第弐拾弐話 冷静に
「……逃げたか、」
そう言ってその男は、後ろを向いてテリーの方へ歩む。
「……?」
その時、何かが背中を掠めた。
背中に異変を感じた男は、すぐに振り返るとセリーナが剣で攻撃を仕掛けた。
だが、傷一つつかないその装甲にセリーナは動揺する。
そうして、大男は直ぐにセリーナに向かって拳を振り上げるも空振りをする。
サンディが、セリーナを抱えて走る。
片方の手にはテリーを抱えていた。
(重い!!)
両手に2人人を持つのは、さすがのサンディもキツいみたい。
「……」
大男は、スタン達の方に目をやるとそこにはスタンの血溜まりしか残っていなかった。
「逃げたか……」
そうして、大男は城を目指して歩く。
その様子を近くの物陰から見る一同。
「どう、、なってんだよ、」
スタンは痛みに耐えながら、アシュリーにスタンの欠損した腕の止血をしてもらっていた。
「……取り敢えず、ワイアットと合流するぞ、」
そうして、5人もまたワイアットとクロードを探しに城を目指す。
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「おい、カムイ、こいつらなに?」
そうして、8人の黒服達を俺とカムイで仕留める。
「知らんな、大した強さじゃない、」
(いや、一応コイツら脅威度B以上なんだけど、)
ツキは、そう思って自分の味方に恐怖を感じた。
なんとか城まで歩き、目の前までやってくることが出来た。
「思いの外早かったな、襲撃も最初のやつだけだし、さっきのやつ、戦いで見た黒服だよな?」
「ああ、間違い無いよ、」
そうして、黒服の奴らが確定したところで、カムイが城を見上げる。
その途端、門が開いた。
ボロボロで崩壊した城、そこにまだここまでの技術が残っているとは思わなかった。
どうやら、城は入れと言っているみたい。
「ワイアット、ツキ、人の気配するか?」
(しますか?)
《自分で確かめろよ………いねぇな、》
なんだかんだ言って、ワイアットは話せばわかるとここ最近気づいた。
「いない。」
「私も、居ないというか、感じないです。」
ツキもなにも反応は無いようだ。
「だよな……中に誰も居ない?そんな事はないはず、
まぁ、入るか、」
そうして、カムイは門に入った瞬間、城の中に見える人影。
「始めろ、クロード。」
なにか、老人の声が城内に響き渡る。
その瞬間、カムイに向かって誰かが剣を持って突進してくる。
「ツキ!!」
「あ、はい!」
直ぐにカムイもツキの収納魔法から、剣を取り出し攻撃を防ぐ。
カムイに斬りかかるその男は、クロードそのものだった。
「は、?」
「クロード……操られてるのか?」
カムイが、そう問いかけるも返答はない、
《この野郎!》
ワイアットがキレてるのが、直ぐにわかった。
そうして、ワイアットに身体のハンドルを握りそうになるものの直ぐに俺が止める。
《おい!》
(悪いけど、お前冷静になるまでダメ!)
こんなやつ、暴走したら誰も止められない、悪いけど冷静になるまでは出せないな。
そうして、ワイアットを心の奥底に沈める。
まずい事になったか……
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「どんぱち、やってるみたいだな……」
岩に片足を乗せて、帝国の1キロメートル先から見つめるその仮面を被った、人。
ロジャーのようだ。
「あの、カッコつけてます?」
白髪で、青い瞳の少女、メーリンがそう言って、ロジャーに問いかける。
「……うるさい、、、」
顔を赤くするロジャー、そうして2人もアルゼリア魔道帝国へ到着したようだ。




