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ただのモブ(大嘘)がTSした原作主人公の代わりに逆転世界で頑張る話 ―女性特効ラスボスは俺が倒す―  作者: つくもいつき
1年目春 商会令嬢対決編(完)

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幕間8:身辺日記②


春シーズン第二週末~第三週末にかけて


【夜──カナメの竹紙日記】


アリスと後援契約なるものを結ぶに至れり。

条項あらためられ、「同行は不要」とのこと。

ゆえに我とて殊更(ことさら)ためらう理なし。



月ごとの供給金は一金へ減ったが十分。

加うるに、刀の定期新調を得らるるはありがたし。



このところ我、独断にて走り、モブに恥をかかせたり。

〈瞑想〉を授けし後、胸の(おり)、少し澄みたり。

罪は消えぬ、されど日毎に薄らぐ。



モブも、気をよくしてくれること、祈らん。



――――――――――――



近ごろ、モブの周辺ひときわ騒がし。



アリス・マリー・ルールルーたち。

さらに同組の男子二人。

きゃつらに至っては、番犬のごとく前に立ち塞がる。



ことに我への噛みつきよう、見るに堪えず。

男子の集いより我を押し出さんとする腹、許しがたし。

――我も男ぞ?



モブは間に入り、火を鎮めんとする。

されど、我を嫌う者を好むほど、我は器用ならず。

あやつらがモブの袖にまとわりつくさまを見るたび、心、ささくれ立つ。



――気に食わん。



――――――――――――



今日もまた、モブと肩を並べて過ごす。

週末の〈無垢なる大蛇〉――討つか否かを議す。



男子二人にらみつけ来たる。

我は舌をちろりと突き出し、にらみ返す。



あやつの隣は、我が定位置なり。

ゆめゆめ忘るるな、小童ども。




――――――――――――



モブ――あやつは「人の情報を視る」と言う。

ならば、おそらく我が才も、既に知っていよう。



出会いし折、何も言わず、ありのままの我を受け入れたり。

いかなる所以(ゆえん)か。



和国の男児らは、我が才を知れば、

たいてい羨望や嫉妬に曇るものを。



――確かむるが怖し。

されど、我はお前のことを、なお深く知りたし……。



(※欄外:墨汁でモブの似顔絵。鼻筋を描き直しかけ、二重線)




――――――――――――



春シーズン第二週末


【夜──モブの革メモ】



来週やりたいこと(優先度順)



 1)カナメとの〈瞑想〉訓練


 2)ダンジョンでの金策

   (防具更新、消費アイテム買い足し、

    月末スタンピードイベント準備)


 3)アリスへの魔音銀盤(フォノスレート)

   ASMR企画持ち掛け(応援メッセージ吹き込み)


 4)母さん向け新事業計画書説明

   (和国伝来品取り扱いについて/マーケッタ商会との共同)



その他:

 望外の喜び。

 〈エンバークロウ〉から固有品 + レア修飾子付き短剣を入手。


 

 〈貫く火烏(ひう)の爪〉――相手の装甲を貫通する能力を持った火属性のダガー。

 火属性魔法『熱線』も発動できる一品。

 この序盤で貫通能力持ちがつくボスドロップ品に巡り会ったのは奇跡であった。

 うへへ♡



 戦利品の山分けで固有品を手に入れるため

 パーティメンバー三人と交渉した結果

 それぞれと出かける約束をしてしまったがまあなんとかなるだろう。



 男子二人はともかくカーラには要注意。

 あのダイナマイトバディに迫られたら暴発しかねん。

 彼女はカナメと並んで、俺の心まで乱す逸材。気をつけてかからねば。



 ……今回の実習で、原作どおりに物語が進まないことがよくよくわかった。

 班同士の直接対決など、そもそも存在しない展開だったからだ。



 頼れるのはおそらく、ダンジョンの基本構造、

 マップの大枠、モンスターの習性や弱点、

 宝箱配置などの変動の影響が少なそうなものだけ。



 月末のスタンピードイベントが本当に起こるかも定かでない。

 起きれば稼ぎ時、起きねば平穏。

 どちらに転んでも備えねばならない。



 その間に経験値ロストしなければいいけど。

 カナメ―ッ! 早く〈瞑想〉教えてくれーッ!!




――――――――――――



春シーズン第三週末


【夜──レンの私記】



モブ・アイカータ。

……不可思議な男だ。あれほど妬んでいたのに、

今では俺もシモンも、あいつに全幅の信頼を寄せている。



俺が同じパーティに入れるよう

お婆様へ直訴したことを、あいつは最初から知っていた。

なのに、あいつは俺のことを恨まなかった……。

俺たちでなければ、もっと楽に勝てただろうに。



ダンジョンで二手に分かれた時も同じだ。

ワイルドボアに崖下へ落とされ気を失い、

恥ずかしさから応答できなかった俺を、あいつは責めなかった。



『責任を負わせて、悪かった』

『もう、俺がついてる。ここから先は、任せろ』


 

……つくづく女らしい男だ。

だが時折、あいつの背は寂しげに震えて見える。

レベルが下がったと告げた日の苦しげな顔を、俺は忘れていない。


だからこそ俺は、女になって悠々としているビゼンが憎いのだろう。

モブの苦しみを、努力を、理解せずに……。

 

 

モブはきっと、高レベルを目指している。

俺と志を同じくする仲間だ。

他の軟弱な男どもとは違う。



あいつの理解者、仲間であり続けるために――。

明日も努力を重ねよう。




――――――――――――



春シーズン第三週末


【夜──シモンの観察レポート】



モブ・アイカータ様。

不思議な方です。

レン様もすっかり絆されて、実習を終えてからも

足しげくモブ様の住まいに足を運ぶようになりました。



……時折、猫のようにモブ様に身を寄せる

レン様を見ると微笑ましくもあり、私の胸に小さな穴も空けます。



ただ、モブ様も気をつかってくださるのか、

等しく私の肩を抱き、頭を撫でてくださります。

そのたびに、私は心温かくなり、安堵してしまってます。

……ほんとうに、不思議ですね。



女性らしい男性。

レン様の言う通り、私もモブ様がそう見えます。



だからこそ、モブ様の女性への対応の緩さを見て

心配になってしまいます。

……もしも、昔私がされたように

心ない女性に襲われてしまったら。



そうならないよう、レン様と一緒にあの方をお守りしたいと思います。







───◇◆ 次回予告 ◆◇───

タイトル:「幕間9:身辺日記③」


楽しかった、続きが少しでも気になると思われましたら、

ブックマークや↓の「☆☆☆☆☆」で応援していただけると嬉しいです。

筆者が嬉しさのあまり小躍りします。

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