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見知らぬ街

今回から新しいキャラが登場します。

彼等の事は、次回以降明らかにしていく予定です。

「い、今のなんだったんだろね?いきなりアップデートとか、バグとか…かな?」


ルカミアエルはそう言いながらドロシーを見るが、ドロシーはそれに答えずにしばらく周りを注意深く見ていた。

やがてドロシーは何かに気が付いた様に髪と同じ金色の猫耳を立て、目を大きく見開いた。

その表情にはいつもの余裕が余り見られず、金色と黒の縞模様の尻尾も落ち着きなく揺れている。


「ドロシー?どうしたの?」


「ルカちゃん。周り…良く見てみて」


ドロシーは落ち着かない様子で周りを見回す。


「え、周り?………あっ」


ルカミアエルが気づいた時、2人の周りには人が集まってきていた。

その誰もが、NPCと同じ格好をしているが、今までのグラフィックのNPCではなく、ましてやプレイヤーでもない極普通の人間だった。

建物や景色も現実と変わりがない位に自然だ。


「う…そ……なんで?」


おまけに彼らの会話を聞いていると「これが天族…初めて見た」「あの獣族、男?女?綺麗…」等という、物珍しさから来るものだった。


しかし、人集り(ひとだかり)と喧騒が大きくなるにつれて、段々と彼らの目つきが欲望に塗れた恐ろしいものに変わっていく。

聞こえてくる会話も「こいつはついてる!本物の天族と上玉の獣族だ。纏めて捕まえて剥製にすれば金になる」「あの子の綺麗な黒い羽が欲しいな。帽子の飾りにちょうど良いし!ねえねえ、早く捕まえてあの羽を取ってよ!」「いや、獣族は奴隷にすれば…」等、物騒な言葉ばかりになっていた。


ここに居たら不味い。本能的に身の危険を感じる。

[ドロシー、逃げよう]ルカミアエルが口を開こうとした時、

「いたぞ、天族だ!獣族ごと捕まえろ!!」という怒声と共に、上空から(おもり)のついた目の細かい大きな網のようなものが降ってきた。


「!!」


咄嗟の事に反応出来ないルカミアエル。ドロシーは剣呑(けんのん)な目で一瞥すると、網をツインナイフで瞬時に切り裂き、ルカミアエルの手を取って街中を走り出した。


人集り(ひとだかり)の薄い所から駆け抜けて行くドロシーとルカミアエル。

ドロシーが殺気の篭った目で一睨みすると町人達は短い悲鳴をあげ、怯み、自ずと道を空けて行く。


「天族と獣族が逃げたぞ!!貴様等何をしている、早く行け!!何としても捕まえろ!!!」


後ろの方から中年の男の怒声と、こちらに向かって来るガチャガチャとした金属が擦れるような音が聞こえてくる。

それを聞いたルカミアエルは、「自分達が狙われている」事をハッキリと自覚した。

先ほどの会話が頭をよぎる。


(もしかして…捕まったらあたし達殺されちゃうの?なんで?どうして!?)


ルカミアエルはドロシーに引っ張られ、息が切れそうになりながらも必死に走る。


「ここは危ない、街から出るよルカちゃん!」


ドロシーの声に、ルカミアエルは必死に頷いた。



❖❖❖❖❖


「…見たか、今の」


部屋の窓からドロシーとルカミアエルが走り去った方向を見て、山吹色の猫目の女が呟く。瞳と同じ色の髪を、後頭部の高い場所で一つに束ねている。


「ああ、まさかこんな所で天族を見るなんてね…あの獣のでかいのが天族の仲間か?」


その傍にいた一見大人しそうな草色の長い髪と目の男が、それに応える。


女が振り返り、男を見つめる。


「それは解らない。だけど、このまま放っておくわけには行かないだろう?」


「…で?アルベルタ、僕たちは何をしたらいいのかな?」


アルベルタと呼ばれた女が、再び前を向いた。


「ラファエーレ、今すぐこの屋敷に居る全員を集合させろ」


「了解…リーダー」


ラファエーレと呼ばれた男は懐から銀色の玉を取り出すと、宙に放り投げた。

玉が割れる瞬間、凛とした音が屋敷中に響きわたる。これは「全員集合」の合図だ。

外にも聞こえそうな程の音量だが、この屋敷には魔法で防音加工している為、例えどんなに騒いでも外には漏れない。


合図を聞いて部屋にやってきたのは9人の人間の男女。

アルベルタは全員そろったのを確認し、口を開いた。


「先ほど天族と獣族が、王宮の奴等に追われていた。先ほどの騒ぎはその為だ。

…あの2人を先回りして捕まえる。

ここに居る全員で彼女等を追うぞ…早くしないとどうなるか解らない」


それを聞いたラファエーレは、やれやれといった風に肩をすくめ、溜息をついた。


「了解、リーダー。それで、どうやって捕まえる?」


「天族の女はわからないが…あの獣、多分暗殺者だ。しかも高レベルの」


アルベルタは顔を歪ませる。


「そいつは厄介だな…」


ラファエーレは苦笑いする。

アルベルタは話を続ける。


「あの2人は街から逃げ出そうとするはずだ。街の外へ繋がる通路はカノプリャーとユーグラーンスに続く2箇所。

だが彼女等が向かったのは、人間以外は認めぬカノプリャーの方向。たとえ逃げ切ったとしても、カノプリャーで捕まる。

ショートカットで、彼女等が逃げる方向と門の手前の我々の屋敷(アジト)前の2手に分かれる」


「もし、途中で彼女等が捕まった場合は?」


「その時は弾幕を利用して奇襲を仕掛ける」


「一応聞くけど、編成はどうする?今居るのは魔術師が3、聖職者が2、盗賊3、錬金術師1人。俺等を含めれば剣士1、精霊師1か」


「2手に分かれよう。屋敷前は私と出来れば捕縛が使える高レベルの魔術師が2人欲しい。後は治療の為の聖職者1人、罠を仕掛けるための盗賊を2人屋敷前に。そうだな、アーリィ、コルウス、リンリル、ナヴァッド、カーティルは私と一緒に来てくれ。マーク、イルマ、ラドロ、キルミアはラファエーレと一緒に彼女等を追え。全員外を出る前に[透明の実]を忘れずに飲め。1粒で効果は2時間だ。もし捕まえたなら彼女等にも飲ませて、屋敷の2階にある窓のない部屋へと運べ。

後々厄介な事にならないように、2人には出来るだけ傷をつけるな。いいな!」


「「「了解!」」」


「では、天族と獣族の捕獲作戦を開始する。特に獣族には注意しろ!」


「「「はい!!」」」


アルベルタ達は外に出ると、すぐさま2手に分かれて街の中を駆け抜けていく。

屋敷の扉がひとりでに開き、暫くして閉まったのを見たものは誰も居なかった。

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