したことまで知っていて、夏彦に聞かせていた。当然、夏彦は面白くなさそうで眉間に皺を寄せていたが、最後にはふんっと鼻を鳴らした。
「まあ、良いだろう。愛里が勝手に動いたせいで、既にキャラクターの大半がゲームと違ってるんだからな」
「……お手数おかけ致します」
夏彦と対峙していると、大型肉食動物にロックオンされると言うか、被食者の気持ちにさせられるので、条件反射で謝ってしまうのだった。
「ところで、愛里。お前、まだ歌が苦手なのか?」
真人が何気ない様子で聞いてくる言葉に、体がぎくりと硬直する。
「う、うん。歌おうとすると、喉が引き攣って声が出ない。あ、でも、誰も私の歌なんて聞きたがらないよ、うん」
夏彦は知っているはずなのに、真人に伝えなかったのだろうか?何となく、恨めしく思って夏彦を睨むけれど、夏彦の真剣な瞳とぶつかって、やっぱり私が悪いような気にさせられた。
「歌は、誰かに聴かせるものではない。何かを伝えたいという自発的な欲求だ」
「元々、歌は、巫女が神へ捧げる祈りの言葉から端を発しているからな」
それは、前世でもトールさんとサミさんに聞かされたことだった。より遠くへ、より強く、人々の願いを旋律に乗せて祈ることから歌が始まったのだという。『荒野の歌姫』のヒロインも、ただの歌姫ではない。歌を歌うことで人々を癒したのだ。
それが分かっていても、何かが引っかかっていた。時々、本当に時々だけれど、歌いたくなることがある。それでも、何かが私を引き止めるのだ。
お前が歌ったら大変なことが起きるぞ、と。
「さて、大まかな計画は決まったし、帰るか」
「帰るって、どこに?」
きょとんとして立ち上がった男2人を見上げた私に、彼らは大袈裟な溜息を吐いた。
「どこって、商店街にあるお前の家だ」
「もう3日も経ってるから祐輔を抑えるのも限界だろう」
ええ~~~~~っ?!私が倒れて3日も経ったの?!
慌てて携帯を取り上げると、祐兄と実南、玲菜ちゃん、そして御崎さんからも大量のメールが届いていた。私、ホントにヤバいカモ!!




