予兆
佐藤は公園のベンチに座っていた。
先ほどまでいた親子は公園にはいない。
佐藤は空を見つめている。
「まただ…今日で3日目だ…」
佐藤は呟いた。
そしてゆっくりとベンチに倒れ眠りについた。
「は!」
佐藤はベンチから飛び起きた。
辺りは真っ暗だった。
自分がどこにいるかはすぐ理解できた。
それと同時に慌てて携帯と財布を確認する。
「大丈夫だ…」
盗まれていない事を確認すると佐藤は公園を離れた。
いったい何時間寝ていたのだろうか。
もしかして病気ではないか?
色々なことを考えながら駅に向かった。
ピッピッピー
佐藤は立ち止まった。
どこからか、機械音が聞こえた。
あたりを見渡すが暗くてよく分からない。
ブゥゥン
車がゆっくり走る音が聞こえた。
「なんだ車の鍵を開けた音か」
佐藤は納得してまた歩き始めた。
しかし車が見つからない。
佐藤はガードレールの下を覗いた。
ガードレールの下は住宅街だった。
たくさんの家の窓から光がこぼれている。
佐藤はその光が自分を優しく包んでくれるような気分だった。佐藤は奥の方に目をやるとそこにも公園があった。少し大きい公園で木が沢山並んでいた。公園の中には街灯がいくつか置かれそこだけ異常に明るかった。
その公園の近くに一台の黒い車を見つけた。
(先ほどの車の音はあの黒い車だったんだ)
佐藤は答え合わせを終え再び駅に戻ろうとした時、黒い車から2人降りてきた。2人共スーツのようなものを着ていることは佐藤からも見えた。その2人は公園の中に入るとたくさんの木が植えられている小さな林の中に消えていった。
佐藤は少し薄気味悪くなり急ぎ足で駅に向かった。
次の日の朝、佐藤はいつも通り暗い表情でテレビの電源をつけた。なんでまた今日が始まったのか、なぜ生きているのか色々な事をいつも通り考え溜め息をついた。
「ニュースの時間です」
テレビから聞こえた。朝からニュースなんてやるなよ。もっと気分が落ち込むだろ。佐藤は朝のニュースも嫌いだった。
「昨夜、木ノ下公園で死体が見つかりました」
「また事件か…」
佐藤はボソッと言った。毎日のように事件が発生しているこの世の中に驚かなくなっていた。
テレビからは「自殺」というワードが聞こえた。
「自殺か…苦しまないなら自殺もいいな」
少し嬉しそうに佐藤はテレビに向かって言った。