失恋
私は手を伸ばした
簡単に消えてしまうというのに
諦めきれず手を伸ばした
けれど掴めなかった
私の掌が取り込んだ空気
意味もなく取り込んだ空気
呼吸なんてしないくせに
必要なんてないくせに
ただただ空気を取り込んだ
大きく吸って
大きく吐いて
大きく吸って
大きく吐いて
何度繰り返しても
呼吸は鼓動を追い越して行く
温もりに満ちた手には
赤く滲んだ血
零れ落ちた涙は
ルビーのように輝いている
なんて美しいのだろう
なんて素晴らしいのだろう
こんなにも心を奪われて
苦しいというのに
それは綺麗でいて醜悪だった
こんな宝石なんて必要ない
私に必要なのは
たった一つの愛
けれど
その愛は簡単に零れ落ちていった
私の手から簡単にすり抜けていった