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父と娘の繋がり1

 私の母は今の父親と結婚したすぐ後に交通事故で亡くなった。

 あっさり死んでいった母を少し恨んだ。

 ちょうど反抗期が重なっていた私。

 何もかもイライラとして受け止める。

 そして、その義理の父となった人も驚きである。

 まさかホストとは思わなかった。

 初めてあったときにびっくりした。

 こんなに若いのに私の父親なんて信じたくなかった。

 二十歳は過ぎてるもののまだ少し幼い。

 どうして母と結婚なんてしたのかわからない。

 そして、そんなことどうでもよかった。

 ほとんど家になんて帰らないし。

 私の友達は荒れてる子が多い。

 だから私もそうなってしまったわけで、なりたくてなったんじゃないと今でも心で言い訳していた。

 そして、友達と呼んでる友達はただのつるんでいる奴らである。

 なんてバカバカしいのだろうと自分でも思う。

 染まった髪の毛。

 タバコの香り。

 ギラギラの爪と携帯。

 時々カラーコンタクト。

 何が楽しいのだろうか。

 鏡を見つめるのが嫌になった。

 私は小心者なんだと自覚するから。


「始めまして。君の父になる海崎かいざき 賢斗けんとです。これからよろしくね。」


 そう言って笑顔を見せてくる海崎。

 きっと笑いなれてるんだろう。

 こんな男が母は好きなんだ。

 年下ねー。

 本当に若い。


「どーも。」


 無表情で応える。

 満面の笑顔なんて忘れた。

 作り笑いなんて慣れてる。

 もう、どうでもいい。

 そう感じるようになってきた。

 まだ少ししか生きてないのに、諦めている人生。

 何もかもがつまらない。

 そう感じた。

 これから他人と生活するくらいなら一人暮らしのほうが楽なような気がする。


 そして、その男はこう言った。


「君恥ずかしくないの?そんな格好。」


 私の頭から足の先まで見つめてそう言った。

 反抗期の私は怒った。

 心が見透かされて、図星だったからだ。

 そして、同時に「何故お前に言われなきゃならないんだ!!」とも思った。


「ほっとけ!!うぜーんだよ。父親ぶりやがって。今更新しい父親なんかいらねぇーんだよ!!母親がいなくなって清々したのによ!!!!どうして、他人のお前なんかにそんなこと言われなきゃなんねんだよ!!」


 そういった瞬間だった。


 バンッ!!!


 頬にジーンとした痛みが走った。


優子ははさんに謝れ!!!!育ててもらった癖にただの反抗期でそんなこと言いやがって!!!お前は恥を知らねーのか!!!!」


 私はその場から逃げ出した。

 家から思いっきり飛び出た。

 涙が出てきた。

 悔しい。

 そして、苦しかった。


 私は母の墓に歩いた。


 母の墓の前で自分の気持ちを告げた。


「お母さん、海崎さんに怒られちゃった。ごめんね。こんな格好だけど…本当はね…お母さんのこと大好きだったんだよ?でも、友達に嫌われたらいじめにあうと思って勇気が出せないんだ。だから、もう少しだけ、この格好でいるかもしれないけど。でも…信じてほしい。本当はこんな自分大嫌いなんだ。

お母さんひどいこと言ったままなのに。どうして?どうして、死んじゃったの??!!あんなに元気だったじゃん!!どうしてよ…。」


 私は泣いた。

 本当はうらやましかったんだ。

 いつも元気で悩みなんてなさそうなお母さんが。

 本当の友達がほしかった。

 でも、友達=つるむ仲間になってしまって。

 思い通りになれない自分にイラついていただけだった。

 今更気づいてどうしたらいいのかわからなかった。

 少したって、私は泣きやんでお母さんのお墓の前でたたずんでいるときだった。


「君はこの方の娘さんかい?」


 一人の優しそうなおじいさんが私に尋ねてきた。

 私は少し途惑いながら頷いた。

 敬語は苦手だから。


「いつも若い男の人が来ていたよ。今日だって、着ていた。息子さんかい?」


 おじいさんの言葉に驚いた。

 耳を疑った。

 私は少したって首を横にブンブンと振った。


「私…だけです。多分…義理の父だと…思います。」


 私はうつむきながらそうつぶやいた。

 ホストの男なんか軽そうに見えた。

 きっとまた私を捨てるのだろうと思っている。

 前の男は誠実そうな人。

 しかし、お金ばっかり使って、結局すごく苦労していた。

 お母さんは毎日泣いていた。

 その横でぐっすりと眠れるはずがなく、いつもくまをつくって小学校に行っていたのを覚えている。

 そして離婚して何年も経っていたから結婚なんてしないと思っていた。

 なのに、何故か心の隅に裏切られた思いが出てきた。

 お腹のあたりがキリッといたくなったような気がした。


「そうかい。とても優しい方なんだね。本当に大切そうに話しかけていたよ。いつまでもなかよくね。」


 おじいさんはそう言い残して行ってしまった。


「大切そう…か。」


 私はお母さんのお墓を見つめて無意識のうちにそうつぶやいていた。

 お母さんを何でそんなに大事に思うんだろう?


 私はゆっくり歩きながら家に戻ろうとしていた。

 その時だった。


「お前、何処まで行ってたんだよ!!心配したじゃないか。」


 息を切らしながら私の前に立った。

 あの男。

 黒髪にワックスをつけて少し立たせて、耳にはピアス、首に下がる大きな星のネックレス、手首にはシルバーのブレスレット、パーカーの上にコートを着てジーパンを穿いている。

 ただのチンピラにしか見えないような姿をしていて顔立ちが綺麗。

 どうしてこんなに完璧な体や顔になるのかが知りたくなる。


「どうしてお母さんを好きになったの?」


 私は真っ直ぐに海崎を見つめてそう尋ねた。





 知りたかったんだ。

 ねぇ、人を信じれるようになるかな?

 少しは人生が楽しいと思えるようになるかな?

 あなたに聞きたかったの。

 あなたはお母さんのどんなところを見てきたの?





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