花
その島には花が一本だけしかなかった。
集落から離れた海を臨む崖にその花は咲いていた。
ある日、花のもとに一人の女の子が訪れた。
女の子は花を見つけると、それこそ花が咲いたように笑った。
だが、そのはなはすぐに萎れ、女の子の顔は涙でぐしゃぐしゃになった。そして、彼女は一人で泣き続けた。
花は何もできず、ただ仄かに香る潮風に揺れるだけ。
やがて花には枯れる日が訪れる。
島に一本だけの花はその日がいつか来るという事を知っていた。
掠れた小麦色に枯れた花の前に、女の子は訪れた。
女の子の顔はもう涙で濡れていなかった。
女の子の後ろでは、彼女を呼ぶたくさんの子供たちが手を振っていた。
その日、その島で一輪の花が枯れ、一つのはなが咲いた。