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北方の地4

フェリクスが応接室を出ていくと、リリィは両手で顔を覆った。

「奥様……」

「来るかもしれないとは思っていたの。でも、早すぎるわ」

常識として一年は当主の喪に服して大人しくしているはず、というのは考えが甘かったようだ。

「ロバート、フェリクス様のやりそうなことに心当たりはあるかしら」

有能な家令は、カステリ兄弟が幼い頃から良く見知っている。

「そうですね……。奥様には非常にご不快かもしれませんが、おそらく、奥様を妻に迎えたいとおっしゃるかと思われます」

予想していても、リリィの背筋に冷たいものが走った。

「公爵様から密かにご支援を頂いていること、フェリクス様はどこかで聞き及んでおられます。ルイス様がお亡くなりになったとはいえ、奥様を追い出しては世間体も悪く、公爵様からのご支援も打ち切られる可能性が高いことは、フェリクス様もご存じでしょう」

フェリクスが家を継いだあと、ルイスのような領地管理を行うとはとても思えないのが、二人の共通認識だった。

「たとえフェリクス様と結婚されたとしても、まずは一年、喪に服すといえば接点は減らせます。また、その後も領地のことやお嬢様のことなど口実を作っておけば……」

書面上は夫婦になっても、寝室を共にする必要はないのだと匂わせて、ロバートは深々と腰を折る。

「我々使用人一同は奥様についてゆきます。領地管理はなにかと雑務も多く、忙しいものです。継いだばかりのフェリクス様にそのようなご苦労をさせることもありますまい」

リリィはようやくぎこちなく笑った。

「あなたもそんな意地悪を言うのね、ロバート」

フェリクスは遊ばせておいて、実際の管理の全てをリリィが担ってしまえばいいというのである。

「わかりました。もし本当にフェリクス様がわたしを望むのであれば、お受けしましょう。あなたたちにはこれまで以上に苦労をさせるとは思うけれど、どうか助けて下さい」

おかわりのお茶を持ってきたサリーは、ロバートと共に一礼した。


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