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私の親友(2)

 いや―――――――――――――――っ!(ノД`)・゜・。


 本っ当に黒歴史なので宇宙の彼方へ葬り去りたいぐらいよっ!!私がヤツの本性を知るにつれ、淡い初恋も木端微塵に吹き飛んだわ!


 もっとも、ヤツが私を見ていたと感じたのは自意識過剰でもなく事実だった。別に私が好きになったとか、そんな可愛らしい理由ではなく、愛里に近づく私に警戒して敵意を向けていたのだけれども。


 いや、まだ大丈夫。当時の私は小学生だった。夢物語を信じたからって仕方ないわ。寧ろ、同じ小学生の頃から愛里に異常な執着を燃やすヤツの方が異常だ。絶対、確実に、誰が何と言おうともっ!!


 あら、いやだ。私としたことが。おほほほほっ!


 ええっと、それから何だったかしら?そうそう、あれは私たちが小学4年生の春だったわね。愛里の家の近くに大型ショッピングモールが出来たのよ。それで、オープニングイベントをやると当日になって聞いたものだから、いつもは遊びに行く約束をしてから行くのに、その日に限って愛里の家を突撃訪問したってわけ。


 鹿子かのこさまが出てきて、愛里は友達とショッピングモールに行ったと聞いて、もの凄くショックだったわ。だって、私は一緒に行く相手として愛里を選んだのに、愛里は私ではなく他の人を選んだんだって思ったから。


 ショックの後に怒りが込み上げて来て、直ぐ様、私もショッピングモールへ向かったわ。愛里は中央広場にいて、噴水の前で男の子と親しそうに話をしていたの。


 そう、それが八雲夏彦やくも なつひこだったのよ。……最悪でしょ?!







「愛里っ!!」


 私は護衛に控えているよう言い含め、真っ直ぐ愛里の元へ駆け寄ったわ。愛里は驚いたようだったけれど、直ぐに眉を潜めた。そのこともまた私の怒りの炎に油を注ぐようなものだった。


「実南ちゃん、どうしてここに?!」

「愛里こそ、何よっ!私に内緒でデートってわけ?!」


 私の張り上げた声に、周囲が怪訝そうな顔で振り返る。愛里は声を落とすように諭すけれど、私の怒りは募るばかりだった。


「静かにしろ」


 そんな時、夏彦が静かに声を発したの。まだ変声期前だったから今より高い声だったけれど、絶対に逆らえないような響きがあったわ。末恐ろしい。


 私は、まだ彼が誰だか知らなかったから愛里に尋ねようとした矢先、愛里は人混みの中をちらっと見て、何かに気づいたように息を飲んだ。


「あ、やば。夏彦、彼女を連れて離れて。今すぐ」

「ちっ!」


 彼は私の手を乱暴に掴むと、そのまま中央広場を後にしたの。


「ちょ、ちょっと待ちなさいっ!私は、愛里とっ」


 ずるずる引きずられていくのを踏み止まって、愛里を振り返ろうとしたら、突然、夏彦に肩を抱かれて視界が塞がれた。


「振り向かずに、黙って歩け」


 耳元で囁かれてドキッとしたわ。あ、これって玲菜お姉さまたちの反応と同じかしら。怖いもの知らずって、ある意味、最強ね。


 それから愛里のことは頭から消し飛んでしまったわ。だって、(見かけだけは)カッコいい男の子に肩を抱かれて歩くなんて初めてだったし、周囲からは美男美女のカップルといった羨望の眼差しで見られるのも初めてだった。


 ぽうっとしているうちに、気付いたらモールの外へ連れ出されていたのよ。夏彦が腕を外すや否や、護衛たちが寄って来て私を取り囲んだわ。その隙に、彼はモールへ取って返したのだけれど、痛烈な一言を忘れなかった。


「友達ごっこがしたいなら、自分と同レベルのヤツラと遊んでいろ。これ以上、アイツの足を引っ張るなら二度と近づけないようにしてやる」


 そしてニヤリと笑ったのだけれど、悪魔の微笑みとはこういうものじゃないかしらって思ったくらい、背筋が凍ったわ。


 でも、そのすぐ後だった。モールの方から、愛里を置いてきた方角から悲鳴が聞こえ、口々に事件だ、警察だと騒ぎが始まった。


 夏彦は舌打ちして踵を返す。私も後に続こうとしたけれど、護衛によって阻まれ、そのまま車に乗せられてしまったわ。そして、私が泣いても怒っても喚いても、誰も相手にしてくれなかったし、愛里たちに何が起こったのかも教えてくれなかった。


 あんなに自分が無力で、ちっぽけな存在に感じたのは、生まれて初めてだった。


 家へ帰った私は、憤りや無力感、不安や焦燥から、誰とも口を利かず、一目散に自分の部屋へ閉じこもった。そして、ベッドの上で声が枯れるほど泣いたわ。お姉さまたちやお手伝いさんたちが心配してドアの向こうから声をかけたけれど、私は誰にも会いたくないと叫んでドアを開けなかった。


 やがて、愛里から携帯へ電話がかかって来て、無事なんだと分かったけれど、そしたら、今度は無性に怒りが込み上げて来て、そのままプチッと電源を切ってしまった。


 もう何も考えたくなかった。泣き疲れた私は、そのまま眠ってしまったの。


 夜中に喉が渇いて目を覚ましたら、お父さまが私の眠るベッドの枕もとに椅子を寄せて座っていらっしゃったわ。いつも忙しくて、朝食の席でご一緒するくらいしか時間が取れない筈なのに。


「やあ、目が覚めたかい?」


 お父さまは、驚いている私に、ナイトテーブルに置かれた水差しを取り上げ、グラスに水を注いで手渡して下さったの。私はと言えば、あまりの驚きに、ただグラスを受け取って飲むことしか出来なかったわ。


 そして、漸く落ち着いた私に、お父さまは静かに話し始めて下さったの。


誤字を修正しました~。(@_@;)

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