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前世の記憶(仮)と新しい家族。(*'ω'*)

 その晩、夢を見た。


 写真に写っていた、亡くなった母親と愛里ちゃんだった。母親は、何度も私に向かって頭を下げた。愛里ちゃんは、幸せそうに笑って母親の腕に抱かれていた。そして、そのまま2人は遠くに去って行った。


 私は、何度も2人に声をかけようと思ったけれど、金縛りにあったかのように声が出せず、やっと体が動いた時には夢から覚めていた。




 愛里ちゃんの体はここにあるのに、遠くへ行ってしまったのは、愛里ちゃんの魂?


 仮に魂だと考えれば、愛里ちゃんがお母さんと一緒に居たがったから体から魂が抜けてしまい、本能的に危機を感じた体が「このままではヤバい!」と『私』を掘り起こした、のかもしれない。


 とすれば、『私』は愛里ちゃんの前世の記憶?


 しかし、最悪な事態を考えれば、同じ頃、死亡した40~50代女性の霊、つまり『私』が彷徨って愛里ちゃんの体を乗っ取り、追い出された愛里ちゃんの魂がお母さんと一緒に天国へ行った、のかもしれない。


 とすれば、『私』って悪霊?



 ぎょえ~~~~~~~っ!!私自身が恐いっ!!(ノД`)・゜・。



 万一、悪霊だったケースを危惧し、看護師長である柳原さんにそれとなく聞いてみたけど、病院では該当する患者さんはいなかった。他の病院とか病院以外で亡くなったケースとかまで追及すると、自分が人間じゃなくなるような気がしたので不明のまま、敢えてスルーしている。


 そもそも、愛里ちゃんの夢だって、ただの夢かもしれないし……だって、自分が人外生物だったら、どうしたら良いのか分からない。自分に甘い人間だと自覚しているから、お祓いとかエクソシストとか痛い思いはしたくないっ!!


 口から緑のスライムを飛ばして、体中の皮膚が切れたら痛そうだよねっ?!……想像しただけで鳥肌立つわっ!!(;゜Д゜)


 ということで、チキンな私は、取り敢えず『前世の記憶(仮)』ってことで手を打つことにした。




 前世の記憶(仮)は、個人的な情報は皆無に近かったが、勉強についての知識は豊富だった。誰に教わった訳でもないのに漢字の読み書きが出来たし、算数や理科などの問題もすらすら解けた。


 外国語は、英語は勿論、フランス語とスペイン語も理解出来た。もしかすると、前世では語学を使って仕事をしていたのかもしれない。とは言え、今の所、役に立つ気配は皆無である。何しろ、公立の小中学校へ通っていた下町住まいの一般ピーポー……これからの自分に期待したい。(;´Д`)


 あ、そうそう。歴史と地理は難しかった。何故なら、個人情報保護法や著作権等に引っかかりそうだったのか、はたまたゲーム製作者のマニアックな拘りなのか、前世の知識(仮)と似て非なる内容だったのである。


 例えば、私の知識の中では日本の初代総理大臣は、昔の千円札の人だけど、ここでは井藤博史いとう ひろし。いっそ全く違うのであれば諦めて覚え直すのに、微妙な違いが「あれ、どっちだっけ?」と迷わされる。


 今ここに製作者がいたら、地面に正座させて小一時間は説教したい。いや、私の9年間の苦労を分からせるには、丸一日でも説教できる気がする。


 ふう。落ち着け、私!落ち着くんだ!(;´Д`)


 体育は割かし得意な方だと思う。水泳も直ぐに泳げたし、走るのも早かった。手先は器用だから、美術とか家庭科も問題ない。


 だけど、音楽だけは苦手だった。声は綺麗と誉められたけど、人前で歌おうとするとどうにも緊張して声が裏返ってしまうのだ。楽器も同様。レッスンでは弾けるのに発表会では散々だった。


 そういえば、前世の記憶(仮)でもカラオケは絶対に歌わなかったっけ。


 私の学習能力の高さは、前世の記憶(仮)によるものかどうかは分からない。普通に、天才だ、神童だと騒がれれば、そんなものなのかとも思う。


 あ、騒いだのは父親と鹿子さん、そして商店街のオッちゃん、オバちゃん連中だけどね。


 鹿子さんなどは割と本気で、「マスコミに知られたら天才を育てる研究所(ってドコ?!)に無理やり連れて行かれちゃうから天才だって知られないようにしなきゃ!」と心配していたけど、幼児教育の盛んな昨今、ちょっと勉強できたくらいで時代の寵児になれるほど甘くない。


『世界なんとか選手権に最年少で優勝!』とか、明確なタイトルがあればマスコミも飛びつくかもしれないが、こちとら20歳過ぎればタダの人になるのは分かり切っている。


 だって、前世の記憶(仮)で感じたのは、普通の会社員っぽい人生だったから。調子に乗ってマスコミに騒がれて、成人したら普通の人で、「あの人って子供の頃は天才だなんだって持て囃されたのにね~!」なんて黒歴史を暴露される訳にはいかないのだ。


 あれ、どうやら私も少し鹿子さんに影響されているらしい。(汗)


 話題を変えて……そうそう!あれから、と言っても母親の七回忌を終えた後、父親と鹿子さんが再婚して、私には新しい家族が増えたのだ。


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