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父と娘の繋がり3


 授業参観は無事に終わった。

 海崎さんは優しい。

 そう気づいたときにはもう遅かった。

 後戻りできないほど恋に落ちていた。

 家に帰ってきたらごはんを作って、海崎さんが帰ってきたら一緒にごはんを食べていろんなことを話す。

 そうやって過ごしてきてしまって後で後悔した。

 私はバカだ。

 そう気づいた。



 海崎さんのことはお父さんと呼べないその思いが胸いっぱいに広がっている。


「海崎さん。」


 私はお母さんの写真に目もくれず海崎さんを呼び止めた。

 ちょうどパソコンの仕事の合間だった。


「ん?寝れねぇーのか?」


 優しく声をかけてくれる海崎さん。

 私は言おうとしてしまった。


「あの…」


 その瞬間だった。


 ガシャンッ


 いきなり大きな音がした。

 私はそのほうを見て鼓動が早くなったのを感じた。


「あ、優子さんの写真が。でも何で?って、おい!!!」


 私は二階に戻った。

 私は荒い息をした。

 吸っても吸っても酸素が肺に入ってこないような気がした。

 頭を抱えて体を丸めた。

 頬に大粒の涙が伝った。







 私は家族の輪を壊そうとしている。







 やっと仲良くなれた家族をまた手放すの?

 私は歯を食い縛った。

 お母さんごめん。

 私辛いよ。




 私はそれから本当の笑顔がわからなくなった。

 私は海崎さんのことをお父さんと言うようになった。

 もう忘れよう。

 きっとこの気持ちは夢だ。

 そう思い込んでいればきっといつしかこの気持ちはなくなる、そう考えた。

 でも、何一ついいことなんてなかった。

 むしろ、自分を苦しめた。





 そして、無意識のうちに手首にカミソリを当てていた。

 気が薄くなっていく。

 そう感じだした。

 これが死ぬってことなんだ。

 頬を伝う涙。




 きっと目が開いた時は地獄なんだろうな。





 ねぇ、お母さんはどこにいるの?

 もし、今お母さんに逢えるならどこにいてもかまわない。

 お母さんに謝りたいよ。

 ごめんね。

 お母さん。






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