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自殺ベルト  作者: 悠然
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予兆 -2-

会社近くの駅に降りた佐藤はゆっくりと会社に向かう。

今日こそは会社に行くんだと心の中で何度も繰り返し言ううちに吐きそうになった。

ふと前を見上げると昨日のガードレールの所に人が集まっていた。集まった人の視線は皆同じ方向だった。

佐藤は気になり一緒に見ることにした。

佐藤はすぐにわかった。

公園にはたくさんのパトカーと警察官がいることを。

鑑識と言うものだろうか、その人達も何人かいた。


しかし、佐藤はなぜこんなに警察がいるのかを理解できなかった。

ふと横を見ると大学生だろうか、携帯で写真を撮りそれを流行りのSNSのサイトに投稿しようとしていた。

タイトルは木ノ下公園と書かれている。

ここで佐藤は思い出した。今朝のニュースを。

その大学生は佐藤が自分の携帯の画面をじっと見ていることに気づき携帯の向きをわざと見えないように変えた。


「あっ」


ここで佐藤は他人の携帯の画面を見ていたことに気付いた。


「す…すみません」


謝る途中でその大学生はガードレールの下に降りていった。

恐らくもっと近くで写真を撮るのだろう。


まさかあのニュースの現場がここだったとは。

佐藤は驚いていた。

佐藤はあることを思い出した。

昨晩の黒い車、そしてスーツを着た2人。


慌てて会社に向かった。

会社のビルの自動ドアが完全に開く前に無理矢理中に入り8階までエレベーターで登り自分のデスクに着いた。

急いでパソコンの電源を入れ検索サイトを開いた。

何度もクリックしたせいか同じ検索サイトがいくつか開いた。それさえ無視をして佐藤は木ノ下公園の自殺について調べた。


しかし、あまりこの事件に関する記事は見つからなかった。どの記事を見ても自殺としか書かれていなかった。

佐藤は、黒い車やスーツの2人が犯人だと思っていた。


「絶対あいつらが犯人だ…俺は見たんだ」


心の声が漏れてしまった。何人かの社員と目が合ってしまった。恥ずかしかった。どうしていいかわからず佐藤は腕時計を見た。

ここで自分は今、会社の椅子に座ってる事に気付いた。

会社に行くのが苦痛で入り口にさえ入れなかったのに知らないうちに席に座っている。

誰かが死んだおかげで自分が会社の席に座れたという事を情けなく感じた。




仕事をしていても佐藤の頭の中は木ノ下公園の事ばかりだった。もし自殺じゃなくて他殺だったら…あの黒い車が犯人で…素人の推理を繰り返していた。


もし、黒い車が犯人だったらどうする?

警察に言うべきか。

目撃情報とかはないのか?

自分しか見ていないのか。

あいつらが犯人だったら逆恨みされないか?

警察署に行って面倒くさい手続きをするのか?


佐藤は警察に言うことを辞めた。

下手に巻き込まれたくない。警察が自殺っていうなら自殺なんだ。


(自分は関係ない)


佐藤はそう思うと心が楽になった。

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