幕間9:身辺日記③
春シーズン第二週末
【夜──ルールルーの胸部恒星晶コア】
ルーを創った、異端者ディーを知る人が現れた。
モブ・アイカータ。
特殊な視る才能があって、
ルーが魔法生物だとわかっても――恐れない。
告げ口もしない。
……不思議。もっと、もっと知りたい。
あなたなら、ルーを〈逆さ魔導塔・最深層〉へ連れて行ってくれる?
―キィン―
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春シーズン第二週末
【夜──マリーの祈りと衝動ノート】
ああ、なんてこと!
モブ様が私に流れる忌まわしき血をすでにご存じだったなんて!
鼓動が耳を打ち、蒼い聖布の下で熱が疼きます。
心音はきっと、同室のルーにも聞こえていることでしょう。
――私という卑しい存在を知ってなお、あの方は微笑みを崩されない。
どこまでご存じなのでしょうか?
嗚呼、いつか二人きりで夜通し話したいです、モブ様。
願わくば、首輪を外した『本当の私』を、屈服させてください——。
(※欄外:黄インクでアンクの絵を記して結んでいる)
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春シーズン第二週末
【夜──アリスの革バリューノート】
(赤竜革・金鎖留め具・鷲の家紋入り)
予定:
春3週目-1 朝:後援契約の広告指示(投資収益率+12%予測)
春3週目-1 夕:モブと魔音銀盤企画会議
春3週目-2 夕:老舗呉服屋〈銀糸屋〉にてカナメと試着デート♡
春3週目-3 夕:貴賓宿〈シトリン亭〉会食
(ミカ代官府主代官と副代官二名同席)
………………
春3週目-6 夜:浮遊帆船(改造)でモブとカナメとドライブ♡
振り返り:
・後援契約、条件改訂により締結。
月一金+刀新調分は三週以内に回収見通し。
本当はカナメと固定パーティを組みたかったけど断念。
そのうち、ね。
モブとカナメ――二人とも私のものにしなきゃ。
ドライブデートもかこつけたし……腕が鳴るわ。
・首輪は大分馴染んできた。触るたびに顔が熱くなる。
あの子の所有物だと痛感し、柄にもなく鼓動が速まる……。
今度散歩の練習をお願いしようかしら♪
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春シーズン第二週末
【夜──カーラの秘密の乙女帳】
モブ君好きだぁああああああああ!!
君に夢中だ、結婚してくれぇええええええええっ!!
もう〈銀の君※1〉の新刊を買えなくなったっていい!
魔導板帳の名前も銀髪推しから黒髪推しに変える!
私は君の隣にいたいっ!
君を愛して、愛されたいっっ!!
『カーラとなら、俺は勘違いされてもよかったけど?』って
もう一度言ってくれぇえええええええっ!!
………………
みじめだ。紙に書く時は、こんなにも大胆になれるのに。
現実の私はどうして、何も言えなくなるのだろう……。
魔導板帳に書き込む時の私みたいに大胆さがほんの少しでも欲しい。
モブ君は私のことをどう思ってる?
からかって、いる?
そんなことないって思いたい……。
モブくんが〈転輪の写盾〉の本来の機能について教えてくれた時
照れてたところを見ると、そんな好感度は低くないはずだっ!
――た、たぶん。
……今は、いい成績を修め続けよう。
モブ君と固定パーティを組めるように。
学校側に、モブ君との交際を認めてもらうためにも。
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〈用語解説〉
※1 銀の君=
カーラの愛読書。
「身分差」「献身」を主題にしたラブロマンス。
病で長く外出できない銀髪の令息のルネに代わり
亜麻色髪のエルネアが剣と足で世界を広げ、手紙や土産話で彼を外の光につなぎとめる。
病弱な令息の端麗さと一途さが男女読者を問わず胸を打った。
既刊八巻。地の共和国、風の王国、水の王国で流行中。
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1年目春 商会令嬢対決編お読みいただきありがとうございました!
パーティ同士のダンジョンタイムアタック対決いかがでしたか?
気づいたらスポーツもののような展開となっておりました。
本章を通じて、主要キャラたちの関係性の変化を楽しんでいただけているなら幸いです。
いったん短章〈モブの休日〉をはさんで箸休め。
その次の章はカナメやマリー・ルールルーが中心の章となります。
引き続きお楽しみください。
楽しかった、続きが少しでも気になると思われましたら、
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筆者が嬉しさのあまり小躍りします。




