これって、やっぱり、アレかしら?!Σ(・ω・ノ)ノ!
淡い薄紅色の髪を肩の辺りでふんわりなびかせた女子生徒の姿は、パッケージに描かれたヒロインそのものだった。といっても、二次元と三次元では、顔認証システムも使えない。あくまで、髪の色と瞳の色、全体的な雰囲気において似ているという話である。
ちなみに、現在の私の姿はちょっぴり違う。色は同じだが、髪型がすっぱりベリーショートになっている。髪を伸ばしていたのは、小学校に入るくらいまでだった。
髪を結うのに忙しい鹿子さんや父親の手を煩わせたくない、というのは、表向きの理由で、実際は手入れがチョー楽ちんなのだ。シャンプーとリンスもワンプッシュで済むし、タオルドライでさっと乾く。
一度でも楽ちん生活を体験してしまうと、もう元には戻れない。長めのショートヘアだったのが、徐々に短くなり、今ではベリーショートに至っている。いつか、坊主にしたいと言ったら家族から、それだけは止めてくれ!と懇願された。
そんな訳で、名前こそデフォルトネームだが、どちらがヒロインに相応しいかアンケートを取ったら、間違いなく彼女に軍配が上がるだろう。
「御崎愛璃。音楽部門の特待生よ」
「え?!ハーフなの?!」
隣でぼそりと呟く実南に、思わず聞き返す。この世界には、様々な色の髪や瞳の色が存在する。故に、色素だけで国籍を判断できないが、流石に『らぶり』というのは異国の響きがする……と思ったのだが、実南に一蹴された。
「馬鹿ね!当て字よ、当て字」
「そっか……画数多くて大変そうだね」
私だったらいっそカタカナもしくは平仮名で書きたいかも。私の名前だってメンドクサイのよね、特に『愛』の字が。
そんなどうでもいい話をしている間も、涙ながらに訴えている御崎さんの演説に、クラスメイトたちは若干引いている様子。それもそのはず。それって、ほとんど私が言いましたから。
ん?でも待てよ。このシーンは、どこかで……ああ、そうだ。確か1学期の終業式で佐野先生が別れの挨拶をした時のスチールだ。
しらっとする生徒たちを前に、ヒロインが先生の優しさを涙ながらに訴える。で、泣き顔可愛さで衝動を抑えきれない先生が、思わず、みんなの前でヒロインを抱きしめるんだっけ。
いくら教師と生徒の関係じゃなくなると言っても、15歳の少女に手を出すって犯罪じゃね?!と思ったものだった。
「御崎、落ち着け。これから入学式が始まるぞ」
さすがに入学式で初対面の生徒を抱きしめる訳もなく、というより、むしろ先生も引き気味な感じがする。しかも、着席間際、彼女、私の方を見てニヤリとしたような。
これってなんだかなぁ。やっぱりアレかな?!前世の記憶もち転生者で残念なヒロインってやつ?!
……まあ、私も人のことは言えないけどね。(;´∀`)