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拉致られました。あ~れ~っ!!\(゜ロ\)(/ロ゜)/

「な、夏彦?!なんで豊葦原とよあしはら学院の制服なんか……」


 確か、夏彦は県立の某男子校へ行くって言ってなかったっけ?!


 それを聞いた中学のクラスメイトたちが、我も我もと男子校の入学試験を受験したものだから今年の倍率は異常に高かったとか。しかも、男装して受験に臨んだ女子もいたとか。まったく人騒がせな幼馴染だ。


「男子校に行くと言った。経営が公から個人へ変わっただけで大差ない」

「いやいや、天と地ほどに差があるでしょ!」


『私立 豊葦原学園』は、国内で高天原学園と双璧をなす良家の子供たちが通う学校。だが、決定的な違いがあった。どちらかというと、世間知らずというか、おっとり気質の生徒が多い高天原学園に対し、筋金入りの選民意識に凝り固まったヤツラの集まりが豊葦原学院だった。


 金持ち連中を蛇蝎の如く嫌っていた夏彦が何故?!いや、そもそも夏彦の家は、普通のサラリーマン家庭だっただろう?!何故、あんな金持ち学校に入れたんだ?!


 ぐるぐると答えの出ない質問が頭の中を駆け巡る。


「話は後だ。夏彦、早く愛里を車に乗せろ」

「命令するな、クソガキ!」


 そう言えば、真人まさと君もいたんだったっけ。慌ててサロンを飛び出して校門へ向かうべくダッシュしていたら、携帯に真人君から電話がかかってきて、夏彦は駐車場で待っていると教えられた。


 夏彦の制服がショックで忘れていたけれど、今、ものすご~くオレサマな発言が聞こえなかった?!真人君って天使じゃなかったっけ?!そもそも、夏彦と面識があるなんて知らなかったし、一体全体どゆことっ?!


 この時の私は、軽くパニックを起こしていたと思う。気が付いたら、車の後部座席に座っていた。右側に夏彦、左側に真人君が座っている。車には詳しくないから車種など全く分からないけれど、黒い本革張りシートで足元のカーペットも毛足が長い。見間違いでなければ冷蔵庫も付いてる。間違いなく高い車だよ、これ。


 しかも運転席との距離が広い。さり気なく足を延ばしても全然届かない。夏彦なんて長い足をこれ見よがしに組んでいる。なんだ、自分の方が足が長いと自慢しているのか?!それとも私がチビだって言いたいのか?!


 おい、ごるぁっ!!ケンカならいつでも買ってやんぞっ!!


 我ながら殺気の篭った目で夏彦を睨み付けていると、隣からぐいっと腕を引かれた。見下ろすと、真人君が怒った顔で目を吊り上げている。


「漸く会えたのに、俺のことは無視か?!」

「無視って……んッ」


 反論する間もなく、柔らかいもので口を塞がれた。真人君の顔が間近に見える。もしかして私ってキスされてる?!うわっ!なんか入って来たっ!!真人君って小学生じゃないの?!どこでフレンチキスなんて覚えたのよっ!!


 横目で夏彦を見ると、ニヤニヤしている。ダメだ、アイツは助けにならん!こうなれば奥の手とばかり真人君の脇の下へ手を伸ばす。


「ぐっ!ちょ、ちょっと待て、そこはダメだッ!」

「……ぎゃんっ!!」

「うわ、バカっ!」


 思ったより強い力で頭を抱えられていたから、真人君の脇の下をくすぐってみた。そしたら、咄嗟に引いた肘で思いっきり頭を強打された。条件反射だから悪気はないのだろうけれど、何だろう?!目の前が暗くなっていく。




「お前なぁ、手加減しろよ!馬鹿力なんだから!」


「悪い!けど、こいつだって、俺たちのこと忘れているくせに、俺の唯一の弱点を攻めてくるとは、侮れねえ!!」


「見た目は王子さまでも相変わらず脳筋だな、お前」


「ふん!今更だろ。俺は、お前みたいに腹黒くないんでね」


「正論だが、それこそ今更だ。何しろ俺たちの良心は、全て愛里が握ってるんだから」


「確かに。愛里は俺たちの大切な女神さまだからな」




(女神さまって何だろう。ずっと以前にも聞いたことがあるような気がするけれど……ああ、そうだ。『荒野の歌姫』の中で、英雄が歌姫にプロポーズするシーンだった。もちろん、『俺たち』じゃなくて『俺』だったけど、2人と一緒にいると何だか、ものすごく安心できる。やっと家に帰って来たような、そんな気持ち……ふあぁ、ちょこっとだけ眠っても良いかなぁ~)


 



 

 温かい微睡まどろみから意識がゆっくりと浮上する。目を開けると、そこは築数百年を経た老舗旅館のような部屋だった。


 天井には大きな雲竜図が描かれている。枕もとに置かれた仄暗い行燈(流石に蝋燭ではなく電球だった)の明かりを受けて、龍の爛々とした目が浮かびあ上がる。


 寝ていた布団は、重さを感じない羽毛布団だったが、むっちり中身が詰まっているところをみると、テレビの通販などでは決して買えない代物だろう。さて、起き上がるかと身じろぎをしてみるけれど、何か重いものが圧し掛かって身動き取れない。


(これは、あれか?!俗にいう金縛りかっ?!)


 冷や汗が、つうっと滴り落ちた時、羽毛布団がもぞもぞ動いた。


(うきゃ~!!その上、ポルターガイストもっ?!なんまんだぶ、なんまんだぶ……!!)


 来るべき恐怖に目を瞑り、心の中で念仏を唱えていると、低い声が布団の中から響いた。


「起きたか?!」

「ぎゃああああああああああああああああああっ!!」


真人の名前が間違っていたので訂正いたしました。ご指摘、ありがとうございました~っ!<m(_ _)m>

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