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若獅子たちの邂逅

「おょ? 教団員……逃げてくわね?」

 辺りを見回し、小鈴が意外そうな声を漏らした。

「なんか味方もドン引きしてるっぽいし。熱が引いちゃったって感じ」

「師匠のわたしが言うのもなんだけど……晴奈がコワすぎたわね。……あれ?」

 と、雪乃も辺りを見回し、その恐ろしい愛弟子の姿が嵐月堂の境内に無いことに気付く。

「晴奈? どこ行ったの?」

 声をかけたところで、剣士たちが口々に答えた。

「黄ならどっか走って行っちまったぞ」

「『まだだ』『逃さん』とか何とか口走ってたけど」

「まさか……追って行ったんじゃないだろうな、あいつらを」

「マジで?」

 ぎょっとしている小鈴を置き、雪乃は壁に向かって走る。

「小鈴! 岩、登れるように直して!」

「へ? え、アンタも行くの? こっちから打って出ないっつってたじゃん!?」

「あの娘を追いかける! 多分アタマに血が上って、冷静な判断できてないわ!」

「んもう……ま、追いかけるっきゃないか。ほっとくワケにも行かないし」

 小鈴も緋袴(ひばかま)の裾を持ち上げ、雪乃に追従した。


 雪乃の予想通り――戦闘の熱気に当てられてしまった晴奈は、すっかり激情に呑まれてしまっていた。

「待てッ! 待たんと斬るぞッ!」

 逃げる相手の背に向け、晴奈は怒鳴り散らす。

「ひえぇ……! そっ、そんなこと言われて止まる奴がいるか!」

「上僧兵か僧兵長くらいじゃなきゃ、あいつに太刀打ちできんぞ!」

「逃げろ! 俺たちじゃ敵わん!」

 すっかり戦意喪失し、逃げの一手を打っていた教団員たちだったが、俊敏な晴奈はみるみる内に相手との距離を詰め、刀の切先が届くかと言うところまで肉薄した。

「りゃああああッ!」

 そして激情に任せるまま、晴奈は逃げる相手の背中に刀を振り下ろした。ところが――。

「おおっと!」

 振り下ろした刀の切先が何か硬いものに弾かれ、攻撃を阻まれる。

「ソコまでにしとけよ、『猫』」

「……っ!? 何奴!」

 一歩飛び退き、晴奈は刀を正眼に構え直す。刀を向けられたその黒い毛並みの狼獣人も、得物らしき長い棒を斜めに構えて対峙した。

「てめえなんかに名乗る名前はねえよ。てめえもわざわざ名乗らなくていいぜ。興味ねーから」

「なんだと!?」

 まだ頭に血が上ったままの晴奈は、相手のふざけた態度に声を荒げる。

「私を愚弄するのか!?」

「そりゃするさ。逃げてる相手追い回して得意げにイキがってるよーなドラ猫、バカにしねーヤツはいねーよ。だろ、お前ら?」

 狼獣人は武器を構えたまま、まだ怯えた様子の教団員たちに顔を向ける。

「そ……その通りです!」

「さっすがウィルソン上僧兵殿!」

「や、やっちゃって下さい!」

 狼獣人に水を向けられた途端、教団員たちは彼を囃し立て始めた。

「上僧兵? とは? それにその名前、央南人ではないのか?」

 尋ねた晴奈に、狼獣人は「言ったろ」と返す。

「てめえに名乗る名前はねえってな!」

 次の瞬間、狼獣人は武器をまっすぐ、晴奈に向けて突き出す。

「オラあっ!」

「食らうかッ!」

 当然、晴奈は刀で受けようとする。ところがまっすぐだと思い込んでいた相手の棒が、途中でかちゃんと曲がり、彼女の右手首をしたたかに打った。

「うぐ……っ!?」

 ずくん、と手首から親指、人差し指、中指にかけての筋が脈打ち、続いて耐え難い痛みが右手全体に走る。

「うああっ……!」

 これまで感じたことのない猛烈な痛みによって、晴奈はたちまち鬼神から、15歳の少女に引き戻されてしまった。

「お前、クセあるよな。相手の攻撃受けようって時に、一歩か半歩引くクセが。その瞬間、動きが止まっちまう。おかげで簡単に打ち込めたぜ」

「うあ……うう……ひっ……」

 刀を構えていることもできなくなり、晴奈はその場にうずくまってしまった。

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