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落穂拾い  作者: 矛盾の魔王
序幕
1/17

御伽噺の魔王

 昔々、あるところに魔王がいました。


 その魔王には、名前がありませんでした。必要がありませんでした。


 何故なら、魔王は魔王だからです。


 火に火以上の名を与えるものがいるでしょうか。


 空に空以上の名を与えるものがいるでしょうか。


 いたとしても、きっと多くはないでしょう。


 つまり、魔王もそういうものでした。


 魔王は魔王という記号そのものであり、それ以上でもそれ以下でもありません。


 御伽噺の悪役には、それ以上の意味もそれ以下の意味も必要ありません。


 魔王とは、そういうものでした。


 故に、今日も、魔王は嗤います。


 笑うのではなく嗤います。


 魔王とは、そういうものだからです。


 沼地の奥にあるといわれる、幻の城の中で、魔王は今日も嗤います。


 くつくつ、くすくす、嗤います。


 ゴブレットを片手に、髑髏の面をカタカタ揺らして、今日も魔王は嗤います。


 哀れな誰かを前にして、今日もくつくつ、くすくす、嗤います。


「魔王様。まだとっておきのお話があります。聞いては頂けませんか」


 誰かがそう呟きます。昔々、どこかで誰かがそう呟きます。


 そして、魔王もまた呟きます。昔々、どこかで魔王がこう呟きます


「佳かろう……ならばその話を聞くまでは、決して汝を**すまい」


 どこかで魔王が呟きます。どこかの誰かを前にして、嘲り交じりに呟きます。


 何故なら魔王とは、そういうものだからです。


 今日も、昔々、どこかの誰かが語ります。どこかの誰かの物語を。


 どこかの誰かと魔王の為に。


 小さな声で、呟くように……囁くように……語ります。

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