私って、乙女ゲームのヒロインだったんだ!(;´Д`)
「……まじでかっ!」
国内でも有数の、良家の子女たちが通う『私立 高天原学園』。その高等部の入学式に参列すべく、門前で立ち止まった私、天野愛里は、校門から校舎まで延々と続く桜並木と舞い散る花吹雪を目にした途端、独り言にしては大きな声で呟いた。
少なくとも公共の場で、滅多に耳にすることのない品のない言葉を耳にした同級生や父兄たちが眉を潜めたけれど、今は、それどころじゃなかった。
何故なら、私の脳裏には桜並木を背景に、ヴィヴァルディ『四季』もどきのヴァイオリン協奏曲が奏でられ、そして『貴方へ捧げる愛のメヌエット』というオープニングタイトルが浮かび上がっていたからである。
タイトルがフェードアウトした後、高天原学園高等部の制服に身を包み、私と同じ、淡い薄紅色の髪を肩の辺りでふんわりなびかせた少女が現れ、自己紹介を始める。
「私、天野愛里。今日から憧れの私立高天原学園高等部へ通うピカピカの1年生。勉強はちょっと苦手で、運動も普通くらいかな。そんな私だけど、歌うことに関しては誰にも負けない、つもり。……あ、自意識過剰じゃないよ!?一応、歌の才能が認められた『特待生』として入学出来たんだもん。えっへん!」
意気揚々と桜並木を歩く少女の姿を思い浮かべながら、私も青ざめた顔で同じ桜並木を歩いていく。誰にも聞こえないよう口の中でぶつぶつ呟きながら。
「私、天野愛里。今日から憧れ……てはいないけど、私立高天原学園高等部へ通うピカピカの1年生。勉強は得意で、運動もそこそこ出来る。……あ、自意識過剰じゃないよ?!一応、外部からの入学が難しいとされる入学試験でトップ合格したんだもん。えっへん!」
脳裏に浮かんだ少女と同じく、胸を張る決めポーズをしたところで、力が抜けて地面に膝をついた。そして、何故だか敗北した気分で呟いたのだった。
「……私って、乙女ゲームのヒロインだったんだ」
一部、表記を訂正しました。内容は変更していません。