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父と娘の繋がり2


 君のお母さんの優子さんに逢った日は雨だった。

 優子さんは道端で倒れていた。

 すごい熱だったから、急いで俺の家に運んだ。

 優子さんは起きてすぐに君の名前を出して俺の家を出て行こうとした。

 そんなところを見て色々聞いたけど、中々口を開こうとしないんだ。

 きっとそれぐらい大事に思ってるんだろうとすぐにわかった。

 そして、徐々に君のことを聞いてきたけど、君を悪く言う言葉は何一つ出てこなかったよ。

 なのに、君はそう言ったからついカッとなってごめん。


 そう彼は言った。


 そして、少し間をあけてつぶやくように言った。


「彼女は立派だった。二十歳で君を生んでほとんど彼女が背負ってきたんだろう。あんなに辛そうなのに、いつも笑顔で。俺は悔しかったよ。だから、少しでも役に立ちたい。そう思ったらどんどん彼女を好きになっていった。」


 私の頬には涙が溢れる程流れていた。

 唇を思いっきりかみ締めた。

 後悔という文字が頭を支配する。

 もっと優しくしていれば、もっと素直になってればお母さんが死ななくてすんだのに。


 ポンポン


 私の頭に大きくあたたかい手の平が乗った。

 やっぱり男の人なんだ。

 そう感じた。


「ごめんね。海崎さん。」


 私はそう言って自分の部屋に戻った。


 目が赤くはれて痛くなるほど泣いた。

 鼻が詰まって赤くなるほど泣いた。

 せきが出てのどが痛くなった。

 今の私には関係なかった。



 私はそれ以来タバコを止めた。

 変わった私を友達はいじめたりはしなかった。

 むしろ、「じゃあ、うちらも止めようか。」とみんなで止めた。

 簡単じゃなかったけど。

 頑張ってみんな協力しあったかいがあって止められた。

 ほとんどがあっさりとしてきたときだった。



 見たくない文字が書いてあるプリントが配られた。


「授業参観…。」


 私は母がいないからあの義理の父親が来るのかと思うと心がモヤッとした。

 母親ばっかりのところにホストの父親なんて目立ちすぎて恥ずかしい。

 とても平気でなんて教室に居れないだろう。

 静かにしろと言われて静かでいれる大人なんてこの高校にはいない。

 私はムスッとした顔で見つめていた。

 友達達は母親が見に来るということを嫌がっていた。

 きっと昔の私ならそう思うだろう。

 私はいつの間にか反抗期を過ぎていたらしい。

 イライラがなくなった。

 それもきっとあの義理の父親のおかげなのだろう。

 ありがとう。

 そう思った。



 さあ、どうしよう。

 少し考えて思いついたのが…

 よし、この手紙は捨てよう。という考えになった。

 私は自分の部屋のゴミ箱の奥底に捨てた。

 きっと奥底なら見つからないだろう。その考えが甘かったとしるのは数日後だった。




「おい。この手紙はなんだ。」


 そう言って目の前に突きつけられた。

 その手紙の文字を見て驚いた。

 心臓が大きく脈を打った。


「こういうことはちゃんと言え。」


 すごい命令口調の本性。

 お母さんにもこうだったのかはあえて聞かないことにしている。

 何故か?

 自分でもわからないのだ。


「どうして…。」


 私はうつむきながらそう尋ねた。

 知られたくなかった。

 何故か女子達にキャーキャー言われそうで嫌だったから。

 きっとこのときにもう衝動はおきていた。

 なのに、私はまだ気づいてなかった。


「ゴミを捨てようとしたときに袋から透けて見えた。気づいてなかったらどうしたんだ?」


 眉間に皺がよっているのがすぐにわかった。

 そんなに怒ることではないような気がするのだが。

 プライドでもあるのだろうか?

 私はムスッとしながら意地を張った。


「そのまま。」


「そのままってどういう意味だよ?」


 きっとイラッとしたのだろう。

 怒っている声をしている。

 私は目を逸らしていたから本当に怒っているのかはわからなかった。


「そんな怒ることじゃないでしょ?別にいいじゃん。」


 私は自分に呆れた。

 本当に子供なんだと自覚した。


「俺が居たら嫌なのか?」


 その言葉に口が勝手に閉じた。

 海崎さんの顔を見てすごく切なくなった。

 寂しそうにしゅんとした顔。

 可愛いと思ってしまった。

 すごく顔が熱くなった。

 私はその時何故か傷ついた。

 きっと女の人にはこうやって飴と鞭を使い分けて苦労することなく生きてきたのだと頭に浮かんだ。

 その瞬間私は胸が苦しくなった。


「嫌。あんたが教室にいたら目立つじゃん。恥ずかしい。」


 私はリビングにそう言い残して自分の部屋がある二階に上がった。


 バタンッ


 扉を閉めた途端涙が溢れ出した。

 こんなに泣き虫だったんだ私。

 バカみたい。

 何でこんなことで泣くの?

 意味わかんない。

 海崎さんにあんたって言っちゃった。

 ごめんなさい。



 私はそれ以来海崎さんを避けるようになった。


 そして、その当日…


「ねぇ、あれって麗菜れいなのお父さん?以外に普通だね。」


 そう言って指を指された義理の父は眼鏡をかけて髪の毛も少し乱して安めのスーツを着ていた。

 見てすぐにわかった。

 優しい。

 私は走って腕を引っ張って目立たないところに走った。

 そして、誰もいないところで抱きついた。

 嬉しかった。


「海崎さん。ありがとう。」


 私は満面の笑みでそう言った。

 早く言いたかった。

 ちゃんと言いたかった。





 あなたを知っていくうちに恋をした。

 ねぇ、どうして普通の恋しゃないのかな?

 あなたを知ってくうちに絡んでく糸。

 いつか切れるのだろうか?

 ねぇ、お母さん。

 お母さんはどうして海崎さんを好きになったの?






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