幕間11:メイリーナの一学年一組評価レポートメモ①
一学年一組 評価レポートメモ/作成:メイリーナ/更新:春
※評定凡例:S=突出/A=優秀/B=良/C=可
▼カナメ・ビゼン 総合:S レベル3
【所見】
和国流の剣術は既に熟練域。一撃の威力、振りの鋭さも文句なし。
やや生命力は低いが、体力は女体化後も高水準で安定。
感知力の高さと素早い身のこなしから、探索にも向いている。
和国仕込みの火と水の合成術を身に付けている点も大いに評価。
当面、レベル低下の兆候なし。短気と目上への言葉遣いは減点。
【リスク】生理周期未確定(本人申告)。長距離遠征時の変調に備え要観察。
〈共有:医務室・装備班〉鎮痛薬・保温具の支給品を増量。
【推奨ロール】前衛火力/索敵
【宿題】挑発耐性訓練/交渉訓練
[私見]将来のレベル8候補。女体化原因は調査中。正直もう男に戻る必要はないのでは?
▼アリス・マーケッタ 総合:A レベル3
【所見】
指揮・探索・索敵・判断・補給・交渉・会計で一級。
持ち前の才能による意思決定が速く、奇策も冴える。
風魔法+短剣+短弓を併用(偵察・撹乱・急所一点狙い)し、様々な局面にも対応可能。
一学年内で数少ない通信魔法の使い手。さすがはマーケッタ商会の令嬢といったところか。
火力・体力は標準レベル。もっと鍛えろ。もっと走れ。
ただ、資金に物を言わせた火力増は他者にはない強み。
プライド高→発火しやすいのが難点。
【リスク】水の王国の王立冒険者校への引き抜き。マーケッタ商会の影響力は強みでもあり外圧でもある。
【推奨ロール】班長/中衛支援/中衛火力(短時間)/補給線統括/交渉窓口
【宿題】特殊攻撃訓練/基礎体力底上げ
[私見]将来のギルド幹部候補。当校にいるのは僥倖。上位学年での移籍阻止は校長協議案件。
〈極秘〉成績上位者で居続けるならば、アイカータを花婿として選定することを上申。
▼マリー・バッドガール 総合:S レベル3
【所見】
高体力・高耐久・高火力を併せ持つ稀少な女神教聖職者。
レベル3で私と腕相撲して競る筋量とか、どうなっている? さすがに勝ったが。
ただ、鈍い。魔物が近づいても気づかないし、一人で探索させると迷子になる。
探索では味方の支援が必須。身のこなしも当て勘も悪くはないが……。
性格穏やかで現地医療・福祉対応は安心。クラス内の交流も良好。
【リスク】撤退判断・トリアージ(患者選別)で情に傾く懸念。奇襲耐性が低い。
【推奨ロール】中衛回復/中衛支援/前衛火力(短時間)/移動診療
【宿題】危険時の意思決定訓練/奇襲対応訓練
[私見]元聖女候補という疑念。実力だけで見るならば、候補ではすまないはず。要観察。
▼ルールルー・プルン 総合:S レベル3
【所見】
レベル1~レベル2の全属性魔法を扱う異端の術者。
低レベルのリンダ校長と考えると将来有望である。
魔法解析・魔力感知・記憶力・魔力総量に長け、長時間魔法放出訓練では上級生を抑えて学校一の記録をたたき出していた。
見た目とそぐわず耐久が高いため、後衛職の弱点である奇襲に耐性がある点も高評価。
ただし低体力。もっと走れ。
冒険者は体力が大事だぞ。
筋力も低いが、後衛魔術師なら問題なし。
それと、口数の少なさと何を考えているかわからない部分が他者との交流の妨げになっている。
固定メンバーで組む分には問題ないが、あれでは独り立ちは難しいだろう。
他者を率いることができるか見定めねば。
【リスク】耐久は高いが持久が低い。多属性の同時学習による習熟分散。レベル3魔法未修得。交流不足。
【推奨ロール】後衛火力/後衛支援/情報分析・記録/偵察連絡
【宿題】魔法習熟訓練/基礎体力底上げ/リーダー体験による指揮力向上訓練
[私見]全属性魔法を使い分けができ、状況適応力が高い。だが、なぜレベル3魔法を取得していない? 全属性学習の弊害か? 要観察。
▼カーラ・ソードマン 総合:A レベル3
【所見】
圧倒的な体力と耐久を誇る最優のタンク役。筋量も申し分なし。
一回目の実習では負傷で自信喪失したが、二回目ではダンジョンのヌシ討伐で自信を回復。
近頃はシールド投擲の技能を伸ばし、火力貢献も可能に。
ただこいつもバッドガールと並んで鈍い。
感覚が鈍いやつは総じて迷子の素質があるが、ソードマンも同類。探索では味方の支援が必須。
おまけに気分の浮き沈みが激しい。安定しない。男じゃあるまいし……。
【リスク】メンタルにムラがある。サポーターと組ませる必要性大。
【推奨ロール】前衛盾/避難誘導・護衛/陣形維持
【宿題】メンタル安定ルーティンの習得
[私見]今回は選考外だが“惜しい”。誠実さと耐久は一級。ソードマン先輩の娘ではあるが、私から見てもタンク役の適性が高いとわかる。才能を伸ばす方向で。
………
▼モブ・アイカータ 成績総合:C(S) サポーター評価:S+
[私見]
男。以上——と切って捨てたいが、実績だけ見るとSランク。
〈特殊徘徊魔物〉の討伐、二回目の実習でのヌシ討伐。
入学まもない生徒がこれほどの偉業を重ねた例は学校史にない。
この時期の男子でレベル3は前代未聞。
過去の英雄ランズやダークの再来を思わせるが、レベルダウンの事実を見るに、女神教が謳う英雄の素質はないと判断。
本当に惜しい男である。
一方で、冒険者ギルド史上でも屈指のサポーターになる見込みは極めて高い。
才能――本人申告では〈鷹の目〉だったか?――による判断力・索敵力はいずれも破格。
持久力も女子に劣らず、サポートの枠を超える業務にも耐える。
とりわけ士気管理の能力は一級品だ。
男女ともに支持が厚く、やつがいるだけで場が明るくなる。
私の知る男の誰よりも、アイカータには華がある。
女子を遠ざけず『女友達』の距離感で接する点が人気の理由だろう――正直、学生たちが羨ましい。
隣のクラスの男子からはやっかみも聞くが、同クラスの男子には兄のように敬われている。
男子限定授業に女性不信のリーダとアウクシルを伴った件では、リンダ校長も感極まって涙したと聞く。
将来のギルド職員としても、成績優秀者のパートナー候補としても、サポーターとしても優秀な逸材だ。
だが、冒険者として高レベル到達を目指すのであれば、再考を促すのが本人のためだろう。
当人が暴走しないよう、今後も注意深く見守りたい。
(極秘/本音)
ふざけた男だ。手土産をもって、朝の学外実習選抜騒ぎの非礼を詫びに来た。
アイカータ流の謝罪の作法と言ったが、そんなわけないだろう。
『今朝は感情的になってすみません』と告げ、人目に隠れてサラマンダー火酒と子ども用の菓子包みを手渡しする男子など、現実にいるはずがない。驚きを通り越してもはや気味が悪い。
要注意観察。──毒とか入ってないよな?
……うん、大丈夫だな。ギルド窓口に鑑定してもらったが問題なかった。
──週末、久しぶりに王都に帰って、娘に菓子を渡すか。




